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サラ  作者: ピタピタ子
3/5

運命

「レベッカ!」

私は帰宅すると母親が私のことを抱きしめた。暖かいぬくもりだった。その抱擁には愛と心配からの安堵感と加護心が混ざっていた。

「心配したんだから。」

「怖かった。」

私は恐怖から解放された感じだった。それは何もない暗闇からの襲撃から逃れたような気分だった。私は暗闇を振り払って暖かいランプの光を浴びている。 

「ママ、誘拐犯から助けてくれた人がいたの。その人がいなかったら私…」

「これ以上言わないで。あなたに触れる虫けらは一人も許さないから。」

「これからイジー達と遊んじゃ駄目?」

「一週間は外に出ちゃ駄目よ。グループの宿題は全部うちでするの。」

「ハメ外して誘拐されそうになったわけじゃないのに。」

「これは命令よ。大人だって誘拐されることがあるの。子供ならその確率がもっと上がるの。」

「ママも誘拐されるの?それならママが悪いの?」

「そうじゃないの。私はレベッカを守る為に言ってるの。一生あんたを閉じ込めたら私が誘拐犯と同じになる。そんなことはしないわ。ただ1週間は許可のない外出は禁止。分かった?」

「分かったよ。」

「娘よ…」

父親も帰って来て私のことを抱きしめた。

「助けられなくて悪かった。」

「パパが悪いんじゃないよ。だけど世の中変態もいるけど助けてくれる良い人もいることは分かった。」

あの時の私はそんな綺麗事ばかり言ってた。まだ世間と言うものをよくも知らない少女だった。世の中良い人と悪い人の二元論に縛られてる純粋な女の子だった。世の中には必ず全世界注目するような悪党を正義の鉄槌で排除する英雄がいると思っていた。だけどそんな短絡的な考えでこの世の中は回ってはいない。

「いつかあの人にお礼言いたいと思う。」

「そこまでしなくて良いのよ。あの場でお礼を言えば済む話よ。それにどんな人か私はまだんからないのよ。」

大きな事件が起きてまた平穏が戻る。

「やっと自宅学習から解放された。」 

「良かったな。親って面倒臭いよな。レベッカが好きで誘拐されそうになったわけじゃねーのに。」

「とにかくまた遊ぼうよ。」

「そうだな。」

私達は話題の映画をお菓子と一緒にたくさん見たり、一緒に宿題の調べ物をしたり、海に行ってスキーをしたり充実した日々を過ごしていた。

「夏休みだ!」

「やっと解放されるな。」

夏休みは毎年の楽しみだった。

「どこ行く?」

「今度ママとタイに行こうと思ってるけど一緒にどう?ジェニーとレベッカは特別よ!」

「賛成!」

「ママが許可してくれるかな?」

「大丈夫よ。うちのママ、皆のママから信頼されてるから。」

放課後キャンパス内でたむろしていた。

「元気だったか?」

「誰?」

「あの時の!」

「レベッカ知ってるの?」

「うん、あの人が私のことを助けてくれたの。」

彼はとても優しそうな男性だった。

「おじさん、この前はありがとう。」

「当たり前のことをしたまでだよ。」

「どうしてここに?」

「ここの清掃係になったんだ。こんな偶然があるなんて。」

彼はニコニコと笑っていた。最初は私達には距離があった。

「今日は授業大変だったか?」

「プレゼンで先生に褒められた。いつもは口うるさい先生だけど。」

「それよりおじさん、誰なの?」

「俺はサイモンだ。」

時間とともに私達と彼は親しくなって行った。数週間もしないうちに校内でも親しみのある清掃係のおじさんになった。

「サイモン、じゃあね!」

「いつもありがとう。」

子供達の間からも感謝される回数が増えた。

「イジー、他の皆にもこれをあげるよ。飴だ。」

「この飴あんまり好きじゃないのよね。今度はアイスクリームでも買って来て貰おうかしら?」

「ジェニー、あんたは食いしん坊ね。サイモン、これも十分美味しいよ。いつもありがとう。」

「お菓子は制限されてるだろ?今日飴を貰ったのは内緒だぞ。」

特にイジーは親が間食の制限が厳しい為毎日お菓子を食べることはなく、どこかに出かける時か撮影する時にスイーツなどを食べるくらいだった。私達と彼らの間ではお菓子の交換が行われた。まさに夢を叶えてくれる大人だと私や他の二人も思っていた。

「マイクがバスケの試合するんだって!!」

「見に行こう!」

放課後は校内でもスポーツが得意な子の試合を見れる日もあった。

「マイクが今日も勝ったね!」

「ねえ、声かけちゃおうよ。」

「マイク、今日の試合最高だった。」

「ありがとう。中々相手チーム手強かったけど何とかなった。こんな所で俺は負けないからな。」

「良かったら何だけど今度うちの家でパーティーするから来ない?」

「イジーの家でやるの?親とかうるさくないのか?」

「大丈夫よ。うちの親パーティーとかすごい好きだから。」

「良いよ。楽しみにしてる。」

「来週の金曜日ね。パパが車で迎えに行くから。」

「大丈夫。うちの親が車に乗せてってくれるから。」

彼はその場を去った。

「良い感じじゃん。」

「何が?」

「イジーとマイクの関係が。レベッカそう言う話とかしないの?」

「恋愛とかよく分からないけど。」

私は9歳の時点で誰かに恋愛感情を持ってたりはしてなかったし、私の中で恋と言う概念は無かった。誰かにドキドキする気持ちやずっとその人のことを考えることもなかった。もちろんマイクの何が良いのか、イジーがどう言う気持ちなのかも理解が出来なかった。

「レベッカ、子供じゃん。」

「あんたも子供でしょ。人一倍大人びてるだけで。」

「パーティーで距離を詰めて、今度デートに誘うつもり。」

「彼、人気よ。目移りとかないように気をつけなきゃね。」

私は恋の話になると二人の会話が退屈だった。何がそんな興奮して気持ちがハイになるのか理解しがたかった。分かろうとも思わなかった。はやくその話題が終われば良いと感じていた。

「どうしたの?体調悪いの?」

「いや、何でもない。ちょっと考え事してただけよ。」

「何?うちらには言えないこと?隠し事しないでオープンでいようよ。」

「習い事のことよ。今やってる習い事以外に何が合ってるか考えたの。」

「最近はじめた絵の習い事もうやめるの?」

「私、あんまり絵は才能ないと思うから。」

「絵ならうちのパパが酷いから。パパの絵見たあとなら誰でも才能ある画家になれるわ。」

「イジー、それアドバイスになってないでしょ。」

「だって本当に酷いんだもん。」

「とにかく絵の習い事はすぐやめると思う。」

「あんたらしくないよ!うちら何でも出来る最強トリオでしょ!ほら、もっと自信持ちな。」

「やめるのも選択肢でしょ。合わなかったら他の習い事やるの良いじゃん。」

「また乗馬再開しようかも考えてるけど親があんまり乗り気じゃない。」

「乗馬やりたいの?それなら夏休み乗馬とかもする?」

「タイ行って象に乗って、こっちでは馬に乗るのね。」

私の親もジェニーの親もタイ旅行に行くことを許可した。

「ねえ、ママ。ママが私くらいの時好きな男の子いた?」

「ずいぶん唐突ね。ずいぶん昔のことね。まだその時はいなかったかな。初恋は12歳の時ね。もしかして気になってる男の子がいるのね。私が聞いてあげる。同じ学校なの?」

「そんな子いないよ。じゃあ私はママみたいに初恋遅いんだ。私の友達皆好きな男の子いるのに私だけいない。恋バナとかすごい退屈だもん。」

親がうるさいと思ってもどんなことでも親に話すことは変わらなかった。

「好きな男の子見つける方法とかないの?手っ取り早く見つけたい。」

「恋は感情なの。頑張って恋に落ちるわけじゃなくて自然と恋に落ちるもんなのよ。私も初恋の男の子に恋に落ちた時いつの間にか恋に落ちてたから。意識して恋に落ちるもんじゃないわ。」

「つまんないの。私も恋バナして楽しみたいのに。」

「それなら2人に他の話題振れば良いでしょ。それにあの子達はそんなことであんたのことを仲間外れにしたりなんてしないよ。」

「分かってるけど私だけ遅れてるのが嫌だもん。」

私は少なからず競争心と言うものを持って生きていた。少しばかり大人びたい気持ちがあった。

「好きな男が出来たのか?悪いやつか確認してやらないとな。」

私の父親は笑いながら言った。

「パパは余計なことしないで。好きな男の子出来たとしても自分で決めたいの。」

「付き合うのにはその彼氏はバスケで勝負だな。」

「それならパパよりずっとバスケ出来る男の子と付き合うけど。」

「それならサッカーで勝負だ。」

「勝ったら家で盛大にホームパーティーね。分かった?」

「そうだな。」

冗談を言い合いながら希望に満ちた時間を過ごした。好きな男子がいなくても私はこれから来る希望で悩みが吹き飛んだ。


パーティーの日がやって来た。

「2人ともお待たせ。」

「ドレス似合ってる。イケてるじゃん!」

「レベッカも張り切ってるじゃん。もしかしてあんたもマイクのこと狙ってるの?」

「私は好きな男の子いないって言ってるでしょ。いつか私に見合う相手が出来るはずよ。」

「それにしてもライバルばかりじゃない?」

「それはどうかしら?」

「あれって、サイモンじゃない?」

「サイモン!」

「パーティーにいると思わなかった。誰が呼んだの?」

「イジーのお母さんにお願いされてパーティーの手伝いをしてたんだ。」

「そうなんだ。何か食べたりしないの?」

「俺はお腹が空いてないんだ。」

「パパみたいに体格が大きいのにね。」

サイモンは少しお腹が出ていた。

「本当だ。デブってほどじゃないけど、少し腹出てる。」

特にイジーは子供ながら体型維持を気にしてたから体型の基準がストイックだった。

「あまり体型について話すのは面白くない。この話題はやめだ。」

「そうね。」

「レベッカ、何か飲むか?」

「それならレモネード飲みたい。」

「私はコーラ。」

「分かった。皆のぶんを持って行くよ。」

「そう言えばイジーのママは?」

「言われてみればいないね。」

「何か変ね。」

しばらくすると彼が皆のぶんの飲み物をグラスで渡して来た。

「ありがとう。」

「ママ見なかった?」

「俺も見てない。何か起きたのか?」

「多分すぐ戻って来るから大丈夫よ。」

飲み物の味は甘く美味しく、また求めてたくなる甘さだった。甘さに浸っているうちに私は眠くなって行く。

「何か眠くなって来た。」

「レベッカ大丈夫?」

しばらくすると私は身体がふらふらして来た。

「レベッカ!」

いつの間にか暗闇になった。

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