聖女降臨の儀2
神官たちの持つ錫杖の鈴が軽やかな音をたてる。
シャンシャンという音が反響していた。
ドアが開かれる。
神殿騎士たちは守るように四方を歩いている。
その中心に珊瑚姉さまはいた。
私は王族のためローブ・モンタントと呼ばれる縦襟の装飾はシンプルな礼服を着ている。
決して王族として見劣りするようなものを準備されていた訳ではない。
けれど珊瑚姉さまの着ていた装束は今まで見たことの無い位美しいものだった。
薄い布を何枚も重ねたそのドレスは聖女降臨の儀のための製法とされている布を使ったものだ。
薄い布は晴天の光を浴びて不思議に虹色に輝いている。
そして、そこに施された聖女を表す金色の刺繍がきらめいていてとても美しい。
今までに見たどんなドレスよりも、美しくて心に残る。
珊瑚姉さまの薄赤い桃色がかた髪の毛には真珠だろうかが編み込まれていて、聖女の紋章をモチーフにした髪飾りが美しい。
この日のために職人たちが数年がかりで取り組んだと聞いている。
誰もが珊瑚姉さまに見惚れて、感嘆のため息をつく物さえいる。
珊瑚姉さまはそのまま静かに祭壇の前まで進んでいく。
私の前を見た瞬間、珊瑚姉さまは緩く微笑んだ気がした。
けれどすぐに真剣な表情になり進んでいってしまった。
祭壇で、珊瑚姉さまが神に祈りをささげた。
そして祝詞が唱えられる。
神が降臨されるという。
昔の記録では光が降り注いだとも言われている。
私にはよくわからない。
元々祭壇は日の光が入っていて光り輝いていたから。
刹那。
私の右手が鈍く痛む。
でも、それを気にするよりも珊瑚姉さまの聖女降臨の儀を目に焼き付けておきたかった。
じっと珊瑚姉さまを見る。
珊瑚姉さまと目が合った。
右手の痛みが酷くなった。
姉さまは私を見て、少し驚いた顔をして、それから寂し気に笑った。
右手の痛みがいよいよ耐えられず私は自分の右手を見た。
手の甲が淡く光っていた。
二の腕までのロンググローブをつけていなければもっとはっきりと形が分かっていたかもしれない淡い、淡い光。
私はあわてて、左手で右手の甲を覆うように隠す。
誰も気が付いていないようだった。
皆珊瑚姉さまにくぎ付けだった。
珊瑚姉さまが口を開こうとした。
聖女の儀でスピーチをする予定はない。
聖女の証の確認も行わない。
ドレスを脱がねば見えぬところに証がある聖女も過去何人もいた。
そのため証を見せることはしない。
私は今も何かの間違いなのだと思った。
珊瑚姉さまの体のどこかも淡く光っているのだと思った。
双子なのだから。
右手がじくじくと痛む。
珊瑚姉さまは何かをつぶやいた。
大神官がさっと顔色を変えた。そして何事か周りの神官に命令していた。
そして皆の方を向いて口を開こうとした珊瑚姉さまを押さえつけるように神官たち囲みそのまま引きずられるように連れていかれてしまった。
場が騒然とした。
「聖女降臨はなりました!!
聖女様は降臨の儀の負荷が強すぎて、お倒れになられた。
けれど安心ください。
すぐに聖女の奇跡がこの国を包むでしょう」
大神官はそう高らかに宣言した。
皆顔を見合わせていた。
半信半疑。
そういうものもいたと思う。
けれどこの国は聖女信仰を前提とした神殿への信仰がとても厚い。
そのため、何か事情があったのだろう。
そういう雰囲気になった。
私は痛む右手を隠しながら、まずはこの右手を、そして珊瑚姉さまと会わねば。
そう思っていた。
神様が本当にあらわれたかは私には分からなかった。
だからきっと、珊瑚姉さまには分かるのだと思った。




