真実
灰色の部屋は電気がついてるのに黒に近い色になっていた。
「は?冗談だよな?」
「本当のこと。サイモンとあんたの同じ学校のフェリシアは親子関係。」
彼の驚く反応は誘拐された時の私を見てるようだった。身近にいた人間が誘拐だった時の衝撃は強力で割れないガラスの窓を割るようだった。
「話に聞くくらいで会ったこともなかったけどそんなの信じたくない。」
「学校の友達の親と言う一面しか見てなかったようね。あ、そもそもこうやって連れ去られる前に私のように会ったこともなかったか。だけどこんな優しい誘拐は他にいない。誘拐犯だろうがなんだろうが彼は優しい人間。こうやって何事もなく空気を吸って生きてるんだから。」
「どうしてそれを僕に言ったんだ。そうすればショックを受けると思ったのか?」
「そうよ。あんたがショック受けるその顔を目に焼きつけたかったの。どう?いかれてると思う?」
「これ以上何も言うことはない。」
「良いこと考えてるの。」
「犯罪まがいな計画は聞かない。そう言う趣味ないから。」
「まだ話でもないのに。私が考えてるのはあの子に自分の父親が誘拐犯だって伝えたらどうするか見てみたい。」
「人の不幸を笑う趣味は僕にはない。絶対にそんなこと許さない。」
「エリートに見えて頑固ね。意地を張っちゃって。あの子のこと好きじゃないの。あの子よりずっと私の方がサイモンのこと大切だと思ってるのに。今まで割り切ってたけど世間体が考える理性が負けた。この際大事な人の娘なんか関係ない。あんな女より私の方が家族になれる資格がある。そう言うもんよ。」
「そんなことしたら絶対後悔する。」
「失うものがたくさんあると言いたいんでしょ?私はあんたが何考えてるかお見通しよ。もう失うものなんてない。両親はこの世にいないんだから。」
「またあの男が言ったんだろ?まだ生きてるかもしれないだろ。希望を持っても良い。君を救えるのはあの男じゃない。今無理に理解しろとは言わない。だけど冷静に考えて欲しい。」
「それってあんたのエゴでしょ。あんたの物差しで幸せか判断してるんでしょ?そんなのいらない。」
「そうだよ。エゴだ。救えるなら1人でも救いたいエゴさ。」
「面白い男の子ね。」
「どこに行くんだ?」
「探索よ。」
「連れてって。」
「無理。私の信頼勝ちとったら良いけど。今のあなたはその資格がない。」
私は進展することもなくいつものように彼の部屋に行った。そろそろ何か行動に移さないといけないと思った。
「あー、また負けた!最悪!」
「あんたが弱すぎるだけ。」
「もう一回やりたい。」
「もう無理。他のことやろうよ。それより最近フェリシア大丈夫かな?体調不良が多いし、何だか一人になりたいとか言う回数が増えたし、今日も遊びたい気分じゃないって言ってたし。」
「あの子の変貌は見逃せないけど過剰に心配するのは逆効果だと思う。」
「そう?一人になりたいって言うけど寄り添って欲しいんじゃない?このまま一人にしたらますます病んでくと思うけど。」
「去年とかそんなことなかったし悩みとかと無縁だったけど。顔も分からないストーカー野郎とかの仕業に決まってる。そいつが今だに野放しになってるとかムカつく。顎の骨折ってやりたくなるわ。」
「顎の骨じゃ足りない。全身の骨折ってやりたいわ。」
「それならアソコの骨でも折ってやろうか。」
「何それ?骨なんかないでしょ。汚いから蹴りたくもないわ。そもそも男って言うのも決まったわけじゃないし。」
フェリシアの友達は彼女のことでずっと話していた。
「ゲームも映画見るのもあの子いないとつまらない。」
「おかしいと思わない?」
「何が?」
「監視カメラがあるのに犯人が誰か特定出来てないって。」
「今度は探偵ごっこでもするつもり?」
「そうじゃなくて。うちらじゃ分からない何かが家で起きてるんじゃない?」
「虐待とか?搾取とか?そんなふうに見えないけど。」
「そう言うあからさまなのじゃない気がする。」
「ストーカーとグル?」
「証拠がないから何とも言えない。だけどここまで来ると庇ってる気がする。」
「推理映画の見過ぎでしょ。そんなことあったらびっくりするわ。あんたは相変わらずそう言うの大好きだからね。」
「探偵ごっことか推理映画とかじゃなくて友達として考えてるの。」
「あの子のパパとママはそんな奴庇ってどうしたいわけ?」
「そこまでは分からない。あくまで推測だから。今日こっそり家に行かない?」
「車乗らないと行けないよ。車運転して良い年じゃないし。」
「それならチャリで行くよ。」
「今日は流石にパス。もう遅いしママがハンバーグ作ってくれる日だし。」
「友人よりハンバーグをとるのね。だけど今日は作戦を練ってみるだけの方が良さそうね。」
「あんた達、何話してたの?」
「ママが何でこんなにスリムな体型を維持してるのかって話してたの。」
「小学生がそんなことばかり気にしちゃ駄目。ちゃんと食事をバランスよく取ることよ。もう今日は遅いから送ってくよ。」
私はいつのものようにあの女の部屋に水をまいた。かすかに泥も混ざっていた。そして彼女のコップに下剤を入れた。いないと思ってたはずだったが部屋に戻って来る足音が聞こえた。
「何これ…またベットが濡れてる。」
彼女はベッドに横たわった。私がベッドの下にいることも知らずに。
「心当たりのない嫌がらせが何回も続いてるけど私の幻覚なのかな?2回くらい家宅捜査やってもらっても何も異常ないって言うし納得いかなくて。」
彼女はネット上で知り合った女性と友達になりよく通話をするようになった。
「変な電話とかはここ最近来てない?そう言う奴はネットでもあなたのこと監察すると思う。」
「やめて。想像したくもない。今の所そんなことないけど。」
「それならつるんでる友達とか疑った方が良いね。あんたの能力に嫉妬してるのかも。」
「私は嫉妬もしないしされない平凡な女の子なの。」
「平凡ならこんなネットでしか合わない女と連絡しないけど。」
「ネットのヤバイやつとそうじゃない奴選別してるの。色んなヤバイ奴いたけどあんたはまともよ。」
「私のこともあんまり信用しすぎない方が良い。どこかで裏切るかもしれないから。」
「もちろん学校の友達でもお金のやり取りはママから慎重にしろって言われてるからしない。」
「気をつけなきゃいけないのはお金だけじゃない。弱さにつけ込むストーカーとかよ。私がストーカーだとしたらどうする?」
「それはない。現実味がなさすぎる。知り合った人がハリウッド俳優だったって言うなら面白い冗談だね。」
「センス求めてる場合じゃないでしょ。話ずれたけどその嫌がらせ身近な人でしょ。」
「学校の友達はありえない。最近一人になりたくて家にあの子達招いてないし、連絡も取る気にもなれなかった。」
「そうか。」
「ママとパパもそんなことするはずないし。」
「その可能性あるんじゃない?」
「え?」
「二人は相談にちゃんと乗ってくれるの?」
「パパは無関心だし、ママは聞いてはくれるけど行動にうつしてくれない。何と言うかずれてると言うか。」
「それなら二人とも疑った方が良い。」
彼女は家族写真を見た。
「そんなことするはずがない。ありえない。何でジョセリンまでそんなこと言うの?もう嫌。」
「私もそんなこと言われたらモヤモヤするしどこかに行ってしまいたい。誰の言うことも聞きたくない気分になる。だから今日行ったことは心の奥底に留めて行く程度にすれば良いよ。」
彼女は通話を終えた。
「明日パパ遅いんだよね。」
彼女は写真を見つめてるうちに眠りについてしまった。私は眠りについてる彼女の首に手を当てた。
「私はあなたよりパパのこと知ってるんだよね。それで愛娘アピールとかウケる。」
私は彼女の首を絞めようとした。
「まだはやい。このままで終わらせるわけには行かない。パフォーマンスはこれからね。」
私は写真を手に取った。その写真を粉々にして彼女の顔にばら撒いた。
「今日お父さんいないんだよね?」
「夜遅くなるだけよ。泊まるなんて滅多にないから。」
「家にいるの長いから珍しと思って。」
「今日のお昼はお父さんいないから豪華なもの食べるよ。」
「悪いけどそんな気分じゃない。」
彼女は彼の部屋を開けようとしたが開かなかった。
「開かない。」
彼女はドアに突進した。
「ちょっと何やってるの?」
「いや何でもない。ママには関係ないことだから。」
「何でもないわけじゃないでしょ。ちょっとどこ行くの?待って、フェリシア‼︎」
部屋に急いで戻った。
「何かあるなら話して。」
彼女のお母さんは何度もドアを叩いた。
「そんな気分になれないだろうけど一緒に美味しいものでも食べようよ。」
「食べる気分じゃないから。」
「もし食べる気分になったらいつでも言って。宅配で頼んでおくからね。」
「分かった。」
彼女はご飯を食べた。彼女の母親が寝ていたのでもう一度サイモンの部屋に入ろうとした。
「開いてる…」
恐る恐る彼女は部屋に入った。
「手錠?お父さんが何でそんなものを?」
部屋をくまなく探索した。
「これは?」
今まで見たことないものがたくさん出て来て驚きを隠せなかった。
「電話?お母さんから?」
彼女は電話に出た。反応がなかった。
「お母さん?」
母親の部屋を確認したら寝ているままだった。
「え?お母さん…?」
「驚いてるんだよね?」
「誰なの?もしかして今まで嫌がらせしたのあんたなの?」
「何こと?知らないな。」
「嘘つかないで。」
「嘘つきだと思おうが気にしないけど。だけどトップシークレット教えちゃおうかな?」
「ちゃんと話して。」
「私の言うとおりにしたら教えてあげる。」
彼女は携帯を床に落とした。電話がきれた。
「何?」
物音から音がすると思ってクローゼットを開けた。
「どうして電話きちゃったの?」
「誰?」
「あんたこそ誰?」
「今まで私を追い込んだのあんただったのね。」
彼女は震えていた。
「何のこと?」
私は彼女にスタンガンを当てて気絶させた。彼女を運んで地下まで連れて行った。そして彼女を縛った。そして椅子まで用意して足枷までつけた。
「フェリシア‼︎ちょっと、何やってんだよ?やりすぎだぞ。」
「これからがショータイムよ。」
そして彼女は目を覚ました。
「さあはじめようか。」
私の儀式は始まる。




