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第9話 体験入部巡り


 翌日の放課後。


 雛は約束通り、他の部活の体験入部へ参加することになった。


 最初に向かったのは空手部だった。


 道場へ入ると、昨日勧誘してきた部長が笑顔で迎える。


「よく来てくれたね」


「よろしくお願いします」


 雛は礼儀正しく頭を下げた。


 部長は満足そうに頷く。


「うちはフルコンタクトだから、顔面突き以外はOKだよ」


「わかりました」


 雛は素直に頷いた。


 その返事を聞いた部長は何故か少しだけ不安になった。


 理由は自分でも分からない。



 数分後。


 防具を着けた二年生部員と向かい合う。


「よろしく」


「よろしくお願いします」


 開始の合図。


 相手が前へ出る。


 雛も動いた。


 右足が浮く。


 ミドルキック。


 誰もがそう思った。


 だが途中で軌道が変わる。


 足がさらに跳ね上がった。


 ハイキック。


 乾いた音が響く。


 二年生部員の身体が崩れ落ちた。


 一撃だった。


 空手部の道場が静まり返る。



「次はボクシング部です」


 雛は礼をして去っていった。


 空手部員達は誰も引き留められなかった。



 ボクシング部。


 こちらでも歓迎を受ける。


 昨日の話は既に伝わっていたらしい。


 部長は少し警戒した顔をしていた。


「一応ヘッドギア着けてね」


「当たらないと思うので大丈夫です」


 部長は聞かなかったことにした。



 リングへ上がる。


 相手は一年生の有望株だった。


 ゴングが鳴る。


 その瞬間。


 雛が踏み込む。


 次の瞬間には拳が当たっていた。


 相手の頭が跳ね上がる。


 身体がぐらりと揺れ、そのまま前のめりに倒れた。


 一撃だった。


 静まり返るボクシングジム。


 部員達は誰も声を出せなかった。



「ありがとうございました」


 雛は礼をしてリングを降りた。



 最後は柔道部だった。


 柔道場へ入ると、部長が少し困った顔をする。


「女子だと重量級の部員しかいないんだけど」


「大丈夫です」


 雛は即答した。



 試合開始。


 相手は雛より一回り大きい女子部員だった。


 体格差はかなりある。


 だが雛は迷わない。


 相手が前へ出た瞬間だった。


 足が動く。


 払う。


 それだけ。


 女子部員の身体が綺麗に浮いた。


 一回転。


 そして背中から畳へ落ちる。


 周囲が息を呑んだ。


 だが雛は構えを解かない。


「まだ一本じゃないですよね?」


 女子部員は即座に右手を上げた。


「まいった!」


 その声に雛は首を傾げる。


 柔道は難しい。


 そう思った。



 帰り道。


 雛は少し悩んでいた。


 どの部活も面白かった。


 だが決めきれない。


「どうしよう」


 小さく呟く。


 隣を歩く美玲は空を見上げ、大きくため息を吐いた。


「入れる部活ないじゃん……」


 雛は首を傾げた。


 意味が分からなかった。

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