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第15話 戻ってきたカプセルと溶け落ちた名前 (No.027)

十一日目の夕暮れ時、認識票が降りてきた1層の広場の路地の濡れた敷石の上に黒赤い夕焼けの光と冷ややかな夕霧が低く降りた。俺は店の表扉の格子を半分開けて換気をした後、樫の作業台の周りを乾いた布巾で拭き取った。


配送口の隣の鉄製の動力保管箱の中には、昨日カン老人の茶碗一対を継いで修繕費の代わりに受け取った軍用の上昇気流弾が重みのある真鍮の光を放っていた。隅の革の座布団の上では、銀色の霊獣ハルが前足に顎を乗せて座り、棚の上の14層の試薬瓶の中の穏やかな霧をぼんやりと見上げていた。


その時、路地の向こうから走ってくる足音が聞こえたかと思うと、店の扉の上の真鍮の鐘がやかましく鳴り響いた。扉を押して入ってきたのは、袖先に群青色の布切れを当てて繕った連絡兵の少年シオンだった。


「店主さん! 中央落下口の第三回収網で今しがた重い落下物が引っかかったと合図の鐘が二度も鳴りましたよ! 上の層から噴き上がる雨脚を突き抜けて、鉄筒みたいなものが真っ直ぐ落ちてきたそうです!」


俺が布巾を下ろすと、開いた扉の外からまた別の軍靴の足音が近づいてきた。白銀の夜明けの精鋭剣士であるペク・ユラが、片腕に濡れた麻袋を抱えて店の敷居をまたいだ。


「ユン店主、ちょうどいらっしゃいましたね。今しがた第三回収網の近くを巡察していたら管理人が引き上げたものを私がそのまま受け取ってきました。胴体に店主のところの修繕印が押されていましたよ」


ペク・ユラが作業台の花崗岩の石板の上で麻袋を解くと、酸性の霧に煤け、石ころに擦れた円筒形の真鍮の筒が一つ鈍い音を立てて転がり出てきた。下部の推進薬室はすでに燃え尽きて空になっていたが、下端の角に最後の輪の端を内側へ小さく巻き込んだ俺の修繕印はそのまま残っていた。五日前の夜、信号弾の光に合わせて上の層へと撃ち上げた逆流気流送出用の真鍮配送カプセル、No.022だった。


「推進薬室が空になっているところを見ると、上の層にいる誰かがこのカプセルの中に品物を入れて落下口の下へと直接落としたのです」


俺はペク・ユラの言葉に頷きながら、黒い木綿布で巻いた左手でカプセルの下の胴体を掴み、素手の右手で上部の蓋のネジ山を回して開けた。カプセルの内部に閉じ込められていた上の層のむせ返るような硫黄の臭いと冷気が糸くずのように漏れ出てきた。


傾けたカプセルの中から、四つ折りにされた防水羊皮紙のメモ一枚と、黒く変色した銀の鎖にぶら下がった平たい白銀の金属板一つが乾いた絨毯パッドの上へとこぼれ落ちた。俺はまず右手のピンセットで羊皮紙のメモをつまんで広げた。水気に滲まない墨ペンでぐっと押しつけて書いた短い一文が、ランプの光の下に鮮明に浮かび上がった。


「13層の敷居で収めたもの。白銀の夜明けにお返しください」


文章の下には送り主の名前も、肩書きも記されていなかった。だが最後の文字の終画が内側へと深く丸く折れ曲がり込んだ筆画の角度を見た瞬間、俺の視線がその場に止まった。


この前ペク・ユラが店へ持ってきた監察報告書の写しの中のルカン・ヘイルの署名と全く同じ筆跡だった。


それだけではなかった。拡大鏡眼鏡越しにその折れ曲がった画線の仕上がりを詳しく見てみると、文章の端を内側へ巻き込んで気配を収める方式が、非常に古い上層の昔の書記法と似ていた。99層の昔の調律院の文書でしか見られないような運筆の痕跡に違いない。14層の若い審問官が誰からあのような手癖を教わったのかは知る由もなかったが、ずっと昔に上層の誰かから伝えられた筆法であることは間違いなかった。


「13層の敷居で収めたものだなんて……まさかその金属板は……」


ペク・ユラの視線が絨毯パッドの上の金属板へと移った。俺はメモを下ろし、二十七番目の修繕依頼品となる白銀の認識票、No.027を石板の中央へと移した。


大人の指二関節ほどの大きさの白銀の認識票だった。しかし表面は毒性の強い酸性水に晒されたせいで、表面が無残に溶け落ちていた。本来陰刻されていたはずの持ち主の名前と軍番は跡形もなく潰れ、沸き立って固まってしまった銀の泡の跡だけが荒い傷跡のように絡みついていた。


俺は右手に柔らかい刷毛と乾いた木綿布を持って認識票を裏返した。裏面は酸性水の腐食が比較的少なかった。表面にこびりついた黒い煤と酸化膜を丁寧に拭き取ると、右下の角に彫りかけのような浅い文字二文字が露わになった。


『ユラ』。


不揃いだが最後まで力を込めて彫り進めた二文字だった。隣で石板の上を見下ろしていたペク・ユラの息遣いがその場で止まった。彼女の両手が作業台の角を白く血の気が引くほど握り締めた。


「……副隊長殿の認識票です」


ペク・ユラの唇から低く割れた声が流れ出た。隣に立っていたシオンが驚いてペク・ユラの顔と認識票を交互に見た。ペク・ユラが震える指先で裏面の角の二文字のすぐ上の虚空を危うげに突いた。


「裏面の角に彫りかけた私の名前二文字がそのまま残っています。間違いなく私たちの副隊長殿の認識票です」


銀の懐中時計と壊れた聖標に続き、ついに副隊長の認識票が13層の敷居から戻ってきたのだった。俺は拡大鏡眼鏡を掛け直して表面の溶け落ちた銀の表面を調べた後、落ち着いた声で口を開いた。


「表面の酸性腐食があまりに深く、元々刻まれていた文字の溝は完全に消えています。溶けて固まった表面を削り取り、新しい白銀を埋めて名前を新しく刻み入れる完全修繕をしなければなりません」


俺はそこで少し言葉を区切り、ペク・ユラの目を真っ直ぐ見つめた。


「ただし、表面をそのように削り取って名前を新しく刻めば、この腐食した隙間にぶら下がっている持ち主の最期の記憶は永遠に消え去ります。反対に記憶を保存するなら、表面には道具を当てられず、永遠に名前のない鉄屑として残ることになります。どちらを選ばれますか?」


店の中が重い沈黙に沈んだ。ペク・ユラはしばらく答えられないまま、裏面の『ユラ』の二文字と潰れた表面を交互に見下ろした。やがて、彼女が赤くなった目元を袖先で一度拭い、揺るぎない眼差しで顔を上げた。


「名前を返してください」


短く断固とした答えだった。ペク・ユラが背筋を真っ直ぐ伸ばして言葉を継いだ。


「私たちの副隊長殿は、戦場で倒れた隊員たちの認識票を最期まで収めて送り返されていた方でした。そのような方の最後の形見を、名前すらない鉄の塊のまま残しておくわけにはいきません。表面に副隊長殿のお名前を完全に新しく刻んでください。その代わり……その記憶が消える前に、副隊長殿の最期の瞬間がどのようなものだったのかだけ、私にそのまま聞かせてください」


「わかりました。その最期の瞬間を先に読み取って差し上げましょう」


俺は頷き、黒い木綿布で巻いた左手を伸ばして、酸性水に溶けて歪んだ認識票の表面の傷跡の上に指先をそっと乗せた。


木綿布の下の火傷の傷跡と首席調律師の烙印が重く疼いた。七日前の夕方に聖標を修繕した時に見た幻影と触れ合う最期の瞬間だった。しかし今回は聖標が落ちた上の角度ではなく、冷たい石の床にぴたりとうつ伏せた者の視線だった。


視界いっぱいにむせ返るような酸性水の煙が立ち昇る13層の封印門の高い敷居が見えた。血まみれになった指先が敷居の石の段を半寸ほど這い越えかけてついに力を失って止まり、割れた胸甲の内側の白銀の認識票の表面が床に溜まった酸性水に触れてジュウッと音を立てながら溶け落ちた。血の泡が滲んだ唇が一度動いたが、とうとう声に出して呼べなかった言葉を喉の奥へと飲み込みながら視界が黒く閉じた。


わずか三秒あまりの短い感覚の破片が煙のように散った。俺は黒い木綿布を巻いた左手を認識票の上から離しながら息を吐いた。


「……どのようなお姿でしたか、店主殿?」


ペク・ユラが息を殺したまま尋ねた。俺は今しがた指先をかすめていったその短い場面をありのまま淡々と伝えた。


「13層の封印門の敷居のすぐ前でした。最期まで敷居を這い越えようとなさっていましたよ。床に溜まった酸性水に認識票の表面が溶け落ちる最中にも、とうとう口の外へ吐き出せなかった言葉を喉の奥へと飲み込みながら目を閉じられました」


俺の言葉が終わると、ペク・ユラは唇を強く噛み締めて両目を閉じた。彼女のまつげの先に宿っていた水滴が一つ、石板の上にポタリと落ちた。隣で聞いていたシオンも鼻先を赤くしたまま袖の群青色の布切れをいじった。


俺は裏面の『ユラ』の二文字に小さな傷一つもつかないよう柔らかい鹿革を二重に折って当てた後、真鍮の固定台に認識票を水平にしっかりと噛ませた。


素手の右手で腐食した表面の銀のバリを削り取り、新しい白銀を溶かして埋めた場所を鏡のように滑らかな平面に整えた。続いて刃を立てた彫刻たがねを右手に握り、認識票の表面の真ん中にたがねの先を垂直に立てた。


息を低く整え、右手の人差し指と親指に一定の圧力を込めて一画ずつ深く押し進めた。白い銀の削りくずがたがねの先に沿って巻き上がり、三文字が鮮やかに場所を占めた。


『カン・テゴム』。


白銀の夜明け先発隊の副隊長の名前三文字が端正で深い角度で刻まれた。俺が最後の文字の端に髪の毛より細い輪を出して内側へ小さく巻き込む修繕印を完成させた瞬間、銀板の上を漂っていた冷ややかな残像が乾いた霧のように音もなく散って消えた。


固定台から外した認識票には、もはや酸性水の寒気も、敷居で飲み込まなければならなかった三秒の記憶も残っていなかった。今回は記憶を残す代わりに完全に消し去り、持ち主の名前を取り戻してやった修繕だった。


俺は乾いた絹布で銀の粉を払い落とした後、ペク・ユラの両手の上に復元された認識票をそっと乗せてやった。新しく生まれ変わった表面には『カン・テゴム』の名前がランプの光を受けてくっきりと輝き、裏面の角には昔のままの『ユラ』の二文字が完全に残っていた。


ペク・ユラは両の手のひらに置かれた認識票をしばらくのあいだ見下ろしていた。指先で新しく刻まれた副隊長の名前をゆっくりとたどり読んでいた彼女が、やがて認識票を両手で胸にぎゅっと抱いたまま、作業台前の冷たい石の床に両膝をついた。


「ペク・ユラさん、お立ちください」


俺が作業台越しに手を伸ばしたが、彼女は深く頭を下げたまま立ち上がらなかった。


「あの審問官が副隊長殿を見つけてくれました。ギルドが借りを負いました」


ペク・ユラの声からは水気が消え、固い決意が込められていた。立ち上がった彼女は、外套の内ポケットから真鍮の縁に白銀の翼の盾の紋章が陽刻された重みのある六角形の牌を一つ取り出し、花崗岩の石板の上に置いた。


「今回の修繕費は、銀貨の代わりに私たちのギルドの約定として受け取ってください。20層で修繕の露店を開けるギルド公認の許可牌です。店主殿がいつか上の層へ歩みを移される日が来れば、この牌と私たちのギルドが必ずや道を開いて差し上げます」


ペク・ユラは復元された認識票を自身のシャツの内側の首飾りの紐に大切に掛けて収めた後、シオンとともに丁重に挨拶を残して夜霧の立ち込める路地の向こうへと帰っていった。


店の扉が閉まり静かな温もりだけが残った作業室で、俺は石板の上に置かれた20層の修繕露店許可牌を右手で持ち上げた。酸性水に溶け落ちた白銀の認識票の上に副隊長カン・テゴムの名前を再び彫り入れるためにじんじんと痛む指先に、冷たく硬い白銀の翼の盾の紋章がランプの下で重みのある光を湛えて触れられた。1層の片隅に隠れていた俺の作業室の前に、再び上の層へと上がる階段が一つ静かに置かれたわけだった。


俺は許可牌を金庫の隣の引き出しに収めた後、修繕台帳第一号を開き、二十七番目の行にNo.027 表面が溶けた白銀の認識票の名前復元内訳と、修繕費の代わりに受け取った20層の露店許可牌を並べて記録し、帳簿を閉じた。


(『塔の中の唯一の中古商店』第15話 終わり)

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・BOOTH(公式書庫): https://spire-archive.booth.pm/items/9073638

・note: https://note.com/seodoyeon_spire/n/n17ce12ece663

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