協力者
レンガが崩れて土煙が上がる。顔を青くする俺とリリア。そして着地した足場が崩れて苛立ったのか咆哮を上げるナイトグライダー。それに対して残り4体になった灰爪狼達が吠えている。
やたらと餓えていたこの灰爪狼達はきっとこのナイトグライダーに獲物と認定されて縄張りから追い立てられていたんだろう。
本来、灰爪狼は10~15体程度の群れの規模だしな。それが5体ってなると5~10体はナイトグライダーに食われたってところだろう。
「『ディバイン――」
「待ってセイル!!」
四の五の言ってられない状況になって、即座に『ディバインシフター』を発動しようとするがリリアがそれを止める。
何でだ、と声を荒げそうになった時。リリアが止めた理由を俺も察知する。崩れたレンガの中、カイと子供がいるはずの水路の入口で強い魔力が渦巻いている気配を感じる。
何かと俺達も魔物達も警戒を高める。そして濃いオレンジ色の光が水路の入口や崩れたレンガの穴から漏れ出す。
朝日みたいな、柔らかい光だった。
「なにが――っ?!」
状況が全く理解できない。次から次へと色々起こり過ぎてる。一体、何が起きてどうなってやがる。目の前の光は何なんだ
そんなことを考えている間に、優しいオレンジ色の光を伴った魔力が膨れ上がってナイトグライダーやレンガ造りの水路の入口諸共吹き飛ばした。
魔力障壁を咄嗟に張り、身を屈めてやり過ごす。リリアも同じようにしてやり過ごしているあたりが流石は歴戦の探索者。同じパーティーに所属していたんだから、当然っちゃ当然だけどな。
「これは……?」
現れたカイはその身体をを中心に薄いオレンジ色の膜のような光が広がり、落ちて来たレンガや瓦礫を受け止めている。完全に止めているわけじゃない。光に触れた石が僅かに逸れ、二人を避けて落ちていく。
本人も何が何だかサッパリ分かっていない様子で完全に呆けている。
「セイル!!」
リリアに発破をかけられて我に返った俺は吹き飛んだ水路に跳び込んで行く。即座に二人を片手でまとめて抱え上げ、今度はワイヤーを射出して木に固定。巻き取って強制的にその場から離脱する。
入れ替わるように吹き飛ばされていたナイトグライダーが唸り声を上げながら俺達がいた場所に踊りかかっているのを間一髪で避ける。
灰爪狼はこの時点でこの場所から散り散りになって逃げだしていた。カイのよくわからない巨大な魔力に自分達の群れを半壊させた格上の魔物と手練れの探索者2人相手ともなりゃ、そりゃ一目散に逃げだすか。
「こいつ等頼む!!」
「『ディバインシフター』使うのは無しだからね!!」
「わかってる!!」
放り投げるようにしてリリアにカイと子供を投げ渡す。2人は相変わらず自分達の身に何が起きているのかを理解し切れていない様子だ。
カイの身体を包んでいたオレンジ色の光はもうその輝きを失っているから尚更だ。
だがそれに今は意識を向けている暇は無い。即座にナイトグライダーへと意識を切り替える。
「速攻で終わらせるっ!!」
「さっさと頼むわよ!! 『戦いの旋律』!!」
強化魔法によって更に身体強化。動きのギアが更に数段上がる。いつも使っているのとは違う、複数の極細ワイヤーを同時に展開。木に固定しながら、ナイトグライダーに高速で巻き付けて行く。
「『鉄糸牢』」
鉄の糸で巣を作る蜘蛛の魔物。メタルウィーバーで作った極細のワイヤーは1本の糸の上に人が乗っても大丈夫なほど。
そんな鉄の糸で雁字搦めに絡め取り、木々の間でナイトグライダーを宙吊りにする。
まさに鉄糸で出来たの蜘蛛の巣にかかった獲物みたいで。
「『百華一刀』」
その首をすれ違いザマに短刀で斬り飛ばして、事態が二転三転したこの騒動はようやく終わりを迎えた。




