同居
「何言ってるの?」
「そのままの意味だけど。幼稚園生でも意味分かるし難しいことじゃないけど。」
「そうじゃなくてあり得ない物語の話されてるみたいだから。そんなのすぐにバレるよ。」
「バレたらその時よ。それでどうするの?成人するまでずっとあの家で過ごすつもり?」
「それは嫌よ。」
「なら答えが出てるね。」
私は彼女の手を引っ張った。
「どこに連れてくの?」
「良いから!」
私は彼女を叔母の所まで連れて行った。
「ねえ、この子家に連れてって良い?」
「もちろん。レベッカが友達を家に連れてくなんて嬉しいわ。」
「インフルエンサーの娘だから私の家に連れて行ったこと内緒にして欲しいって。」
「そうは言ってもこの子を送り迎えしなきゃいけないのよ。」
「そこを何とかして。」
「無理よ。大人としての責任があるの。」
「分かったよ。」
私達は車に乗って家にまで行った。
「綺麗な家ですね。」
「ありがとう。所々自分で取りつけたものもあるの。この棚とか私がつけたものよ。」
「大工の家系ですか?」
「自分から興味持ったのよ。何か飲む?」
「オレンジジュースで。」
「私はレモネードよ。」
私達はおやつを食べながら休憩をした。
「私が家の周りを案内する。叔母さんはここで休んでて。」
私は彼女の手を引っ張った。
「痛い!力が強い!」
「死にはしないでしょ。」
「あんた謝れないの?」
「悪かった。あんたがそんなにやわだなんて思わなかった。」
私は適当な言葉を彼女に投げかけた。
「こっちが庭よ。こっちがトイレ。」
「2階には何があるの?」
「2階は私の部屋があるの。ついて来て。」
彼女と一緒に2階に上がる。いつもと違う雰囲気だった。あの時の灰色の部屋のようにどこか暗さを感じた。私には心地が良く、彼女には慣れない暗さだった。
「こっちが私の部屋よ。向かいがトイレ。その隣が物置部屋よ。」
物置部屋を開けた。少し散らかっていて天井には蜘蛛の巣もあった。
「ちょっと埃っぽくない?」
「インフルエンサーのお嬢様には少しきつかった?」
「何それ?嫌味?」
「思いつきよ。」
「あんたの思いつきは何かムカつく。」
「そんな怒ったところで私は私のままだから。」
「何でこんな汚いの?」
「あまり使わないから。ここにある道具はそんな環境でも心地良く生き残れる存在。」
私達は物置きを出た。
「その隣が空き部屋よ。使わないのに毎回掃除しろって言うから面倒ね。」
「使わないとあの部屋みたいに蜘蛛の巣ルームね。」
「私部屋に行くよ。」
私は彼女の手を引っ張った。
「こっちは綺麗な部屋ね。」
「自分の部屋だと思ってくつろいで。」
「この写真ってお父さんやお母さん?」
「知ってると思うけど今はいないの。だけど2人の死にメソメソなんてしてない。今の暮らしがあるから。」
「兄弟はいるの?」
「一人っ子よ。」
「そうなんだ。私は弟がいるの。」
「それなら弟に嫌な撮影とか押し付ければ良いじゃん。」
「それは無理よ。お母さんは弟は撮影向きじゃないと思ってるの。私の方がインプレッション稼げるから。それに私、あんな弟いらない。」
「親の期待値が高いわけか。」
「期待と言うかインプレ稼ぎの道具よ。」
「それならあんたは実用品じゃなくて宝石のようなコレクションね。」
「コレクションになりたくてなったわけじゃないからそれやめて!」
「それなら何になりたいの?」
「手が届かない宝石になりたいの。」
「それなら私は今その手の届かない宝石を捕まえたようね。」
彼女は険しい表情をした。
「今の何?」
「ただの比喩よ。異常だと思ったり疑うなら別に良いよ。困っても何もしない。たとえあんたが親に殺されそうになってもね。」
「私はあんたといたくて一緒にいるわけではない。一時的に避難するためよ。」
「親とは縁を切るつもり?」
「そのつもりでここに来た。最初はあんたのことイかれてると思ったけどこれからマシな人生を考えたらあんたと一緒にいる方がずっとましね。」
「それならここにいるの決定ね。」
「一生いるわけじゃないから。」
「それはどうかな?」
私は彼女のことを後ろから抱きしめる。
「他に逃げる所はあるの?」
「ない。皆私のこと知ってるから。それならあんたの部屋に閉じ込められた方がまだましよ。今の私の最善の選択だから。」
「それならここしかない。今ここを出たらあの生活に戻る。そうでしょ?」
彼女は少し不快に思っても私の手を跳ね除けなかった。その時の彼女には私に適応しなければいけないと考えていた。他に逃げ場がないのだから。
「私がいない時はこのクローゼットの中にいて。外出なんてしたらすぐにあの親のもとに戻されると思うから。それと私の部屋で過ごすなら私の部屋の決まりに守ってもらう。」
「その決まりって何?」
「徐々に教えてく。今一気に話すとあんた混乱するでしょ。」
「トイレとかはどうすれば良いの?」
「トイレに行く時は私と同じ色の髪のウィッグか違う髪型のウィッグもある。」
「それならゾーイって名前の友達で成りすますのはどう?」
「面白そうね。良いわ。」
その時から私達の奇妙な関係のはじまりだった。
「洋服を一緒に選ばせて。この洋服だとすぐにあんたのって分かるから。」
クローゼットにはたくさんの服が入っていた。叔母が私に買ってくれた服もあれば児童保護局の職員から貰った服も何枚かあった。
「どれも可愛くない。」
「そう?あんたが着こなせないだけじゃなくて?」
「失礼ね。」
「私が似合う服を選んであげる。」
私は灰色のシャツと灰色のパンツを何枚か彼女に渡した。
「今すぐ着て。」
「どう考えてもこれダサいでしょ。」
「良いから。」
彼女は言われる通りに着替えた。そして着替え終わるとどこかぎこちない感じだった。
「似合ってる。これからこの服で生活して。」
彼女は姿見で自分の姿を見た。どこかなっとくいってない感じだった。
「全身灰色ってどう言う趣味?」
「似合ってるから良いじゃん。いっそのことその格好でライブ配信とかして見たら?」
「私は誰かの為に動画に映りたいわけじゃないの。ただ洋服が好きな少女でいたいだけ。」
「生き物って進化するのよ。温度変化とかに適応する為に進化をとげた生き物もいるし、食べ物をより摂取するのに身体の一部の形を進化させた生き物もいる。あんたもそのうちこの服に慣れる。」
「私はあんたの実験動物かなんか?」
「マウスにしては生命力とか耐久力が無さそうね。誰かに飼って貰えないと生きれないロシアンブルーって所かしら?」
「そうね。マウスとかゴキブリみたいな汚い生き物と一緒にされたくないから。」
彼女は無言になって私の部屋を見渡した。
「何見てんの?」
「どんなものがあるか見てるの。」
「見とけば普段食べてる健康的なスイーツが出てくると思ってる?何度見渡しても同じ。」
「ここは前誰か使ってたの?」
「ここは母親の実家なの。それで母親が使ってた。その家を引き継いだのが私の叔母よ。」
「そうだったんだ。そんな所使ってて辛いこと思い出したりとかしないの?」
「悲しんだりはしない。2人の死は誰が悪いとか考えてないから。あの家族に未練はない。」
「あんたの両親はどんな人だったの?」
「善人でもなく悪人でもない平凡な人間ね。特に大きな偉業をなしたわけではないし、凶悪犯罪もしたこともない人間よ。あんたのように酷く扱われて来たわけじゃない。」
「私と真逆だね。好きなアーティストとかいるの?」
「ラディオヘッドとか好き。」
「何それ?」
「古いバンド。叔母の家の中にカセットがあったから聞いた。」
私は曲を流した。
「何かどこか不安になる曲。私の趣味じゃないわ。」
「そうでもないけど。」
しばらく他愛もない話をした。私の前では自分を解放してる少女だった。彼女にとっては私が特別な存在な感じだと思った。彼女も私なしでは生きていけない。きっとそうだ。そうでなければならない。
「そろそろ帰らないといけないね。送って行くわ。」
「いや、親が送ってくので。」
「そう言うわけにはいかないの。」
叔母は彼女のことを送ろうとした。
「レベッカ、どうにかして。」
「ここは言うこと聞いたほうが良いけど。」
彼女は渋々と車に乗って行く。
「家教えてもらっても良い?」
「悪いですが母が知らない人に家教えるなって言うので指定した所に下ろして貰えませんか?」
「分かった。」
彼女は車の中でずっと黙ったままだった。
「お母さんとは仲良いの?」
「それほど仲良くありません。実際あんなふうに配信とかされたり撮影されるのが好きじゃないです。私の望んだことじゃないので。」
「聞いて悪かったわ。」
「おばさんのような方が母親なら良いなと思いました。」
「言い過ぎよ。色々大変なのね。だけど確認しないでどうこう言いたくない。」
辺りは暗かった。どこか霧がかかっているような感じだった。
「お母さんは前からそうだったの?」
「私が生まれた時からそうに決まってる。私はあの人のお飾りでしかないから。宝石は持ち主の前では忠実を装うもの。」
「誰かの期待に応える宝石じゃなくて自ら輝く宝石になれば良いよ。いくらでも可能性はある。信じられないだろうけどそう信じるしかない。」
彼女はありきたりのことを言った。そうなる保障もないアドバイスだった。具体的な解決策もないことは適当な返事でしかなかった。
「また来て良いですか?」
「もちろんよ。いつでも歓迎する。あなたの家ほど豪華なものは出せないけど。」
「豪華じゃなくて良いんです。レベッカと一緒にいる方がずっと良いと思ったので。」
車はどんどん目的地に近づいた近づく度に辺りは暗くなった。
「着いたよ。」
「ありがとうございます。」
「きゃー、ゴキブリ!」
叔母は叫ぶ私にすぐに近寄った。
「すみません。母が怒ってるので。さよなら。」
「はやくゴキブリをはらって。服の中に入ったの。」
本当はゴキブリ何て怖くもなかった。
「やっと取れたね。私だって怖いんだから。」
「だってゴキブリ見るとトラウマを思い出すから。あの時あの男に食べさせられたから。思い出すだけで苦しくなる。」
もちろんそんなことはされてなかった。そう言えば信じてくれると思った。
「今日はゆっくり休むのよ。」
私達は車から降りた。そして夜中になった。
「遅いよ!」
「声を出すとか頭悪い。私以外の誰かに捕まりたいの?」
「嫌だ。」
「なら黙ってついて来て。」
叔母の寝てる時間を狙って彼女を車から出して私の部屋まで連れて行った。
「その前にトイレ!!」
トイレを済ませて彼女にあまり物を与えた。
「助けてくれてありがとう。」
「これくらい大したことない。」
私は後ろから抱きしめて軽く彼女を縛ってクローゼットに入れた。




