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第13話 主の影を立たせておくランタン (No.025)

九日目の夜が更けゆき、1層の南の路地の向こうから夜間巡察の鐘の音が遠く響いてきた。俺は店の表扉の内側にある上部換気窓を半分閉めて掛け金を掛け、樫の作業台前の椅子へと戻って腰を下ろした。昨日ペク・ユラが店へ引きずってきた連絡役の銀貨袋から屍毒の灰の結晶を抜き出した際に火傷した右手の人差し指と中指の先のマメは、一晩で皮が少し硬くなっていたが、道具を握るたびにまだピリピリとした残熱が残っていた。俺は引き出しから小さな陶器の軟膏壺を取り出して指先に薄く塗り広げ、乾いた手拭いで余分を拭き取った。


作業台の隅の革の研磨パッドの上では、銀色の毛玉の霊獣であるハルが前足の間に鼻を埋めたまま丸くなっていた。ただ、やつのピンと立った耳の先だけは眠らずに、作業台の上の壁面棚へ向かってずっと細かく動いていた。


俺は真鍮の拡大鏡眼鏡を鼻筋に掛け、棚の上を見上げた。88層と62層、47層の試薬瓶の隣に置かれた14層の試薬瓶が、ひときわ荒く速い周期で赤い光を点滅させていた。三日前の夜、14層の試薬瓶の深紅の霧が鎮まるのを確認した時まではしばらく静かだった瓶だ。ところが九日目の夜の真夜中が近づくと、瓶の中の霧は何か飢えたかのように瓶の壁を突き上げ、一分に六十六回、66のせわしない鼓動で揺れ動いていた。


「上の層のあの心臓は、今夜はかなり荒れているようだな」


俺が黒い木綿布で巻いた左手で作業台の角を軽く叩くと、ハルがフンと鼻を鳴らして尻尾を巻き込んだ。ちょうどその時、路地の入り口の濡れた敷石を踏む軍靴の足音が近づいてきたかと思うと、店の扉の上の真鍮の鐘がチリンと鳴った。


扉を開けて入ってきたのは、二十五、六歳ほどに見える若い夜間警備兵だった。夜間警備兵は濡れた紺色の巡察外套の裾を後ろへ払い、四角い真鍮の野戦ランタンを一つ両手で支え持って、作業台前の花崗岩の石板の上にそっと下ろした。彼の左胸には外郭巡察隊の鉄製名札がついており、雨水に濡れた帽子のつばの下からは徹夜勤務でくぼんだ目元が覗いていた。


「夜遅くに突然押しかけて申し訳ありません。巡察中に灯りがどうにも言うことを聞かなくて。今夜中に詰め所へ復帰しなければならないのですが、少し診ていただけないでしょうか、店主殿」


俺は椅子を石板の前へ引き寄せて座り、拡大鏡眼鏡越しにランタンを調べた。偵察隊員たちが野営地で使っていた旧式の四角い真鍮ランタンだった。油の芯の代わりに魔力を帯びた透明なガラスの芯が真ん中に垂直に立てられており、四面のガラス窓の縁には風除け用の真鍮格子が添えられていた。


ところが、石板の上で燃えているランタンの灯りが店の奥の白壁に落とした影の様子が奇妙だった。夜間警備兵が帽子のつばを直そうと右手を上へ持ち上げると、白壁に映った彼の影は反対に腕を下へとストンと落とした。彼が作業台の前から半歩後ろへ下がると、壁の上の影はむしろ作業台の方へと上半身を大きく傾けた。


研磨パッドの上にいたハルがパッと顔を上げ、反対に動く壁の影を見て前足でパッドを引っ掻いた。俺は拡大鏡レンズの焦点を合わせ、ランタンの内側のガラスの芯を覗き込んだ。指の太さほどの円柱状のガラスの芯の真ん中に斜めに深いひびが入っており、その割れた断面で屈折した光が影の向きを正反対にひっくり返していた。


「主の影を代わりに立たせておく歩哨用のランタンですね。内側のガラスの芯に斜めにひびが入って光が折れ曲がったせいで、影が体と反対に動いています」


夜間警備兵が照れくさそうに後頭部を掻きながら頷いた。


「その通りです。夜間歩哨に立つ時にランタンを灯しておけば、持ち主が少し目を閉じたり席を外したりしても、壁に立った影がそのまま歩哨の姿勢を保ってくれる品物です。上層偵察隊におられて殉職なさった先輩が譲ってくださった形見なのですが、今夜水路の近くを回っている時に石ころにぶつけて芯にひびが入ったのか、それから影がしきりに自分の体とあまのじゃくのように反対に動いて、詰め所の交代点呼も受けられずに走ってきました」


「ガラスの芯を丸ごと取り替えてしまえばただの灯りになってしまいますし、元の機能を活かすならひびが入った場所の目から確認しなければなりませんね」


「はい。先輩が最期まで手から離されなかった灯りですので、どうにかして元の芯を活かして直したいのです」


俺は素手の右手でランタンの側面の真鍮の掛け金を解き、前面のガラス窓の扉を開けた。ガラスの芯の先で揺れていた小さな炎を調節ネジで下げて消した後、黒い木綿布で巻いた左手をランタンの中へ入れ、斜めにひびが入ったガラスの芯の隙間の上に人差し指の先をそっと乗せた。


木綿布の下の火傷の傷跡と首席調律師の烙印が冷ややかに疼き、割れたガラスの芯の先にぶら下がっていた前の持ち主の最期の夜の一場面が視界の中へと押し寄せてきた。


肌を裂く吹雪と黒い霧が吹き荒れる上層の狭い断崖の縁だった。低く積み上げた石垣の風除けの後ろでは、疲れ果てて倒れ込んだ偵察隊の仲間三人が霜に覆われた毛布をかぶったまま深い眠りに落ちており、断崖の下の暗闇の中では野獣たちの青い眼差しが灯りの消える瞬間だけを待ちわびてちらついていた。


断崖の端の岩に一人で座り最後の歩哨に立っていた先輩偵察兵の脇腹の包帯は、すでに黒赤く濡れていた。寒気の果てにまぶたが重く垂れ下がり、もはや意識を繋ぎ止めておけなくなると、偵察兵は毛布の中で眠る仲間たちを一度振り返り、自身の体から長く伸びた影の端をランタンのガラスの芯の上部に結び目を作るように括りつけて、断崖の壁面の上に真っ直ぐ立たせておいた。まもなく偵察兵の頭が胸元へガクリと落ちて深い眠りに沈んだが、ランタンの灯りが照らす断崖の壁面の上には槍を突いて毅然と立つ彼の影だけが一人で残り、仲間たちの枕元を一晩中守り続けていた。


短い場面が散り、店の中の油の匂いが再び鼻先へと戻ってきた。俺は黒い木綿布を巻いた左手をガラスの芯からゆっくりと引き込めながら長い息を吐いた。木綿布の下の烙印が重く脈打ったが、俺は手首を一度回して疼きを鎮めた。


まさにその時だった。九日目の夜の真夜中を告げる柱時計の最初の鐘が鳴る直前、作業台の上の壁面棚でガラス瓶が澄んだ音を立てて鳴った。


俺は顔を上げて棚の上の14層の試薬瓶を見つめた。つい先ほどまで六十六回、66のせわしない周期でガラスを叩いて揺れ動いていた14層の試薬瓶の中の深紅の霧が嘘のように静まり、ゆっくりと深い六十二回、62の鼓動へと穏やかに落ち着いた。


変化は拍動の数だけではなかった。落ち着いた深紅の霧の真ん中に、以前には見えなかった細く透明な銀色の糸くずが霜の結晶のようにびっしりと混ざり込んで渦を描いた。同時に試薬瓶の外側のガラス表面に白い霜が薄く張りつき、棚の下へと冷ややかな冷気がストンと落ちてきた。


研磨パッドの上のハルが鼻先に触れた冷たい空気に小さなくしゃみをした。俺は霜が張った14層の試薬瓶とその中に混ざった銀色の糸を拡大鏡レンズ越しにじっと見つめ、低く呟いた。


「毒の匂いが変わったな。代わりに何かが冷たくなった」


「え? 店主殿、今何かおっしゃいましたか?」


石板の前に立っていた夜間警備兵が目をしばたたかせて尋ねた。俺は視線を棚から収め、再び作業台の上の四角い真鍮ランタンへと下ろした。


「独り言です。それよりこのランタンですが、手をつける前に持ち主であるあなたに一つ決めていただかなければならないことがあります」


俺は右手の人差し指でガラスの芯の斜めの亀裂と、影が括りつけられている芯の一番上の先を指さした。


「このガラスの芯に入ったひびを最後まで隙間なく溶かして継いで完全に直せば、灯りは元通りの完全な明るさを取り戻すでしょう。その代わり、この芯の先に括りつけられて今も最後の歩哨に立っている先輩偵察兵の影は永遠に解けて消えることになります」


夜間警備兵の瞳が大きく揺れた。彼は思わず石板の上のランタンの真鍮の取っ手の方へ半寸ほど手を伸ばしかけて止まった。


「反対に、裏返った影の向きだけを正して先輩の方が括りつけておいた最後の歩哨を残しておくなら、亀裂の上の端は開けたまま下側だけを埋める半分の修繕をしなければなりません。そうすれば先輩の歩哨の影は消えずに残りますが、代償として灯りの明るさが八割に減って今より少し暗くなります。どちらで手を加えましょうか?」


夜間警備兵は少しも迷わず、濡れた帽子のつばの下で深く頭を下げた。


「夜道を巡察するにはそれだけあれば十分です。先輩が残してくださった歩哨が消えないよう、半分の修繕でお願いいたします、店主殿」


「注文がはっきりしていていいですね。では最後の歩哨が立つ場所は残して継ぐことにしましょう」


俺は作業台の右角に取り付けられた真鍮の固定台のネジを木綿布で巻いた左手で回して広げた後、四角いランタンの底枠と内側のガラスの芯の台座を固定台の挟み口の間に合わせて入れ、ネジをしっかりと締めて噛ませた。


ランタンが真鍮の固定台に揺れなく固定されると、俺は左手でランタンの外側の真鍮の柱を軽く押さえて振動を止め、素手の右手で細工用の細い水晶やすりを手に取った。マメができていた右手の人差し指と中指の先がやすりの金属の柄に触れてじんじんと痛んだが、指先の角度は揺らがなかった。俺は水晶やすりの先をガラスの芯の斜めの亀裂の下部に当て、光の屈折を反対にひっくり返していたずれたガラスの断面を一定の呼吸で三度削り出し、正方向へと道を合わせた。


水晶やすりを道具皿に下ろした後、俺は隣で予熱しておいた細い真鍮の細工ごてを右手で持ち上げた。こての先に透明な銀水晶の松脂を一滴つけ、ガラスの芯の亀裂の一番下からゆっくりとたどり上げた。


チイイ——


銀水晶の松脂が澄んだガラスの目の中へと染み込み、割れた隙間を透明に埋めていった。俺は亀裂の下側を滑らかに埋めて封じた後、先輩偵察兵の最後の歩哨の影がぶら下がっている一番上の小さな隙間の前でこてを止め、台座へと下ろした。


続いて右手で細工用のピンセットと薄く焼きなました銀線一本をつまみ上げた。半分だけ封じたガラスの芯が衝撃で再び開かないよう、縫合線の周りに銀線を三回巻いて固定し、最後の輪の端を内側へ小さく巻き込んで俺の修繕印である丸い結び目を作った。記憶と影が息をする上の隙間はそのまま残しておいた半分の結び目だった。


俺は細工ピンセットを下ろし、左手で作業台の真鍮の固定台のネジを緩めてランタンを花崗岩の石板の真ん中へと取り出した。右手で芯の点火ぜんまいを回して火をつけ、ランタンの前面のガラス窓の扉を閉めて掛け金を掛けた。


ガラスの芯の先に再び炎が立ち昇った。上の隙間を残しておいた半分の修繕の代償として、灯りは修繕前より少し暗くなった八割のほのかな琥珀色で燃え上がった。


「できました。手を一度動かしてみてください」


夜間警備兵が石板の前で右手を上げて帽子のつばに当てた。店の白壁に映った彼の影も、もはや反対に食い違うことなく彼の体に従って正確に右手を上げて帽子のつばに当てた。夜間警備兵のこわばっていた顔にようやく安堵の息が広がった。


「ちゃんとついてきますね! 修繕費はいくらでしょうか、店主殿?」


「銀水晶の松脂代に夜間の工賃まで合わせて、銀貨三枚だけください」


夜間警備兵はポケットから銀貨三枚を取り出して作業台の角に並べて置くと、少し暗くなった真鍮ランタンの取っ手を右手で大切に持ち上げた。


「ありがとうございます、店主殿。おかげさまで今夜の巡察を無事に終えられそうです」


夜間警備兵が暗くなったランタンを持って店の扉の方へ歩いていき、かんぬきを外して扉を半分開けた。冷たい夜気が扉の隙間から染み込む瞬間、敷居をまたごうとしていた彼がふと足を止め、店の奥の白壁へ向かって首を回して振り返った。


彼の手に握られたランタンの灯りが戸口の脇の白い壁を照らしていた。そしてその白壁の上には、扉を掴んで立つ夜間警備兵自身の影のすぐ隣に、槍の柄の代わりに真っ直ぐな姿勢で右手を額の端に当てた影がもう一つ、敬礼するように毅然と立っていた。


夜間警備兵は壁の上に並んで立ったその二つ目の影をしばらくのあいだじっと見つめていたが、帽子のつばの下でかすかに微笑みながら低く言った。


「足りない二割は先輩の分ですね」


彼が壁の上の影へ向かって短く目礼を残して店の扉を出ると、チリンと鳴る鐘の音とともに二つの影が並んで濡れた夜の路地の向こうへと遠ざかっていった。


店の中に再び静寂が降りた。俺は作業台の上の銀貨三枚を収めて金庫の引き出しに入れ、マメが癒えつつある右手で万年筆を取って修繕台帳第一号を開いた。亡き先任の分として二割の光を減らした半分の修繕だったが、今しがた扉を出た二つの影の歩幅はこの上なく揃っていた。俺は二十五番目の行にNo.025 主の影を代わりに立たせておくランタンの半分の修繕内訳と銀貨三枚の収入を記し、下の行の備考欄には今夜の真夜中頃、14層の試薬瓶の鼓動が66から62へと落ち着き、霧の中に冷たい銀色の糸が混ざり込んだという一行を並べて残しておいた。


(『塔の中の唯一の中古商店』第13話 終わり)

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※第一部・第二部(第1話〜第44話)完全収録オムニバス&機密設定資料集:

・BOOTH(公式書庫): https://spire-archive.booth.pm/items/9073638

・note: https://note.com/seodoyeon_spire/n/n17ce12ece663

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