協力者
その日の夕方。村でちょっとした騒ぎが起きた。
「子供が1人帰って来ない?」
そのまま村はずれで野営をすることにした俺達の下に訪れた村長の爺さんがゆっくりと頷く。昼過ぎに家畜に運動させるのに連れだって村の外へ出たまま、日が傾いても戻って来ないらしい。
その子供は俺達が村に着いた時、真っ先に話しかけて来たガキンチョの一人らしい。歳はカイと同い年か少し上くらいの印象の男子だ。
「村の方々は?」
「手分けして探しておる。だが、日が沈めば森は危険じゃ」
村長の顔にも焦りが浮かんでいる。
この辺りは平原とは言っても、川沿いに小さな林が点在している。大型の魔物は少ないが、夜になれば話は別。子供一人で過ごすには危険すぎる。
プロの探索者である俺達ですら、夜の無理な移動は避けるレベルには危険だ。
「私達も探しましょう」
「セイル」
「分かっています」
リリアが止めようとするより先に答える。
今の俺達は追われる身だ。村人と深く関わるほど、後から辿られる情報は増える。ここで騒ぎを起こせば、なおさらだ。
だが、だからって子供がいなくなったのを知らんぷり出来るほど器用じゃない。
「別に止めるつもりはないわよ。役割を決めようって言いたかっただけ」
「なら早く言ってください」
「アンタが早とちりしたんでしょ」
言い合っている時間も惜しい。村長から子供の特徴と、最後に見た場所を聞き出す。
家畜を二頭連れて東の草地へ向かった。その内の一頭だけが、ついさっき村へ戻って来たらしい。首に付けられた縄が途中で千切れていたとのことだ。
「カイは村長の家で待っててください」
「僕も行きます」
予想していなかった即答に、俺は目を瞬いた。カイは不安そうではあるが、視線を逸らさない。覚悟のある目だ。
「危険ですよ?」
「分かってます。でも、僕だけ待っているのも嫌です。それに子供の考えは子供がよく分かると思います」
一理ある。だが危険な場所へ子供を二人に増やすのは本末転倒だ。断ろうとした俺より先に、リリアが口を開く。
「連れて行きましょう。ただし、私たちから絶対に離れないこと。勝手な行動をしないこと。守れる?」
「はい」
「ちょっとリリア」
「この子はこれからも旅をするのよ。危険を全部遠ざけるだけじゃ、自分で身を守る方法を覚えられない。そうじゃない?」
そう言われると弱いな。確かに言う通りだ。カイには危機察知能力や身を守る方法を覚えてもらった方が良い。
そしてそれを最も養えるのは危険な現場に身を置くことだ。そうすれば、否が応でも覚えざるを得ない。覚えない奴は死ぬからだ。
俺一人なら、カイを安全な場所に置いて全部片付けることしか考えなかっただろう。昔もそうだった。仲間に頼る前に、自分で出来ることは全部やろうとする。
この手先の器用さはまさにそういう性格から来たものだ。全部自分でやるためには色んな事を出来る器用さが絶対に必要だった。
役には立っている。が、同時に悪癖でもある。それで何度揉めたことか。
「……分かりました。ただし本当に離れないように。なにがあってもです」
「はいっ」
準備はすぐに整えた。俺は追跡、探索用の道具を準備。リリアは索敵と身体強化用の触媒。カイには小さな笛と光跡の出る石を持たせる。
更に村長から周辺の地図を借りる。村の東には浅い沢と林。その先には昔使われていた灌漑用の水路跡があるらしい。崩落の危険があるから、村の子供達には近付くなと言い聞かせている場所だとか。
子供が行くなと言われた場所ほど行きたがるのは、どこも同じか? 俺がクソガキだった頃は間違いなく行ってるな。
一番はここが怪しいか。リリアと目を合わせ、お互いここが怪しいと目星を付ける。
「依頼として受け付けます。良いですね?」
「勿論です」
緊急時などはギルドを介さず、個人の探索者に依頼をすることは例外的にOK。少しばかり手続きが手間だけどな。
それで良いかと村長に聞きながら、ギルド証を掲示すると村長は二つ返事で了承。小さな村から報酬を受けるのは心苦しい部分もあるが、こっちも仕事なんでね。
代わりに結果は出すぜ。任せろ。




