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サラ  作者: ピタピタ子


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20/27

外出

「きゃー、フェリシアが!」

「フェリシア!!」

「変態!」

何が起きたか知らないフェリシアの友達はずっと悲鳴をあげた。

「動くな。」

サイモンは手錠をかけられた。今まで誰かを拘束する立場だったが、警察の前になると身体も心も惨めな存在になった。だけど私はだんだんどうでも良くなった。

「怖かった。」

思ってもないことを嘘泣きをしながら言った。

「もう大丈夫よ。大丈夫だから。」

「私達はあなたに危害は加えないから安心して。」

警察手帳を見せられた。私はしばらく保護観察になった。外の世界は明るくかった。灰色の砂漠とは違い本物の太陽が照らしていた。太陽が照らしてるはずなのに心の中ではずっと茶色の月光が差しているようだった。私と言う存在が生きる目標がなくなったような感じだった。サイモンもアリッサも私を縛る手錠や足枷や座り慣れた椅子も不衛生な灰色部屋や空気も全て私から切り離された。だけどアリッサ以外は取り戻す気にはなれなかった。

「君がやったのか?」

「サイモンと言う男に指示されてやりました。本当はこんなことやりたくなかったんです。駄目なことだって分かってました。でもそうしないと何されるか分からなくて…それが怖くて。それに死ぬなんて思わなかったんです。これは殺人ではありません。」

メラニアは殺人ではないと何度も訴えた。彼女の両親は人工妊娠中絶に反対だった為彼らの同意を得られずに彼の子供を産むことになった。それからも彼女が私について話すことはなかった。

「フェリシアが…どうして…何で罪のないあの子が殺されないといけないの。おかしいでしょ!誘拐されただろうが許せない。殺した少女が許せない!」 

フェリシアの母親はメラニアのことを訴えた。

「お母様落ち着いてください。」

「法が許すのであれば私が代わりに殺してやりたい。皆さん、どうかあの少女に重い刑罰をお願いします。」

弁護士からは何度も止められるくらい感情的だった。

「今、ここで感情的になっても裁判で勝訴するわけではありません。法廷では冷静な判断が委ねられます。娘さんを亡くされたことには同情はしますが何をするべきかよく考えてみてください。こちらとしても最善を尽くしますのでどうか早まった行動をしないように願います。」

「分かってます。だけど旦那のことを責めることは出来ないんです。彼がそんなことするだなんて今だに信じられないので。」

事件が発覚しても旦那のことは責めなかった。頭で分かっていても自分の感情をどうにかすることは出来なかった。

「ねえ、またフェリシア呼んでどこか出かけようよ。」

「アンジー、何言ってるの!あの子は…あの子はもうここにはいないの!戻って来ないんだよ!」

「だってあの子がいなくなったのなんて信じたくないよ。うちら3人いるのが当たり前だったでしょ。」

「だからってそんな冗談言うなんて理解出来ない。人工知能か何かでも使ってあの子のこと再現するつもりなんでしょ。私はそんなことしない。あの子のあんな無残な姿見たら現実しか見ない。」

「冗談言うつもりじゃなかった。あんな苦しんでる最後を見るなんてあんまりだよ。」

「あんた達、悲しんでばかりじゃ駄目よ。」

「前を向けてないのはアンジーよ!私は泣いてなんかいない!」

「あんたが心ないこと言うから誰でも悲しくなるでしょ!」

「だって本当のことでしょ!」

二人の声がぶつかり合う。

「2人とも!これはどっちの考えが良くて悪い問題じゃないの。死と向き合うのも大事だし、現実とちゃんと向き合うのも大事。ぶつかるなら思う存分ぶつかっても良い。だけど二人傷つけあったりしたらあの子と同じ悲劇になるだけ。あの子のぶんもしっかりと生きること。もちろん私が年に何回かあの子のお墓に連れてく。」

彼女達は納得はいってなかったが前に進むしかなかった。

「アンソニーはどうしてるんだろう?」

「今誰かと話せる状態じゃないわ。あの時とは別人よ。」

彼はトラウマから抜け出せなかった。何回か自殺を試みたことあった。その度に両親やカウンセラーに止められた。

「今のセラピストどう?」

「誰を選んでもこの傷は簡単に癒えない。夢を見る度にあの生活が蘇るし、今の生活も監禁生活と変わらないじゃないか。考えても生きる希望が見いだせなくなるんだ。一生取れない棘が刺さっているような感覚だ。」

彼から笑顔も悲しみも怒りも無かった。ただ過敏になった両親に管理される日々だった。

「誕生日プレゼントは?」

「全てお父さんとお母さんが持ってる。」

自傷行為に走ることがあるので刃物じゃなくても全て両親から没収された。持ってて許されるのはちゃんと管理された飲み物とベッドだけだった。彼のいた部屋は白い空間だった。誰とも連絡は取れてない。窓の外を見ることですら許されない。人気者のアンソニーは消えてしまった。


サイモンは裁判がはじまり拘置所に送られた。彼は私、アリッサ、メラニアの他に2人の症状を誘拐した。そのうちの1人は過酷な環境なゆえに亡くなった。元々酷いアレルギー症状を持っていてハウスダストでかなり苦しんでいた。気管支喘息を持っていてこの世を去ってしまった。名前はエスター。14歳だった。亡くなった場所はシャワー室だった。そう、あの時私がはじめてシャワー室に入った時踏んで不快感を感じた感触は彼女の死体だった。彼がまだ彼女の死体を処理していなかった。死体は車で運んで山にいる猛獣に食べさてたと彼は証言した。もう1人は無事に救出されがPTSDなどの重篤な精神疾患に陥って心は抜け殻だった。久しぶりに会えた両親ですら誘拐犯に見えるくらい人間不信になった。彼女は身体だけが存在していて、心は存在していなかった。

私は児童保護局に引き取られてカウンセリングを受けたり、教育的なサポートを受けた。

「何度も確認するけど私の両親は?何でもったいぶって言わないの?」

「そんなつもりなかった。すごい言いにくいけどあなたの両親はあの男に殺されたんだ。」

「やっぱりそうだと思った。もう何が何だか私も分からない。」

私は心の中を話さなかった。話そうと思えば話せたが話すつもりはなかった。これからフリになるだろうから。私はこれからの利益になることを考えて、その行為が不利益になると思った。私はあの時のように両親の死に衝撃を受けなかった。それくらい私の中ではサイモンのことが好きだった。どこが好きなのか今になっても分からない。特別見てくれが良いわけでもないし好きになったきっかけも思い出せなかった。好きになることや所有することには理由はいらない。それが世の中の運命だから。私は彼を好きなってそばにおいておく使命があった。誰が何を言おうとそれは私にとっての強く揺るぎない思想だった。誘拐されるのも彼と結ばれる為の運命だった。だけどそんな彼に私はがっかりした。期待は強い感情。人の欲をかき立てる感情。期待は固定概念の範疇ですら逸脱を望む。そこにずれが生じた時感情の伝送の崩壊が起きる。

「アリッサはどうなったんですか?」

「彼女は亡くなったのよ。」

「何の冗談ですか?」

「サイモンと言う男に殺されたのよ。」

正確には過失致死だった。


彼女は順従だった。しかしそれは全て彼女の計算だった。彼に気持ちなど一切ない。自分の日常を取り戻すための手段に過ぎなかった。彼に行為など一切なかった。彼女は勉強の才能だけではなく女優としての才能もあった。

「いつも口で愛の言葉を言ってるから今日は手紙で思いを伝えたい。どこかの部屋の少女みたいに出る馬鹿な真似はしない。誰か私に手紙を書かせて。」

宮殿のような部屋で彼女は手紙を書くのにペンを手に取った。

「痛い!」

彼女はペン先を彼の鎖骨に勢いよく刺した。

「ま、待ちあがれ!」

彼女は鍵を盗んで、急いで部屋を出ようとした。

「待て!」

彼女が思ったよりもはやく彼は起き上がった。彼女は部屋を出て廊下に出た。

「逃げるな!」

「来ないで!」

彼はクリスタルを彼女の方に投げて当てた。彼女は痛さで倒れた。倒れた彼女を彼はつかんで元の部屋に引き釣り込んだ。彼はいつも以上に血の気が立っていた。髪の毛を掴んで壁にぶつけた。

「恐ろしいガキだな。演技力で俺ことを騙すなんて。演技だと知ってガッカリした。」

彼女は何も答えなかった。

「沈黙を貫くのか?」

彼女は倒れたままだった。

「おい!!目を覚ませ!!」

ぶつけた所が悪く彼女は即死してしまった。彼は彼女が死んで内心ショックを受けた。一番に気に入ってたから。彼女は他の監禁された少女とは違った。外の世界でも監禁された部屋でも同じように好待遇の環境に置かれていた。外ではお金、監禁部屋では交換条件の物資。

「レベッカ、こっちに来るから。」

アンソニーが来た時に私が聞いた彼女の声は幻聴だった。その時には彼女はこの世にいなかった。

「彼女の亡骸はどこにあるの?」

「警察の方で詳しい検死が終わったから、あと2日くらいで墓が完成するの。案内するわ。」

私はある日アリッサの墓まで案内された。私は墓石に手を当てた。アリッサのことを触っているようだった。私は墓石を抱きしめた。

「何やってるの!やめなさい!」

「だってあの子のことが好きだったから。」

「気持ちの伝え方が違うわ。墓石にハグしてそれが本物になったら人口爆発よ。」

被害者を支援する財団の職員が私のことを止めた。

「特別な存在がおさめられてる墓石を抱くのが何がいけないの?」

「死者への追悼にならないからよ。」

私はバレないようにある四文字を墓石の裏に書いた。

「今度、誘拐事件の取材があるけど受けるつもりはある?もちろんプライバシーは保護するし、取材は強制ではないし、無理やり来る取材陣に鉢合わせないようにする。」

「取材は受けたくない。私は私のことも加害者のことも同じ被害者のことも話すつもりはない。」

取材陣が殺到することはあったが私を引き取った局の職員や財団の職員が追い払ってくれた。その後私は児童保護局の判断で違う州に住んでいる叔母の元に引き取られることになった。

「レベッカ…あなただけでも無事で良かった。」

会ったとたん彼女は私のことを抱きしめた。私は無表情だった。社会上や法律上必要としてる立場だろうと個人としては彼女のことが必要ではなかった。しかしこの退屈だと思える外の生活にも変化が起き始める。

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