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便利屋セイルは女神にならない ~使うほど身体が侵食される女神変身スキルで、訳あり少年を守る話~  作者: 伊崎詩音
便利屋セイル

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便利屋セイル


「カイ、来てたのか」


伏し目がちにこっちを見上げているのはカイ。先日から俺が面倒を見ているガキんちょ。もとい保護した子供だ。


色々と訳アリなヤツでな。細かい話は他人に話せないレベルのそれだ。何せ、下手をすると関係者全員の首が飛ぶ可能性があるからな。

そのレベルの厄介ごと、わざわざ自分から首を突っ込むなんてバカのやることではあるが……。


「ご迷惑、でしたか……?」


不安げに見上げる表情を見せられたら、そんなこと言ってられねぇだろ。保護しないなんてそれこそ無しだ。

子供を守るのが大人の仕事。それをしないなんてあり得ないね。


「んなわけあるかよ。迎えに来てくれてありがとな」


安心させるために頭をぽんぽんと撫でてやる。それをされてホッと胸を撫でおろすカイを見て、こっちも何とも言えない気持ちになる。


カイはまだ8歳の子供だ。こんな子供が様々な事情によってビクビクと大人の顔色をうかがいながら生活しているのはおかしいことだと心底思う。


俺がガキの頃なんてまさに典型的なクソガキだった。悪戯をしては親父にぶん殴られて、近所の大人達に説教される。

そうやって、やっちゃいけないこととそうじゃないことを覚えて行くもんだと俺は思う。


でも、カイはそれを許されなかった。子供が子供らしく生活することを否定され、抑圧されて生活していたことはこの様子を見ているだけで丸わかりだ。


そんなのはおかしいだろ。子供なんてのは毎分毎秒笑ってるくらいが丁度いい。


「飯は食ったか?」


「まだ……」


「なら好きなの食え」


「え、はい……」


カイを俺の隣に座らせて、メニュー表を渡す。本人はそれを見て、困ったような表情をしているが敢えて無視だ。


自分のことを自分で決めるトレーニングだ。今のカイは言われたことを忠実に熟そうとする機械のような思考回路になっちまってる。

家に入るのも、部屋で座るのも。寝るのですら、俺が言わないとやろうとしない。


自分で自分のことを決めるっていうこと。決定する権利や意思を奪われちまっている状態だからな。

ホント、胸糞悪いぜ。カイをこんな風にした奴は人間のクズだ。絶対に許せねぇが、そう簡単に手が出せる相手でも無い以上、静かにしている以外手段が無い。


「セイルさん、お子さんがいたんですか?」


「はははは、俺の子供じゃねぇよ。結婚どころか彼女すらいねぇのに」


「じゃあ、この子は?」


「訳あって預かってんだ。引っ込み思案でな。もし見かけることがあったらビビらせないようにしながら声かけてくれよ」


カイを見たルーキー2人が俺に子供がいると勘違いしたのを笑い飛ばして、メニュー表を見てうんうんと唸っている。


大方、一番安いのにするか、俺の言うように好きなモノを頼もうか悩んでいるんだろうよ。


普通、ってよりは俺はだが、俺が同じような状況だったら一番食いたい物を即決してた。

悩むにしたって割とポジティブな、食べたい物が幾つもあるとかだと思う。


そうじゃなくて、どれを選べば怒られないか、って思考をカイはしちまってるのさ。子供がそんなこと考える必要なんて1ミリも無いってのによ。


ま、これでも進歩はしてる。最初に来たときはわかりません、だったからな。それよりは悩んでいる今の方がずっと良い。


「えっと、これを」


「そうか。オバちゃん、ホットドッグを1つ!!」


「あいよー!!」


選んだのは一番安いホットドッグ。結局、高い物を頼むのに遠慮して、安いの選んだか。

それでも、自分で決定したからやっぱり上々だ。

それにここのホットドッグ、デケェからな。子供が飯に食うにはちょうどいい。


「……なんつーか、保護欲掻き立てられる子っすね」


「だろ? だからもし見かけたら頼むよ。俺も四六時中一緒にいられるわけじゃねぇからよ」


本当はずっと一緒に面倒を見てやった方が良いんだけどな。だけど、俺の仕事は探索者。

今は雑用みたいな仕事を中心にやってるから半日もありゃ戻って来れるが、それでも半日は家を空ける。


何も無ければ家で大人しくしてるだろうが、子供ってのは何するかわかんねぇからな。今日だって、まさかギルドまで来ているとは思って無かった。


良い兆候ではあるんだが……、どうしたもんかな。


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