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科学は魔法とともに  作者: S屋51
はじまりの言葉は終焉を告げる

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12/13

友の死

          ※


 友人が死んだ。

 親しい友人だった。

 優しい友人だった。

 医学の道を志し、猛勉強の末に無償で大学へ行ける権利を勝ち取り、見事医者になった。

 ボランティアの医療チームに入り、中東で活動していたとき、大国の為政者が気紛れで行った空爆から始まった戦争の飛び火が友人を見舞った。

 治安の悪いところではあったが戦地ではなかった。

 少し前にA国が始めた大義なき戦争の国とも違った。

 それなのに、戦争を始めた大国Aは友人のいた場所を空爆した。

 テロリストたちがそこに潜伏していたのだと大国Aの大統領は言った。

 言っただけだ。

 なんら証拠を出すでもなく、そこに危険なテロリストが潜伏していたのだから、空爆はやむを得ぬことだと。

 実際には、その国が大国Aが敵視している国に物資を提供していたのが気に入らなかっただけだった。戦争によって被害を受けた民間人のための物資を支援したのは敵対行為だと。

 世界最高の戦力を持つ国の大統領である自分に協力せず、敵に手を貸した国に腹を立てただけだ。

 それだけのことで、病院や学校を含む非戦闘員、一般市民が居る施設を空爆した。

 国連は用をなさなかった。

 件の大統領を非難する国もあったが大国ゆえに国連としては沈黙していた。

「あの子は、何故死んだんだろうね」

 友人の葬儀。

 友人の母からの問いかけにジェリーは答えられなかった。

 善意で人助けをしていただけの人間が、爆弾で吹き飛ばされねばならなかった理由。

 そんなもの、ありはしなかった。

 死ぬ必要がない者が死んだ。

 それはなにも今に始まったことではなく、人類はずっとそういう無意味な死を量産し続けて来た。

 殺し合う他にも道はあったのに、命を奪い合う道を選ぶ。

 人間は他の動物と一線を画するのだと自称している。

 けれど、やっていることの本質は獣となんら変わらない。

 原始時代は石器で殺し合った。

 そこから人間は進歩したのだという。

 けれど石器時代と道具が変わっただけで、その本質はなにも変わっていない。獣の本性は何世紀経とうと、何世代経ようと頑なに変化を拒んで人間の中に存在した。

 競争心は新しいものを生み出しもするが、同時に多くの破壊も齎す。

 結局、人間はそれを制御できなかった。

 何世代、何十世代掛けても、それはできなかった。

 これだけ時間をかけてもできなかったのなら、もう永遠にできないのかもしれない。


「世界平和ってのは、何世紀も唱えられてるのに一度も実現してない絵空事だ」

 死んだ友人を偲ぶ会で久しぶりに会った男はグラスを傾けながらそう呟いた。

 なんという名だったかは忘れた。

 古い知り合いであるのは間違いないが、何年も疎遠になっていた相手だ。共通の友人の葬儀でもなければ再会することなどなかったろう。

 肩を抱き合って再会を喜ぶことも、顔を背け合うようなこともない。

 おう久しぶり、と挨拶ぐらいは交わす。

 そして、共通の友人が亡くなれば共にその死を悼むぐらいはする仲。

 その古い知り合いと2人でバーに繰り出したのが何時だったのかは覚えていない。

 普段は賑やかにボイラーメーカーを飲み干すような男だが、今夜ばかりはしみじみと大人しくウイスキーグラスを傾けていた。

「どこぞの大統領様は武力による統治が平和をもたらすとか抜かしていたな。

 結果、戦火が拡大しただけで誰も得をしてねえけどな」

「まあ、恐怖政治だとしても、武力統一されてしまえば戦争は減るだろうな」

「けど、減ってねえだろ」

「今は増えてるだけだな。

 けど、それは半端だからだ。相手を一瞬で制圧するぐらいの力がなければ戦争になる。当たり前のことだ」

「核でも使えってのか?」

「核を使ったら相手国は焼け野原だ。下手すれば反撃も受ける。統治すべき人間も土地も使い物にならなくするなら、それはただの破壊だ。

 自分以外すべてを破壊すれば戦争はなくなる。人類は滅亡するけどな」

 だん、と男がグラスをテーブルに叩き付けた。

 店の喧騒がそれを覆い隠しているから、誰もこちらに眼を向けない。

「だったら、結局武力による統一、平和なんてあり得ねえじゃねえか」

 最終兵器である核は脅しに使うものだ。

 実際に撃ってしまえば各国から非難されるし、支配地域は使い物にならなくなる。

 しかし核以上の兵器を誰も持っていない。

 今は。

「圧倒的な、他の誰も持ち得ない、反抗もできない強力な力があれば不可能じゃない。

 最初は抵抗されても、抵抗が無意味だと理解させれば、そして一定の権利を認めれば、尚命を賭けて戦おうという者は少数だろう。

 必要なのは、誰にも有無を言わさないだけの力ということになる」

「それだって、絵空事だろう。どんな兵器だってユニークってわけじゃないんだ。

 軍事兵器開発の競争はあっても、他を圧倒するものはない」

 ドローンの編隊だろうと、大陸間弾道弾だろうと唯一の技術ではなく、既知のものとして各国で研究・開発されている。

 その程度のものでは、一時優位に立ってもすぐに追いつかれるし、そもそも圧倒もできない。

「世界を終わらせる言葉なら、それができるかもな」

 ジェリーの小さな呟きを、男は聞いていなかった。

現実が凄すぎて……

事実は小説よりも奇なり、じゃなくていいんですけどね

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