幕間
「ねえ、お姉ちゃんはどうして騎士さんになろうと思ったの?」
昔のことを思い出していた。
「悪者をやっつけるためだ」
「わるもの? お姉ちゃんのわるものって、だれ?」
「そんなの、魔王に決まっているだろう」
「そうなんだぁ」
「魔王のほかに悪者がいるのか? だったらお姉ちゃんに任せろ。そんな奴、私がこてんぱんにしてやるからな」
「ほんとに!?」
「ああ、だから言ってごらん」
「うんとね……王さま!」
「――」
言葉が出なかった。妹にそんなことを言われたのに、何も言葉を返すことができなかった自分がとても情けなかった。
この世界は、決して魔王だけのせいで混沌としているわけではない。魔王討伐を掲げる諸国王たちも世界を不安定にしている要因だった。それは我が国の王も例外ではない。国民を無視しているかのような、贅を尽くした己の生活。そんな国王の姿に、少なからず疑問はあった。そして、私が騎士になったことによって私たちの家族だけが裕福な生活をしているこの現実にも強烈な違和感を覚えていた。
私はなぜ騎士になった?
「お姉ちゃんは、王さまをやっつけられる?」
その無垢な瞳は不安の色を帯びていて、どこか本気で懇願をしているようにさえ感じてしまう。
「――ああ、もちろん。悪者はやっつけなければいけないからな」
世界を敵に回そう。
「お姉ちゃんに任せておけ」
それでこの世界が平穏を取り戻せるのなら。
「うん! 約束!」
この子たちがいつか、純粋に笑える日が来るのなら。




