↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
科学は魔法とともに  作者: S屋51
魔法の正体(推定)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/22

過去の魔法 皇帝の魔法

「君らは魔法とはなんだと思う?」

 でかい車はその図体に比例して内部も広々としていた。

 移動する事務所って感じだ。

 そのでかい車の広々とした車内でハロルドは僕らと向かい合い、唐突にそう切り出して来た。

 魔法とはなんだ? それにどう答えるべきか咄嗟に言葉が出ない。魔法は魔法だ。それ以上にどう言えと言うのか。

「人の意志によって起こす不自然な現象。皇帝が現れる以前、世界には魔法は存在していなかった。いや。正確には存在していたがドラゴンや巨人と同じくお伽噺の存在だった。

 魔法を使える者など皆無で魔法使いは物語の中でしか存在しなかった。

 そこへ皇帝が姿を現し、世界の首脳たちの前で魔法を披露して見せ、代価として世界を奪った。おかしいと思わないか?」

 ハロルドの聞き方は芝居がかっている。

 言いたいことがあるなら素直に言えばいいのに。

 僕もリズも、何故かいるジロウも答えなかったがハロルドは気を悪くした様子もなく続けた。

「精霊に呼び掛けるだけで火が起こり、風が巻く。そんなものが古代からずっと存在していたなら、どうしてその技術は途絶え、どうして皇帝はそれを復活させることができたのか?

 お伽噺に語られる魔法と皇帝が使って見せた力は本当に同一のものだったのか?

 科学と魔法の決定的な違いはなにか分かるかい?」

 さっき誰も答えなかったのを根に持っているのか。今度はリズを狙い打ちにして来た。

「再現性と汎用性」

「その通り。例えば銃は弾を込めて引き金を引けば弾が出る。この原理は何世紀も変わらない。的に当たるかどうかはともかく、弾が出るまでは不良品でない限り誰がやっても同じ結果になる。

 魔法は同じ手法を同じように行使しても人によって得られる結果が違う。火の精霊に呼び掛けても火の玉を出せる人と出せない人がいる。火の玉の大きさも個々で違う。銃に比べて安定性。標準性に欠けるものだ。

 しかし、魔法は銃も弾も用意する必要がない。呪文を唱えてイメージすればいい。

 誰にでも使える銃と素養のある者しか使えない魔法。どちらがいいかは一概には言えないだろう。

 問題はそんな技術が途絶するようなことがあり得るだろうかということだ。

 廃れて行く技術というものはある。だが、魔法を実演できる者は歴史的な逸話が事実だとしても、人類史における滞在時間は長くなかった。

 過去の伝承にしろ眉唾なものばかりで、炎の球を飛ばすなどお伽噺。本当に魔法が存在したなら、広く世界に伝承を遺すほどに分布していたなら、どこかで技術が継承されていてもいい。いや、されている方が自然だろう。

 もちろん、説明はできる。

 魔法には素養がいる。素養を持つ者が生まれにくい世代が続き、結果として継承者が絶えてしまった。受け継げる者が絶えて百年もすれば、たとえ新たに素養のある者が生まれても過去の技術を伝える者が生き残っていないだろう。

 或いは、伝承だけは広く世間に伝わったが魔法を使える一族は地域性のあるもので、世界でもごく限られた土地に住まう者たちだけの専売特許だったのかもしれない。なんらかの理由、天災や疫病などでその一族が死に絶えることによって技術が失われたのかもしれない。

 仮にそういう説を支持するとして、では皇帝はどこから魔法を学んだのか、という問題はどうしても残ってしまう。

 始祖皇帝ジェラルド・フォーンはある日突如として人類の前に姿を見せた。そして魔法を見せ付けた。秘伝を守る一族の末裔だった? 古代遺跡で偶然魔法を発掘した?

 否だ。断じて否だ。

 それでは説明がつかない。皇帝が現れて以後、世界各地で魔法を使える者たちが生まれたことの説明がまるでつかない。

 そこで私は魔法はやはりお伽噺。存在しなかったのではないかと考えた」

「でも、現実に存在する」

 リズがぼそりと言うとハロルドは大仰に頷いた。

「そう、今現在魔法と呼ばれるものが存在するのは動かせない事実だ。けれど、それとお伽噺の魔法が同一だと、どうして言える?」

「……? お伽噺で言われていた魔法と、現在の魔法は別物だと?」

「そもそもお伽噺はお伽噺。空想の産物であり、実在しなかった。なら、長年魔法使いなる存在が途絶えていたことの説明はつく。途絶えるもなにも、最初からそんなものはなかったのだから」

 魔法が存在せず、魔法使いもいなかった。

 だとすれば、今現在魔法が存在して僕ら魔法使いがいることはどう説明するのか。

「ジェラルド・フォーンが行使した力を何故魔法と呼ぶか知っているかい?」

 ……分からない。

 僕が読んだ本にはどこからともなく現れた皇帝が各国首脳たちの前で魔法を見せつけたとしか書いてなかった。その力を何故魔法と呼ぶのか、そんなこと考えたこともない。

「それは皇帝自身がそう言ったからだ。自分は魔法使いだ、と自称した。故に、彼の力は魔法と呼ばれることとなった。

 良いかね、自称なのだ、自称。誰かが検証の末に、これは魔法だと言ったのではない。皇帝が自分の力を魔法と称したから魔法なんだ。

 始祖皇帝はなにを以て魔法と呼んだのか。彼は一度として遙か昔に語られた超自然の不可思議な力と自分の力が同一だとは言わなかった。また伝承における魔法の定義も曖昧で、不可思議な力全般を指したりもする。西洋の魔女が使うのも魔法なら、東洋の術師たちが使うのも魔法だ。

 魔法、マジックの元を辿ればマギ。即ち宗教儀礼を司る神官であり、彼らの行使する不可思議な力、その力を持つ存在を意味する。

 そして、マジックとは手品や奇術のことでもある」

 なんだろう。なにが言いたいんだろう。なんだか、とても含みを持たせた言い方だ。

 皇帝が現れる前には魔法など存在しなかった。確かに、それだと皇帝が現れた後に僕のような魔法使いが誕生した話と矛盾しない。魔法という概念は昔からあっても、それは飽くまでもお伽噺や神話・伝承としての話であって現実に起こったことだという証拠はない。

 皇帝が称した魔法と伝承にある魔法は別物と考えるべきなのか。だとしても、皇帝がまるでお伽噺に出て来る魔法のような力を使うことは事実だ。そう、そこがミソかもしれない。同じようなものとは、必ずしも同一のものという意味じゃない。

「つまり、魔法にはタネがあると考えてるんですか?」

 リズの質問。

 そういう風に考えているのなら、手品や奇術の話が出て来てもおかしくはない。けど、そうだとするとハロルドは重大なことを忘れている。

 魔法にタネなんてない。

 僕はなにも仕込んでいない。それでも火を熾せる。風も同じだ。

「物理法則にそぐわない力の行使をするのに、自分たちはなにも仕掛けなど使ってはいない。タネなどない、と君らは考えているのだろうね」

 考えているもなにも、少なくとも僕に限って言えば間違いなくそうだ。袖口にコインを忍ばせてもいないし、襟にカードを隠してもいない。

「地、水、火、風。他にも雷なんかもあったか。君らはそれらの精霊に語りかけて力を貸して貰う。とマニュアルにはあるだろうね」

「まあ、そうですね」

 正規ルートで手に入れたマニュアルじゃないけど、確かにマニュアルにはそう書いてある。魔法とは精霊の力によるもの。僕ら魔法使いは精霊との仲介者。別称として精霊使い。

「君らは本当に精霊の力を借りているのかい?」

 ?

なっかなか作業が進まない今日この頃

気長にお付き合いいただければ幸いです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。