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科学は魔法とともに  作者: S屋51
魔法の正体(推定)

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20/20

退屈な時間

気付けば前回から一月

もうちょっと頻繁に更新するつもりだったんですがね

暑さのせいです……たぶん

冬は寒さのせいです……きっと

「魔法はいつから?」

 リズも暇を持て余してるのか。そう話しかけて来た。

「いつだったかな。気付いたときには、って奴かな。やってみたら出来た。練習したらもっとうまく出来た」

 これは余り説明になっていない。

 魔法の素養があっても普通は基礎魔導書で学ばなければ魔法を使えるようにはならない。基礎魔導書で初歩を学んで形ができる。

 僕の場合はそれをすっ飛ばしている。

 魔法の素養があるかどうかは簡単な検査で分かる。しかし、素質があるというだけでどの程度の素質であるかまでは分からない。けれど魔法使いとしての登録は簡単なテストを受けるだけでできてしまう。

 登録は義務でもあるけど、そうであるとはっきり分かってしまうのを恐れて兆候があっても検査すら受けさせない親もいるとか。検査しなければ魔法使いかどうか断定できないからだ。詭弁というかなんというか。

 それに検査内容は簡単だが費用は高いから、経済面の問題で受けさせたくないってのもいるかも。

 魔法使いとして皇帝直属の組織に入れれば輩出した家には大金が支払われるとは言っても、陽性か陰性か分からない検査のために高い金がかかるんじゃあね。

 それに魔法使いとして有能となり、晴れて皇帝直属となってしまうと親子の縁も切れるんだ。検査を忌避する親がいたっておかしくはない。陽性だったとしても大半は僅かな火を灯せるかどうかで、僕やリズのように人に危害を加えうるだけの力を持っているのは非常に稀らしい。

 皇帝は検査の義務化を推奨しているが事情は国によって違う。

 どこだかの国は国民全員が一度は検査を受けるようになっているとか。国に予算の余裕があるところはそれでいいがそうでない国は人権問題なども絡んで中々検査の普及が進んでいないらしい。だから僕みたいな野良の存在を完全には消せないでいる。皇帝であってもすべてが思いのままとはならない好例だ。それとも、皇帝にも良心があるからそこまで強制したくないから、とか?

 小さい頃はどんどん上手くなって行くのが楽しかった。炎は僕の思い描く通りに舞い踊った。威力はすぐに頭打ちになったけど、操る技術は練習しただけ上達した。

 本当は見せびらかしたかった。

 こんなことができるんだぞ、とケイティに見せたら、と何度考えたか。

 三日前まで僕が普通に生活して来られたのは魔法使いだってことを隠していたからだ。そうしろと指導してくれた伯父さんには本当に感謝だ。

「リズは?」

「小学生のとき。近所に住んでいたお姉さんが魔法使いだったから、見様見真似で」

「ふうん」

 会話の相槌としては褒められたものじゃないが、正直あんまり興味はなかった。リズがどうして魔法を使えるようになったとか、いつ頃からとか聞いても意味がないデータだ。それになんだか嘘っぽい。真偽の判別できないけど、気にならない。気にしても仕方ない。そのレベルでどうでもいい話だった。

 魔法使いは妄りに魔法を使うなと言われる。

 まあ、お誘いが掛からないレベルの魔法使いなんて大したことはできないけど、それでも人にちょっとした怪我をさせることぐらいはできる。マッチの火だって使い方によっては街を焼き払う大火にもなる。

 皇帝の指示でどの国でも魔法で他人を殺傷した場合、通常の傷害罪や殺人罪より重い罰になる。この国だと五割増しだったはずだ。まだ軽い方だ。魔法の違法使用は有無を言わさず死罪って国もあった。

 僕が生まれるより前に、ある国が魔法使いを囲って魔法を研究しようとした。すぐに皇帝の知るところになって政府の中枢メンバーがごっそり入れ替えられた。退任した首脳たちがどうなったかはどこにも載ってない。推して知るべしだろう。

 近所の親しい関係の人であっても、魔法使いが勝手に魔法について他人にレクチャーすることは禁じられている。折角魔法使いの素養があっても大半は大きな力は使えないし、使えるように勝手に習うこともできない。宮殿側が用意した公的な施設はあっても入るのがとても難しい。倍率がとんでもないことになってる。そこと係わると自動的に皇帝の監視対象になる。それでも入ろうとする人は多い。

 自由を犠牲にしても生活の安定を望む人がそれだけ多いってことだ。まあ、卒業できるレベルの人は最初からお誘いの声がかかるらしいから、殆どの人は魔法の素養があってもお誘いが来ないならそこ止まり。ちょっと変わった特技を持ってる、ってだけで終わる。

 僕は魔法を習えるレベルにあるとは思う。正確なところは分からない。なにせ試験を受けたことがないから。受けるつもりもない。家族との縁を切られて皇帝の人形になるなんて御免だ。

「なんだ、新しい女に乗り換えるのか」

 どこから現れるんだか。ジロウがひょっこりと顔を出した。

「暇なのは分かるけど、面倒ごとを増やさないでくれない?」

 ジロウは、暇なんだ。

 僕だって暇だけど、僕の場合は自分の問題だから我慢するしかない。巻き込まれただけのジロウにしてみれば我慢が必要と分かっていてもじっとしているのが苦痛でしょうがないんだろう。

「おまえらの手配写真は出てないな」

「出てたら、こんな風に日向ぼっこできてないよ」

 展望ラウンジのテロ容疑者として僕らの顔写真が広まってないのが不思議なぐらいだ。あんまり詳細を報道したくないのかもしれない。

 もし公開手配されていたら部屋の中でじっとしていないといけないから、窮屈さも今の比じゃなくなっていたろう。世間に顔を知られていないのが良いことなのか悪いことなのか。

 モーテルには僕ら以外に三組の客がいた。一組は通り縋りの旅行者。他の二組はハロルドと同じ組織の人間。ハロルドは用心棒だと言っていた。本当のところは僕らの監視って気がしないでもない。折角リスクを冒して助けた僕らが恩返し前に消えたりしたら丸損だ。ハロルドの組織も慈善事業ではないんだから、支払った労力に見合った対価が欲しいんだろう。僕がハロルドの立場でもそうするよ。

「飲みにも行けねえとか、どんな拷問だよ」

 一応、日用品なんかで必要なものは言えば揃えて貰える。ただし、酒なんかの嗜好品は必要なものと認められていない。また、贅沢を言える立場でもない。今のところジュース一本飲むだけでも借りなんだ。ストレスが半端ない。

「よう、リズ。暇なら俺の部屋に来ないか」

 狭い空間に閉じ込められていたからジロウもすっかりリズと親しくなった。いや、リズはそうは思ってないかもしれない。下心丸出しのジロウを虫でも見るような眼で見てる。

「最っ低」

 ぼそっとそう呟いた。

「ジロウ、俺の部屋って言うけど僕の部屋でもある」

「気を利かせて終わるまでどっか行ってろよ」

 モーテルの敷地から出られないのに、どこへ行けというのか。リズの部屋にでも避難しろと? そんなのリズが許すはずがない。

 というより、なにが終わるまでなんだか。

「なんなら混ざるか? 三人でってのもいいぞ」

 ジロウのは冗談だ。それは分かってる。ただ質が悪い。リズの眼が更に険しくなった。

「飲みにも行けねえ。女も買えねえ。有線も入らない部屋でなにをしろってんだ」

「黙っておとなしくしてればいいんだよ」

 別になにかすることを求められてはいない。潜伏してるんだ。目立たないようにしているのが一番だ。

 どうもジロウは隠れてるって自覚が無いみたいだ。気持ちは分からないでもない。

「大体、年上と言っても飲酒できる年齢じゃないはずでしょ」

「誰が守ってんだよ、あんな法律」

 高校生や大学生ともなると飲酒するのなんて珍しくないとは言え、一応は法律違反だ。僕らじゃ酒を買うことすらできない。

「リズだって退屈だろ」

「遊びに来てるわけじゃないんだから」

「それとこれは別だろ。どんな目的でここにいるんであっても、やることがなくて時間を持て余してるってのは事実」

 こういうときだけ正論を吐く。

 リズは、ふん、と鼻を鳴らしただけでジロウの相手をやめてしまった。

 嫌な空気。

 若者三人が狭い空間に押し込まれて暇にしているんだから空気も悪くなるか。元から仲良し三人組ってわけでもない。ケイティがいたら話はまた変わっていたろうに。

 ケイティなら自分のやりたいことに僕らを巻き込んで振り回して、退屈な時間なんて与えてくれないだろう。昔っからそうだ。三人で遊ぶとケイティがなにがやりたいかを主張する。僕とジロウをそれに付き合わせる。拒否権はない。

 質が悪いのは例えばケイティ発案でゲームを始めたとして、ケイティの負けが込んでくると癇癪を起こすことだ。それじゃご機嫌取りにケイティに花を持たせるとそれはそれで真面目にやれと怒る。ほんっとうに、手がつけられない。

 別に比べることでもないし、比べたからどうだって話なんだけど、リズとケイティは正反対の性格をしてる気がする。直情的なケイティと深慮するリズ。二人とも互いの顔ぐらい知っているはずだけど、仲が良いかどうかは聞いたこともない。

 そもそも僕とリズだって親しかったわけじゃないんだ。そんな話をする機会もなかった。

 駐車場にでかい車が入って来た。

 デザインはセダンでもボディが長い。今やクラシックカーとも言える送迎車は今でもデザインだけ踏襲したモデルが上流階級で使われている。ただし、今入って来たのは古いモデルだ。僕らよりずっと年上。

「さてお二人さん、今日は仕事をして貰うよ」

 後部席の窓から顔を出し、ハロルドが僕らを見上げてそう言った。


次回、ハロルドを交えての魔法談義

魔法とはいかなるものなのか


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