表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
HINA-死神の系譜-  作者: 竜堂さくら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
97/102

第97話 捻転


 翌日の華薗学園。


 昼休み。


 いつもの五人に、季和実淳子も一緒に昼食に加わっていた。


「昨日は本当に驚いたわよ! 哀沢さんがあそこまで博識だったなんて」


 淳子が感心したように言う。


「武術関係で哀沢から、知らないって言葉聞いたことないからな」


 楸が肩をすくめる。


「知識の偏りがすごいんです」


 美玲が苦笑した。


「さすがお姉様ですわ」


 姫奈が嬉しそうに頷く。


「部長が本棚からランダムに取り出した本を、全て解説してくれましたからね」


 仁も昨日を思い出しながら言う。


「普通」


 雛は何でもないことのように答えた。


「たしかに噂通りだわ……」


 淳子は苦笑する。


 ふと、楸が雛の弁当を覗き込んだ。


「ところで哀沢、おせち料理じゃないんだから、弁当のおかずに栗の甘露煮ってのはどうなんだ?」


「美味しい」


「いや、白米のおかずになるのか?」


「やってみる?」


 雛は楸の弁当箱に栗の甘露煮を入れ、代わりに卵焼きを取る。


「卵焼きもらうね」


「卵焼き好きだな! さて……」


 楸は栗の甘露煮を口に入れ、続けて白米を頬張った。


「ん……これは、意外と合うな!」


「ほらね」


「お姉様! 私の卵焼きとも交換してくださいませ」


「いいよ」


 雛は姫奈の卵焼きと栗の甘露煮を交換する。


「あら、楸先輩の仰る通りですわ!」


「よかったな姫奈」


 仁が微笑む。


「今日は座学だけじゃなく、実技もちょっとやりたいと思ってるから、放課後部室に集合ね!」


 淳子が手を叩く。


「実技もですか?」


 美玲が尋ねる。


「本だけじゃ解らない部分を、哀沢さんに解説してもらおうと思ってね」


「なるほど」


 楸が納得する。


 姫奈と仁も頷いた。


「じゃあ、また放課後ね!」


 淳子は笑顔で屋上を後にした。



 放課後。


 大陸武術研究部部室。


 机と椅子は端へ寄せられ、中央やや後方にはサンドバッグが吊るされている。


 淳子がサンドバッグの前へ立ち、他の五人は左右に分かれて見守っていた。


「今回は、大陸武術で有名な技の一つ、発勁を検証したいと思うの」


「たしかに有名だが、原理に諸説ある技でもあるな」


 楸が腕を組む。


「うちの流派には無い技ですね」


 仁も興味深そうにサンドバッグを見る。


「マンガとかでよく見る技ですよね?」


 美玲が首を傾げる。


「原理も解らず練習した事がありますわ……」


 姫奈が少し恥ずかしそうに笑った。


「で、これが発勁について書かれた文献。一応、原理も書かれてるから、私なりの解釈で実践してみるわね」


「うん」


 雛が頷く。


 淳子はサンドバッグの前で構えた。


 足首。


 膝。


 腰。


 上半身。


 身体の右側全体をゆっくりと捻っていく。


「はっ!」


 気合いと共に、一気に身体を戻しながら右拳を打ち込む。


 鈍い音が響き、サンドバッグが前後に揺れた。


「ふー……」


「これが発勁の原理なのか?」


 楸が尋ねる。


「身体を極限まで捻って力を溜めて、一気に放出するって書いてあるっぽいんだけど、理解が足りないのかなー?」


 淳子は雛を見る。


「哀沢さん、解説お願いできる?」


「わかった」


 雛は周囲を見回した。


「発勁には二種類ある。部長の解釈と、気を打ち込むやつ」


「気って、マンガとかの撃ち出すやつか? あれは無理だろ」


「うん、それは無理」


「だよね」


 美玲が苦笑する。


 雛は胸の前で両手を合わせた。


「この状態から両手に隙間を空けてみて」


 五人も真似をする。


「手の間にもやっとした物を感じる?」


「ああ、言われてみれば」


 楸が頷く。


「たしかに感じますわ」


 姫奈も驚いたように言う。


 美玲、仁、淳子も小さく頷いた。


「それが『気』。これを体内で練って、打撃に乗せる。仁、ちょっといい?」


「はい、師匠」


 雛は仁の胸へ、心臓を避けるように掌を当てた。


「軽くだから耐えてね」


 次の瞬間。


 仁の身体が大きく揺れ、崩れ落ちそうになる。


 しかし、何とか踏みとどまった。


「衝撃が身体を突き抜けたみたいでした……」


「気を練る事が出来るようになれば、訓練次第で撃てる」


「訓練期間は?」


 楸が尋ねる。


「早くて……十年くらい?」


「マジか……もうひとつの方は?」


 淳子が苦笑する。


「身体を捻る方のやつ」


 雛はサンドバッグの前へ立つ。


 正対したまま。


 身体は全く捻っているように見えない。


 しかし。


 次の瞬間。


 僅か数センチの距離から放たれた拳が、サンドバッグを縦に激しく揺らした。


「捻ってなかったよね!?」


 淳子が驚きの声を上げる。


「ええ、全く」


 美玲も頷く。


「お姉様、どういう事ですの?」


 姫奈が首を傾げる。


「捻るのは身体の中」


「体内で捻転させろって事か!」


 楸が目を見開く。


「原理が解っても、どちらも無理そうなんですけど……」


 仁が苦笑する。


「そうなの?」


 雛が不思議そうな顔をすると、一斉に頭を抱える一同であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ