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13 AI世界<後編>


 で――だ。


 それで、インターフェースモデルとしてのその役割も十分重要なのだろうけど、『Alice』と違って〈アリス〉のほうは分類的にヒューマロイドになる。

 俺は、いや世間も結構その点を注目していたりしています。


 むろん、説明を必要としないくらいに、そんじょそこらのヒューマロイドとは確実に異なる、唯一無二のスペシャルな個体だ。

 なぜなら〈アリス〉は媒介ポイントであると同時に、その人工知能は『Alice』そのもの本体とイコールだからな。


 しかしながら〈アリス〉には、その姿に特色があったりすんだよ。

 ここが唯一許されている独自性ってヤツだ。


 例えば、ロシアの〈アリス〉はフルメタルボディのヒューマロイドだったりする。

 対して日本の有機物素材仕様バイオコートボディの彼女は、ブロンドの髪といい着ている服といい、絵本の不思議の国のアリスっぽい西洋のお嬢ちゃんって感じかな。


 まあ、無難と言えばそうだが……。


 清楚な美少女全開かつ、10歳くらいの容姿とは裏腹なクールービューティーなアリス・JAPANは海外でも人気だからいいだろ。

 あまり尖りすぎるのも考えものだしな。


 初代ヒューマロイドアイドルであり、現在進行形で大人気を誇ると言っても過言ではない〈アリス〉。

 昔は、「まったく日本の幼女アリスは最高だぜ!」のコメントで踊る掲示板をよく見たものだ――――。

 ものだ……。

 だ……。


「はあ……。まったく」


 このまま古き良き時代を惜しむこともできる思考の中に、どっぷりと浸かれるものならそうしたい気分……だぜ。


 覚醒した視界には至って現実の車内。

 時間軸もはっきりさせるなら、少女レノの衝撃的告白の後からしばしの今。

 ぶろろーんと走る音が流れる小狭い空間は、なんとなく「俺待ち」な空気。

 うーむ。

 空気を吸うだけじゃなく読んだりして活用する日本人であることが恨めしい……。

 

「あ……と、アレだね。聞き間違いとか俺の勘違いとかあったら……あの、アレだし。もう一度言ってもらったりしてもらったりとか、どうでしょう……」


 おもむろな動き。

 ハンドルを握る少女がこちら見る。

 その眼差しは二度目も芯の通った光を放つ。

 

「私がヒューマロイドであることを誰にも知られたくないのは、『Alice』の破壊プラン――コード・シーディエスを滞りなく遂行する為。どんなに些細なものでも排除したいの。失敗は絶対に許されないミッションに、障害になるかもしれない不安材料は要らない」


 デジャブではないのだが……。

 一度聞いた覚えのあるそれは、やっぱりデジャブでした。


「『Alice』破壊計画とか……、なんつーとんでもを口にしてくれてんだよ……」


 どっかの大国の大統領を暗殺します以上のヤバい戯言だ。

 しかも厄介なことに、戯れにならない戯言だ。


 「そういや俺さあ、今度プレジデント、キルっすから(爆笑)」と道端で騒いでいるヤツらとかならともかく、このヒューマロイド少女には「冗談だろ、ははは(苦笑)」で済まされない無駄な真実味がある。


 だって、実際に俺を拉致るような行動力をお持ちの方ですから。

 更には、本気で俺の命を奪おうと色々画策している模様の方ですから。


 あと、出遭いからの行動を見るに今まで単独犯だと踏んでいた、のだが……。

 ヘタすりゃ、闇の組織シーディエスなんてものがあって、そこの腕利きエージェント――などの疑いをかけることもやぶさかではない。何かとスペックが高いらしいヒューマロイドだけに。


「……大体――そう大体が無理だ。無謀だ、『Alice』の破壊なんて」


 間違いなく、国家の威信にかけて級の厳戒重要施設だぞ。

 別の言い方だと、なんかあったら国際的にあれこれ言われてしまう級のそれだぞ。

 そもそも核攻撃にも耐えるのに、人為的な破壊なんてまず不可能だろ。

 

「そうやって、計画内容を聞き出すつもり? 悪いけど、あなたに教えるつもりはないから」


「だあっ、そんなつもりは毛頭ない。ガチで遠慮させてくれっ」


 共謀過失罪がチラつく。

 やましい計画に関わったら、しょっぴかれるというアレだ。


 たぶん俺は、巻き込まれた側の被害者だから罪には問われない――がしかし。

 都市伝説じゃ疑われたら最後、容疑が晴れるまで洗いざらい身辺調査されるとかなんとか。そっちが非常にきつい。いや、やましいことはこれっぽっちもない俺だけどさ――。


「レノくん。テロリストみたいなことしても何も良いことないぞ。ここは一つ、潔く諦めて自首しなさい。もしくは俺をすぐさま解放しなさい」


 思いやっての言葉だったのに……。

 少女レノくんは俺をシカトだ。

 ちょうど高速に乗ったのもあってか、運転に集中しているようだった。


「ぬう……」


 安全運転はぜひにお願いしたいところなので、とがめられない。

 仕方がない、と俺は乗り出し気味だったその身を助手席にちゃんと置いた。

 しかし、意識は後ろの後部座席へ。


「……なあ、クロム。お前はどう思うよ?」


「そうですね。レノさんはボクたちみんなを試しているようですね」


 みんなを試している?


「それからボクは……興味がありますね」


 なんだろ。

 クロムのヤツ、俺の求めていたものから地平線くらいまでの遠いものを返してきやがったぞ!?

 しかも2連チャンで。

 そんで、空気を読める日本人の俺がまた恨めしくなった。


 なぜなら、嫌な予感とも言うべき空気の漂いを敏感肌の俺は察してしまったからだ……。



*作中の罪状は架空のものです。(`・ω・´)ゞ

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