聖女降臨の儀1
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その日は珊瑚姉さまが聖女になることを祝う様な美しい青空が広がっていた。
宮殿の聖堂ではなく、王都にある大きな大神殿で儀式は行われる。
儀式を執り行うのが神官たちという伝統があるからだ。
私は大神殿よりもいつも祈りをささげていた聖堂の方が好きだけれど、この儀式には国内の主だった貴族をはじめ同盟国や友好国からも人を招いている。
見上げなければ天井の装飾さえ見えないこの巨大な建物の方が適しているのかもしれない。
大神殿はいたるところに神託をうけ、悪しきものと戦う勇者様と聖女様のレリーフが彫り込まれている。
聖女様に神託をもたらし、その後も聖女に力を与えている神様をたたえるために建てられたこの大神殿は沢山の神官たちによって守られている。
「姉姫様の聖女就任。まことにおめでとうございます」
国王と王妃である父と母は儀式を見下ろせる二階の貴賓席にいる。
珊瑚姉さまは降臨の儀のための準備をされている。
スペアの私はもう昨日で役割を終えた。
役割を終えた私はただのこの国の第七王女でしかない。
儀式も少し離れた場所に用意された席から見守る手筈となっている。
貴族たちから口々に姉の就任を祝う言葉をもらいそれにこたえる。
その場は妙な高揚感とソワソワしている。そういう気持ちがあふれ出ていた。
聖女候補が聖女になる時、神様がこの地にひと時降り立ち、聖女に聖女の証を授けるそうだ。
それは肌に刻印としてあらわれる。
正に聖女の印だ。
その印はその聖女により違う場所に現れると言われている。
初代聖女様が体のどの部位に証があらわれたかは判然としていないけれど、宗教画などでは額に証を描かれていることが多い。
一説によると、命に係わる部位に現れる方が力が強いと言われているという過去の国王の健忘録を読んだことがあるけれど、真偽は分からない。
悪しきものが復活したことが無いのに力が強いとか弱いとかが分かるものなのだろうかと珊瑚姉さまと笑いあったことがある。
鐘が朝から断続的に鳴り響いている。
今日の良き日を祝うためだ。
入場する貴族たちは皆、祝いのため着飾っている。
神官たちも聖女を表す白に金糸で刺繍を施された法衣を着て大神殿に並んでいる。
いつも聖堂を付き添っていた神殿騎士の姿は見えなかった。
当たり前だ。
彼がいま守るべきは珊瑚姉さまなのだから。
従者に案内をされ、私は用意された席に一旦座る。
高位の神官が、神に言葉をささげ始めた。
儀式が始まる。
皆、かたずを飲んでそれを見守っていた。
珊瑚姉さまには昨日から会えていない。
スケジュールがぎっしりと詰め込まれていたからだ。
これが珊瑚姉さまの毎日なるのか、そう思った。
物心がついたころから覚悟していたことだ。
私の姉姫様は尊いお方になってしまうのだ。




