協力者
「お疲れ様。流石ね」
「おう」
ナイトグライダーを討伐して、リリアとハイタッチする。
腕をなまらせた覚えは無いんでね。あの程度の魔物なら強化魔法もあれば苦戦することはねぇよ。
俺達を焦らせたのは突然現れたってのと、そのタイミングと場所だけ。それが解消されたんならこの通りだ。
「セイルさん。さっきのは……」
「わからん。とにかく戻るぞ。これ以上暗くなるのは危険だ」
カイは未だに呆然と自分の手を見つめていた。自分が何かしたのはわかっている。だが、何が起きたのかは全く分かっていない。
それは俺達も変わらない。おそらくは『暁の加護』が発動したんだろう、ってことしかな。
だが、それよりも確実にわかっていることが1つある。
「お前がその子を守った。それだけは覚えとけよ」
カイは驚いたように俺を見て、リリアを見て、本当か? と目で問いかけて来るのを笑いながら俺は頭をがしがしと撫で回して答える。
「あぁ。俺達が間に合わなかった一瞬を、お前が繋いだんだ。誇れよ、お前が守ったんだ」
「僕が、守った……?」
それは剣で敵を倒すような派手な活躍じゃない。俺のように魔物を倒したわけでもない。リリアみたいに強化魔法で突破口を作ったわけでもない。
だが、俺達2人ですらどうすることも出来なかった状況を偶然ではあるが打破した。
子供を生かして帰るために必要だった、決定的な一瞬だ。
依頼達成という、俺達探索者が一番大事にしなきゃいけない仕事を、カイは初めて自分の力で成し遂げたのだった。
「さ、戻りましょ」
リリアの一声で、俺達は村へと戻る帰路につく。色々あったが、無事終わって良かったぜ。
村へ戻ると、俺達はあっという間に人だかりに囲まれた。
行方不明になっていた子供の母親が泣きながら息子を抱きしめ、父親らしい男が何度も俺達に頭を下げる。集まった村人達も口々に礼を言って来るもんだから、どうにも背中がかゆくなって来るぜ
「礼ならカイにも言ってください。崩れた水路の中でその子を守ったのはカイですから」
俺がカイの背中を押すと、村人達の視線が一斉に集まった。
カイの身体がびくりと固まる。
注目されることそのものに、ロクな記憶が無いんだろう。期待され、出来なければ責められる。ベルゼルト家での生活が染み付いている。
「ありがとう!」
助けられた子供が真っ先にそう言われてから、周囲の大人達もカイのことを褒め、お礼を言っている。
中にはバシバシと手荒く、よくやってくれた坊主!! と背中を叩くおっさんもいてカイが目を白黒とさせていたがな。
ノリの良いおっちゃんってのはどこにでもいるからな。
「え、えっと……」
「ありがとうって言われたら、どういたしましてで良いのよ」
「……どういたしまして」
ここまで褒めたたえらた経験が無いだろうカイがどうすれば良いのか困っていたのをリリアが助け舟を出す。
小さな声だったが、村人たちにはちゃんと届き、ワッと歓声がまた上がってカイは抱えあげられて胴上げみたいなことまでされることになっていた。
どんちゃん騒ぎになったその日の夕食は村人達が用意してくれることになった。助けてもらった礼だと言って、保存していた肉や卵まで出して来る。
ただでさえ豊かとは言えない村だ。断ろうとも思ったが、リリアに袖を引かれた。
「ここで断る方が失礼だし、これが報酬ってことにしておきましょ」
「だな。ここから取る金なんて気分が悪くなるだけだ」
「むしろこっちとしては食料に余裕が出来るしね。良いことまみれだわ」
リリアはこういう時の立ち回りが俺より上手い。
これで手打ち、ってやつだ。小さな村には探索者に正式な依頼を出せるほど裕福じゃないのはこの場にいる俺達がよく分かっている。
あったとしても、それは本来、村に時折来る商人を相手にするための積立みたいなものだ。それを切り崩せば、結局村全体の生活が苦しくなる。俺達はそれを良いとは思わない。
食料だって、ここの生活を考えれば、十分な高級品だ。それが出てくるだけで報酬としては十分だろう。




