21 死亡遊戯 ~ルール~
「そう肩肘張るなよ。ちょっとした秘密を打ち明けるだけでいい。それだけだ。ただ、オレを失望させるようなしょうもないモノは教えてくれるなよ。オレもせっかくの新しい客を”冷たい客”にして帰したくないからよ。お前さんもそうだろ、ええ?」
お、脅しだ。
夜道を出歩く時は気をつけなよと同じくらいに、冷たい=死体の脅し文句。
そして、幻聴だろうか。
マドマックスに呼応するように、周囲から「ヒャッハー、ヒャッハー」と奇声が。
「なあ、ちゃんとネタになりそうなモノを頼むぜ」
「はは……はあ」
乾いた笑みで苦笑いしながら、そっちの期待を裏切らない弱みにはなるだろうと妙な自信はあった。
初めここにいる連中はテロリスト仲間だろうか!? と半信半疑だった。
しかしさっきのやり取りから、少女レノとマドマックスの関係性は客と店主と推察できる。
ならば、俺にとってはただただ迷惑だった少女レノの秘密も、マドマックスにとってはニヤリとほくそ笑む弱みになる。
「警察にチクられたくなければ、オレの言うことを聞くしかないよな、ええ?」という具合に脅しに使えるわけだ。
ゴロツキどもに利害関係以上のものはない。裏社会とはそういうものだろう……きっと。
ゆえに、マドマックスが望むモノは用意できていることになる。
つまり相手の意にそぐわないことを打ち明けて冷たくなる、そんな未来は回避できるわけだ。
今は近くに……俺をこんな目に遭わせた少女レノの姿はない。
仕組まれたようなこの状況は……神様が悲運な俺にくれたラストチャンスのように思えてならない。
もうここしか起死回生を狙えない感じをビシバシ感じている。
マドマックスに伝えてしまえば、少女レノが敵視する相手がとりあえず増える。
ヤバイ街のゴロツキどもに気兼ねすることもないだろう。
そして、いくらキリングマシーン思考のヒューマロイドでも、ここにいる全員を始末するなんてのは現実的ではないはず。
となれば、『Alice』破壊計画の情報漏えいを恐れる少女レノからすると、もはやテロ実行そのものが困難になるのではなかろうか。
すなわち社会悪のテロは未然に防がれ、俺も解放される結果が濃厚……と。
「あんまり黙りが長いと、オレと秘密を共有するつもりなんてないと判断しちまうぜ、いいのか、ええ?」
息がかかるくらいに近い顔が、そう急かしてくる。
俺は――。
どうしたらいい? いや、悩むまでもないよな!?
「あ、ありす……」
「アリス? AI『Alice』か」
そう、そのアリスです! とばかりに首を幾度となく縦に振る。
「俺は、そのアリスを破壊……、すべてを破壊された男だ。アリストラップにハマった男なんだよ俺は……。これが俺の、誰にも知られたくない人生の汚点、人生最大の秘密だ」
や……ちまった。
少女レノの極秘計画を言うつもりだったここにきて、やっちまった。
しかも、よりにもよってこの話を漏らすとは……。
自分でも何がなんだか。
ほんと、なんなんだよ。
テロ計画なんておいそれと信じるものじゃないよな、とか思い直してしまったんだ。
だからそれを信じてもらうには――と考えたら、少女レノが特別特殊な犯罪ヒューマロイドだと話せば説得力が生まれる……。
そこで、思い返してしまった。
――『約束する。俺は誰にも君がヒューマロイドだなんて口外しない』。
車でのあの時。
誰にも言わない。そう約束すると俺は口にしていた。
だから……口が裂けても言ってはいけない気持ちになったんだ――。




