嫌がらせ
家宅捜査の次の日サイモンの家では家族会議になった。
「本当に誰かの声が聞こえたの?」
「うん。大人の女性のような声が聞こえたの。私のことを信じて!」
「可愛い娘が嘘をついてるとは思えない。パパは信じるよ。」
「証拠がない限り誰かがいるって確定出来ない。だけど不安な気持ちは分かる。だから監視カメラを設置しよう。」
「いや、監視カメラはやり過ぎじゃないか?」
「どうして?家に何か起きてからじゃ遅いのよ。」
「監視カメラつければパパのプライバシーや娘のプライバシーに関わるだろ。」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。あなたはただの間抜けだと思ったけど危機感なくて鈍感なのよ。」
「子供の前で怒鳴ることないだろ。」
「その原因作ってるのあなたでしょ。分かってるの?」
「俺のこと責めるのは筋違いだろ。」
「もう何にも理解してくれない。私だって何か起きたら嫌だし娘が不安な中過ごす姿なんて見てられないの。」
「もうやめて!私のことで言い争いしないで。とにかく監視カメラをつけて欲しいの。」
家には監視カメラが設置されることになった。私達がいる所は地下だった。
「フェリシア、最近薬はちゃんと飲んでるの?」
「飲んでるよ。」
「寝る前に飲んでるよね?」
「そうに決まってるじゃん。私が幻聴聞いてるって言いたいわけ?」
「そうじゃないけど確認したいだけなの。」
「学校行くから送って。」
「分かった。」
彼女は学校についた。
「何か最近うちの親薬飲んだってうるさいんだよ。予定表のリマインダーみたいに。」
「何の薬?」
「抗不安薬とはもろもろよ。カウンセリングだけで十分だと思うけど。」
「あれから手がかりは?」
「特になしよ。」
「収穫なしか。」
「絶対何かいると思うから監視カメラつけてもらったの。」
「これで犯人取っちめられるじゃん。」
「まだ決まったわけじゃないけど。」
「見て!」
「アンソニーだ!」
「今日もカッコいい。」
アンソニーは学校でも人気の男子だった。
「彼の進展はあるの?」
「特にないよ。」
「意外と恋愛に関しては引っ込み思案なんだね。」
「別に良いでしょ。」
「だけど話さなきゃ何もはじまらないよ、フェリシア。」
「きっかけを考えてるのよ。きっかけさえどうとなれば話すのは楽よ。」
「それはどうかしらね?緊張してどもっちゃったりして。」
「そんなことないわ。」
「アンソニー。」
「何だ?」
彼女の友達が彼に声をかけた。
「今度うちの家で誕生日パーティーやるけど来ない?」
「良いよ。」
「やったー!あと良い情報教えてあげる。ここにいる美女2人組も来てくれるんだって。」
「そうか。それは楽しみだな。」
「これ招待状ね。これ持って私の家に来て。後で場所はメールで教えるから。」
「分かった。これからバスケの試合あるからまた後でな。」
「バスケの試合だって!見にかない?」
「見に行くしかないでしょ。」
3人は体育館まで行った。
「アンソニー、頑張って!」
「きゃーー、最高!」
3人は彼の姿を見て興奮した。彼は彼女達より1つ年上の男の子。彼は誰が羨む王子様のような顔をした男の子だ。勉強も出来てスポーツも出来た男の子だ。友達も多いし、男子からも人気だ。どんなスポーツをしても成果を残し、どんなところでも引っ張りだこだ。もちろんパーティーにも。
「点数の多くは彼が決めたのよ。最高すぎ。」
「試合も良いけどもっと大事なことあるでしょ。」
「何言ってるの試合より大切なものはないわ。」
「パーティーのドレスとか選ばないとでしょ。」
「うちはあんまり高いのは買えないよ。」
「うちも。」
「それならコーディネートをよく考えないといけないわね。」
彼女達は親の同伴でドレスを見た。
「これとか良いんじゃない?」
「小学生にしては派手すぎない?」
「良いのよ。誰だってパーティーで注目されたいのよ。張り切らなかったから置いてきぼりになるわ。」
「それが着たいのなら良いわ。私もあんたくらいの時は気になる男の子に注目されたいなんて思ってんだから。」
「理想の男子捕まえられなかったのね。」
「理想は全て叶うわけじゃない。現実の中でも幸せがあるのよ。理想って完璧でもあるの。運が良ければ理想は手に入るんだろうけど。そんな奇跡なんて映画や童話みたいにたくさん起きるわけないの。誰でもシンデレラになれるわけじゃないのよ。」
「お母さん現実的過ぎない?うちのお母さんは逆に夢ばかり語るタイプだけど。」
彼女達はドレスを買い終わり家に戻った。
「クソ。喋れないようにしてるのに誰が叫んでるんだ。娘の幻聴だよな…」
私は彼の独り言を黙って聞いていた。頭をかきながら苛立っていた。暗闇の中物をたくさん投げた。物が当たっても何とも思わなかった。思うとするなら彼からの愛を受け取ったんだと思った。彼がいなくなると私は隣の部屋のメラニアに話しかけた。
「良いこと教えてあげる。あんたここをはやく出たいんでしょ?ここから出してやる。だけど協力して欲しいことがあるの。もちろん私は秘密にする。あんたがどうなろうとどうでも良いからね。」
彼女はずっと喋れないままだった。
「今私がここを出たいと思ってるでしょ?そうするつもりはないわ。だって私は彼のことを愛してるんだから。」
ずっと何かを言いたそうだった。
「計画内容は今話せないわ。その時になったら話す。」
しばらく無言が続いた。
「良かったわね。あなたと再会したがってるとパパとママに会える希望が見えて。私に従えば辛い日々から解放されるのよ。信じてないでしょ?無理もないわ。サイモンは抜け目のない男だから。私と言う存在が現れるまでは。私のこと頭おかしいと思ってる。」
「うーうー!」
「その叫び声はそのようね。頭おかしいは語弊がある。彼が私の才能を見いだしてくれたのよ。おかしいのは彼が言う外の世界よ。」
彼女は必死で何かを訴えてるようだった。
「あなたに付き合ってるほど暇じゃないわ。何度も言うようだけど計画内容は後で話すわ。私のことを絶対話さないという条件であんたを助けるわ。」
私は足枷と手錠を解錠してまた小さな外の世界に出た。すると遠くから声が聞こえたので耳をすませた。
「ねえ、監視カメラどこに仕掛けてあるの?」
「言えないわ。」
「どうして?」
「耳貸して。」
彼女達は小声で話して。
「警戒しすぎじゃない?」
「これくらいしないと危険よ。もしかしたらまたどこかに潜んでるかもしれないんだよ?私、不安で不安で仕方がないの。」
「大丈夫よ。」
彼女達はお互い抱き合った。
「困った時はうちらがいるんだから。もしかしてうちらの存在頭から消したんじゃないよね?」
「そうじゃないの。ただ気が気じゃないだけ。」
「皆、部屋に行くよ。」
彼女達は場所を変えた。
「ここで話すと不味いわ。筒抜けだと怖いから。」
「フェリシア賢いじゃん。」
「あんた達が不注意すぎるの。親見て反面教師で注意深く無ってるの。パパはそんなに関心なさそうだし間抜けだし、ママは心配したり私を守ることばかりでこの家の警備とかあんまり考えてくれないの。」
「それならうちらが警備ってわけか。犯人さん、どこにいますか?見つけたらボコボコにして窓から放り投げますよ。」
「私の親友の敵は絶対とるんだから。」
「宣戦布告してどうするのよ。」
「その方が出てきそうでしょ。」
「やめてよ。あんた達にも何か起きたら嫌だよ。」
「大丈夫だって。いざと言う時は護身用のグッズ使えば良いんだから。」
私は彼女達が何を話してるか全部を聞き取れなかったが警戒してるのはよく分かった。ただ1つ分かるのは彼の娘は強がってるだけで本当は脆いってこと。
「これが変装グッズね。」
私は彼女達が話してる間に彼の部屋を歩き回った。部屋は彼の匂いでいっぱいだった。その匂いは私の鼻を癒す。そして全身で嗅ぎ取る。
「これだわ。」
彼のクローゼットから服を何着か見つけた。服を触った。全身でそれらを触る。私の温度を彼の服に残しておきたかった。服の匂いをよく嗅いだ。そして服を舐めた。ここは愛の空間だ。だけどバレてしまえばその愛はすぐに終わってしまう。それなら愛の記録を残したかった。唾液をつけたり数分で消える温度を残しておいたり。
「もっともっと。」
どんどん色んな服の匂いを嗅いだ。服だけじゃなかった。部屋のカーテンの匂いも嗅いだ。部屋をくまなく見ると彼が誘拐する時に着るような服も出て来た。他にも身長を少し高くする靴もあった。その靴を見てパーティーの日を思い出した。その日は彼が私のことを導いてくれた大切な日だ。嫌でも私は忘れない。一度手に入れたものは満足行くまで話すことはない。私は蛭のような人間だ。食べ物ならチューインガムだ。それらよりももっと取れない存在だ。私の気持ちが変わらない限りは取り除けない。
「ここにも良いものがあるわ。素敵なプレゼントね。」
引き出しにはたくさんの銃と手錠などが入っていた。他にもナイフなども入っていた。窓に向かって撃つふりをした。ナイフの刺さり具合も確認した。
「いざと言う時はこの銃のおもちゃで脅すこと出来そうだわ。」
「相手が大人なら未成年が銃持ってておかしいと思いそう。護身用には良さそうだけど。」
「バレなきゃ持ってても良いんだよ。ヤバイやつの前では良い子でいるのは意味なしよ。」
「それな。」
私はあの女を撃つ練習をした。実行するかは決めてなかったが妄想の中で何回も殺した。銃殺だけじゃありきたりだから他の殺し方もたくさん考えた。芸術的な殺し方も考えた。
「殺せば守るものが変わるよね?」
私は彼女がいなくなったあとの未来を考えた。きっと恋人としての愛も娘としての愛もどっちも独占出来る未来だろう。母親には興味がなさそうだから殺害は考えなかった。彼の養子になれば全てが思い通りに違いない。
「ご飯の時間だ。」
彼は私が出入りしてるのに気がついていない。その方が都合が良かった。
「助けるまで時間がかかる。大人しく待ってて。」
私は変装した。身長を高く見せて男性の格好をした。そしてかれの匂いがする帽子をかぶった。彼の娘の部屋に入った。
「ここがあの女の部屋ね。」
私はかかっているドレスを見た。新品の綺麗なドレスだった。
「これを自慢したいのね。きっとそうよ。」
私は彼にドレス姿を見せる彼女を想像して苛立ちを感じた。
「売女め!消えろ!クソビッチが!」
私は持ってる包丁でドレスを切り刻んだ。
「ついつい感情的になっちゃった。でもこれは愛の為の儀式なのよ。結婚式や葬式くらい大事な行事よ。」
ドレスを酷く傷つけた。ドレスの切れ端が床に落ちた。それを私は足で踏みつけた。




