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科学は魔法とともに  作者: S屋51
午後2時の事件

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10/13

拘束

君子危うきに近寄らず

好奇心は猫を殺す

その災禍は自らの選択

 午後1時40分になって展望ラウンジに戻ると、リズはまだそこにいた。

 さっき僕がそうしていたように、双眼鏡を使っていた。しかも中央駅の方を見ている。

 はっきり言って景色としては高層ビルが邪魔をして良いとは言えない。旧テレビ塔の後に高層ビル群ができたのだからテレビ塔からの景観の邪魔になっても仕方ない話だが、中でも中央駅方向は見て楽しいものなどありはしない。

 楽しくない景色しかない方角に向けて設置されてる固定式の双眼鏡は旧テレビ塔落成以来の備品であり、それが今まで撤去されていないだけの話であってビル群を眺めるために設置されたわけでもない。

 撤去予算がかかるのと、物好きが使用すれば金になるからだ。

 観光客が話の種に、こんな意味のない双眼鏡がありました、と使ってみるのはともかく地元民が使うような代物じゃないはずだった。

 少し離れた場所にある双眼鏡も使用中だった。そっちの双眼鏡も見えるのは高層ビル街のはずなのに。

 なんだろう?

 なにか忘れてる気がする。

 それがなにか分からないまま時間が過ぎて行く。

 メッセージが言っていた午後2時になにが起こるのかを安全な場所から観察したかったのに、リズが双眼鏡を占拠しているからできない。

 人気のない観光地、目的地を見通せる立地条件に設置された双眼鏡。いいアイデアだと思ったのに台無しだ。

「おまえさ、なにを企んでるんだ?」

 いつまで付き纏う気なんだか。

 ジロウは昼食後もしつこく僕について来る。

「企むなんて嫌な言い方だな」

「ただ気紛れで旧テレビ塔に昇ってみたくなった。そこにあった望遠鏡で遠くを見てみた。まあ、ここまではいいとして、昼飯食ってからわざわざ戻って来たのはなにかあるに決まってるだろ」

 いや、まったくその通り。

 僕だってそう思う。でも、話せないんだから仕方ない。

 ジロウの質問をのらりくらりと躱しているうちに時間は過ぎて行く。リズは双眼鏡から離れる様子がないし、もう一つの双眼鏡もずっと同じ人が使ってる。

 仕方なく僕は展望ラウンジの大窓から肉眼でそちらを見ることにした。

 もちろん、肉眼では数百メートル先の銅像なんて小さな点にしか見えない。こんなことなら自前で双眼鏡でも持って来るんだった。場所としては最高なんだから、後は道具さえあればいい。

 時計が午後2時を示す。

 同時に視界の中で突如煙が発生した。

 ???

 広がり行く煙、爆音と振動がそれに続く。

 ぐらんとした揺れ、それにどよめきが起こった。たぶん、地震だと思った人もいただろう。僕だって爆発を見ていなかったらきっと地震を疑う。

 遠目だから細かなところは見えない。それでも、銅像の辺りが爆発したように見えた。

 その周辺は濃霧のような土煙に覆われ、なにが起きているかさっぱり分からなくなっている。

 他の客たちも異変に驚いて同じ方を見た。

 リズは双眼鏡から顔を離し、悔しそうな表情をしていたが僕に気づくと足早にその場を離れて行った。

 他の客たちがなにが起こったのかと中央駅の方に注意を向けている中、リズだけはもう十分とばかりにエレベータに向かう。

「おい、今のって」

 ジロウも爆発のあった方を見ていた。

 どう誤魔化そうか。

 なにが起こるのか知らなかった。けれど、なにかはあると思っていた。それがなんであるのかを確認するためにここに来ていた。

 ジロウからすれば僕の行動は不審の塊で、さっきの爆発をまるで僕が知っていたように思っているかもしれない。それは仕方のない勘違いだ。けれど、僕としては困った勘違いだ。そして、それが勘違いだということを説明するには僕の秘密を明かさないとうまくできない。

 リズの前で上がって来たばかりのエレベータの扉が開く。

 武装した集団、ヘルメットにフェイスガード、身体はボディアーマー、手にしているのは短機関銃、屋内戦をやらかすつもり満々の装備をした警察ってよりも軍隊っぽい連中がエレベータから下りて来て、秩序ある動きで並んだ。エレベータに乗ろうとしていたリズはラウンジに戻るよう押し返されて渋々それに従う。

 彼らは手に手に持っていた短機関銃の銃口をこちらに。

 映画では良くあるシーン。まさか、リアルでそれを経験するとは思っていなかった。しかも銃口を向けられる形で。

「警察だ、全員そのまま動くな。両手を頭に置いて膝をつけ。テロ容疑でこの場の全員を拘束する」

 リーダーらしき一人がそう宣言した。けど僕を含めて誰一人として彼らが警察だなんて信じてない。

 警察ならどこの署なのかを言うはずだし、僕らが知る警察の機動隊の装備とは違うからだ。

 警察を示すロゴもどこにも入っていない。

「テロだって? 俺は無関係だ」

 一人の男が言った。

 勇気があるのか考えが足りないのか。銃を持った相手に食ってかかるなって教わらなかったんだろうか?

 しかも相手は単独ではなく訓練された集団だ。

「無関係だとしてもそれが証明されるまでは容疑者として扱わせて貰う。これは法によって認められた行為であり、抵抗する者はテロリストとして射殺許可も出ている。潔白だと言うのなら進んで協力して貰いたい。そうすることがお互いにとって一番効率がいい」

 それはそうなんだろう。

 けど、誰だって身に覚えのないことで拘束なんてされたくない。僕だって嫌だ。それでも、この場で逆らえば向けられた銃口から弾が出るのを見ることになる。

「もう一度だけ言う。全員、その場で両手を頭に、膝をつけ。おとなしく従えば早ければ今日中に帰れる」

 僕は2度目の警告で自分がただ立ち尽くしていたことに気づいた。慌てて言われた通りに両手を頭に置いて膝をつく。

 相手が本当に警察かどうかは知らない。今はそれを確かめようもない。取りあえず指示に従えばこの場で殺されることはないだろう。もし僕らを皆殺しにするつもりなら、エレベータを下りてすぐに斉射が始まっていたはずだ。そうなっていれば、僕はとっくに死んでいる。

 仮に警察でないとしても、警告するからにはなにか理由があるはずだ。

 緊張で早まる鼓動を必死に抑え、パニックになりそうになる思考回路を叱咤して冷静に事を分析する。

 本当に警察関係なら、この後はリーダーの言うように取り調べが行われて潔白が証明され次第帰宅できるだろう。

 警察や政府関係でなく彼らこそテロリストだとすれば、拘束後はたぶんここに立てこもり、本物の警察との駆け引きが始まる。

 警察であってもテロリストであっても逆らえば撃たれる可能性は自分で試してみようと思わないぐらいに十分にあった。

 ジロウが短気を起こさないかと不安もあったが、警察に取り押さえられることに慣れた幼馴染みは顔を顰めながらも指示に従っていた。

 さっきリーダーに食ってかかった男も不承不承ながら指示に従ったのは良かった。ここで反抗されたらきっと撃たれていた。射殺シーンも射殺死体も見たくはない。

 その場にいた数十名の人間たちは無駄に逆らうことなく両手を頭に置いて膝をついた。

 リズもそうしていた。


やっと動いた

数時間(劇中)に何週間かかったんだか(リアル)

次回から、ちょっと時間が過去へ飛ぶ予定です

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