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便利屋セイルは女神にならない ~使うほど身体が侵食される女神変身スキルで、訳あり少年を守る話~  作者: 伊崎詩音
便利屋セイル

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便利屋セイル


ルーキー2人と色々話して、飯が食い終わったら別れた。話した内容は、まぁ仕事の話だな。特訓方法とか、実戦で使える豆知識とかそんなんだ。


その都度メモを取ってた辺り、アイツら良い探索者になるぜ。なんでもそうだが、結局は真面目なヤツが上に行くからな。


「ごめんなさい……」


「別に謝ることじゃない。ゆっくり食え」


でっかいホットドッグを頬張ってもきゅもきゅと食っているカイが申し訳なさそうにしているが、気にすることじゃない。


早食いなんて良いことねぇし、ホットドッグはさっき来たばかり。何より、デカい。

オバちゃんがカイ用に3等分してくれているが、イメージするホットドッグの大体1.5倍はデカいサイズだからな。


子供にゃだいぶデカい。ちっこい口を目いっぱい開けてかぶりつく姿は可愛いもんだ。


そうしている間にも何人かの探索者から声をかけられる。大体はちょっとした雑用とかアドバイスとかだ。


武器の手入れや補修、改良。新しいフォーメーションや取得したいスキルについての助言。わからない知識に関するあれこれ。


色々なことを請け負って、答えてそれに対して報酬を得る。さっきのルーキー2人からも探索者のイロハを教えて欲しいっていう依頼だしな。


そんなことをここ『エスメラルダ』のギルド支部ではやっている。それで付いたあだ名が『便利屋 セイル』。


俺に聞けば、頼めば、大抵のことは答えてくれる、請け負ってくれる。そんな立場に今の俺はなっていた。


「この依頼を代わりに……」


「バカか。自分で達成できない依頼を他人に再依頼すんのは禁止されてるだろうが」


「告白したい人がいるんですけど……」


「それはテメェでどうにかしろ。自分でどうにかしなきゃ相手に失礼だろうが」


因みに『便利屋』と聞いて、こんなアホな話を持ち込むバカタレもいる。後者はともかく、前者は規則違反だ。ギルドから追放されたきゃ1人でやれ。


アホな依頼を持ち込むバカを追い返して、請け負った依頼の整理する。こうやってバカどもをあしらってる様子を遠巻きに見た新人が怖そうって言ってんのかも知れねぇな。


あとアレだ、断られたバカが腹いせに俺の根も葉もないこと吹聴してるとかありそうだな。もしそれが事実ならしばき上げることになるが、まぁ実害が出たら動けば良いだろ。


「……セイルさんって、人気者ですよね」


「そうか? どっちかと言うと嫌われてる方じゃないか?」


「嫌われてはいないですよ。……怖がられてはいると思いますけど」


「似たようなもんじゃねぇか」


違いますよ、とカイは珍しく不満そうな感情を顔に出して言う。なんだ、そういう顔もできるんじゃねぇか。ちょっと安心したぜ。


フッと笑った俺を訝し気に見ながらホットドッグを頬張る。オバちゃんがオマケで付けてくれた野菜スープもあるし、しこたま食ってデカくなれよ。


「ご休憩中失礼します」


ルーキー2人の依頼の終わらせ、他の雑多な依頼を受け、後はカイが飯を食い終わったら帰るか、って思っていたところで聞き覚えのある抑揚の薄い声で話しかけられる。


「なんか用? ミリアさん」


「えぇ、用件があります。別室までよろしいですか?」


「カイが飯を食ってんだけど」


「彼も別室で食事を取ってもらいます。受付嬢達に任せれば、コミュニケーションのトレーニングにもなるでしょう」


声音から微かな怒気を感じて逃げようとするけど、すぐに退路は塞がれる。逃がしてくれねぇかぁ~。

思い当たる節が確実に1つあるだけに絶対裏に言ったらめちゃくちゃ小言を言われるんだよな。


どうにかして誤魔化せないかと頭を回しているとその間にカイの食事のお盆を手に取ったミリアさんがカイを連れて受付の方まで向かってしまった。


あーあー、これで怒られるの確定かよ。


大人しく付いて行くカイの背中を見送って、受付カウンターに近付くや否や受付嬢達に囲まれて裏の事務所に連れて行かれたカイに何人かの野郎が嫉妬の目を向けているのを鼻で笑っておく。


ガキに嫉妬すんなよ。そんなんだからモテねぇんだぞお前ら。


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