協力者
ソレイユの街を急遽出発し、1日野宿してたどり着いたのは小さな村だ。
アストレア王国の南端にあるソレイユから見て北にある王都との中間。南部平原と呼ばれる地域にそれはポツンとあった。
商人や人が行き交う大きな街道からも離れた村で地図に名前も載ってないような規模の小さな村。
俺たちはそこで協力者の1人と落ち合うことになっていたんだが。
「おねーちゃんどっから来たの?」
「ねーねー、外の話聞かせて!!」
「一緒に遊ぼ!!」
辺鄙な村には珍しく馬車で乗り付けて来た旅人。しかも『ディバインシフター』で女神の姿に変身したからやたら美人の訪問者に興味を持ったガキンチョ共に囲まれて、さてどうしたもんかと苦笑いしているのが今の現状だった。
娯楽の無い小さな村じゃ、たまにくるこういう変な旅人か定期的に物資を運んで来る商人から話を聞くのが一番の楽しみなんだろう。
俺もガキの頃はそうやって探索者から話を聞いていたしな。
いつの時代も、どんな場所でも子供の一番の楽しみってのはそう変わらねぇのかもな。
それにしたって、どうすっかな。適当にあしらうのも可哀想だし、だからと言って付き合ってると日が暮れちまう。
連れて行くわけにもいかねぇしな……。
「これ、旅の方を困らせるでない」
俺も、同年代の子供に遊びに誘われているカイも困った表情をしていると、そこに老人が現れて助け舟を出してくれた。
見てくれからして、村長とかそんなところだな。腰こそ曲がってるが、その雰囲気は年長者の貫禄を感じさせる人だ。
「えー」
「でも昨日来た人はお話したくさんしてくれたよー」
「その昨日来た方に用があって、この人達はきたんじゃよ。そうでしょう? 旅のお方」
「えぇ、まぁ……」
急に話を振られるが事実だろうから間違いない。合流すると聞いているのはマメなアイツだからな。
前日には着いて待っているなんてのは容易に想像がつく。
そもそも、言っちゃ悪いがこんな小さな村で落ち合おうなんてしている奴なんてごく少数。良くも悪くもなんかの事情を抱えているか、特別な用事があるかの二択だからな。
この老人もそれが分かっているってことだろう。
「旅の方、ご案内しましょう」
「よろしいのですか?」
「勿論。それに、ご友人も私の家に滞在しておりますから」
成程ね。まぁ、この規模の村で人を泊めるなら村長クラスの立場じゃないと厳しいよな。
ここから見る限りでも、村の建物はそんなに立派なモノじゃない。今までいたエスメラルダやソレイユの立派な石造りや木造の家に比べると、どうしたって数段は質の低い家だと言わざるを得ない。
別にバカにしているとか、見下しているとかそんなんじゃない。この村ではそのくらいが妥当なんだという現実ってだけ。
むしろ、家があるだけ都会よりは良いかも知れないぜ。都会に行けば、職にうまくありつけずに住む家すら無いってヤツもいるからな。
贅沢には暮らせないが、当たり前を享受出来るのは悪いことでも無いと俺は思う。
その中でも村長クラスの家なら、一応、他人を寝泊まりさせるくらいの規模はあるって話。
小さな村とは言え、色々もてなす必要がある外の人間とかはいるしな。
「遅い!! 待ちくたびれてこっちから来ちゃったじゃない!!」
「あなたがせっかちなだけでしょ、リリア」
そうやって村長の家へと案内してもらおうとした矢先。聞き覚えのある溌剌とした通りの良い声が俺の耳に入って来る。
相変わらず小言が多い奴だよ。全く。
「アンタがまた面倒ごとに首突っ込んだって聞いたから、こっちは駆けつけてあげたんだけど?」
「わかってるって。そんなに怒らないでよ」
ムスッと頬を膨らませて、肩口で切りそろえられたウェーブへアが揺れ、緑色の瞳が文句ありげにこちらを睨みつける。
俺と同い年の28の割には子供っぽい雰囲気は変わらないまま。
かつて俺が所属していたパーティーメンバーで魔導士のリリア・フォルテナが腰に手を当てて仁王立ちしているのを見て、こっちは少し笑って返事をするしかなかった。




