第9話 体験入部巡り
翌日の放課後。
雛は約束通り、他の部活の体験入部へ参加することになった。
最初に向かったのは空手部だった。
道場へ入ると、昨日勧誘してきた部長が笑顔で迎える。
「よく来てくれたね」
「よろしくお願いします」
雛は礼儀正しく頭を下げた。
部長は満足そうに頷く。
「うちはフルコンタクトだから、顔面突き以外はOKだよ」
「わかりました」
雛は素直に頷いた。
その返事を聞いた部長は何故か少しだけ不安になった。
理由は自分でも分からない。
◇
数分後。
防具を着けた二年生部員と向かい合う。
「よろしく」
「よろしくお願いします」
開始の合図。
相手が前へ出る。
雛も動いた。
右足が浮く。
ミドルキック。
誰もがそう思った。
だが途中で軌道が変わる。
足がさらに跳ね上がった。
ハイキック。
乾いた音が響く。
二年生部員の身体が崩れ落ちた。
一撃だった。
空手部の道場が静まり返る。
◇
「次はボクシング部です」
雛は礼をして去っていった。
空手部員達は誰も引き留められなかった。
◇
ボクシング部。
こちらでも歓迎を受ける。
昨日の話は既に伝わっていたらしい。
部長は少し警戒した顔をしていた。
「一応ヘッドギア着けてね」
「当たらないと思うので大丈夫です」
部長は聞かなかったことにした。
◇
リングへ上がる。
相手は一年生の有望株だった。
ゴングが鳴る。
その瞬間。
雛が踏み込む。
次の瞬間には拳が当たっていた。
相手の頭が跳ね上がる。
身体がぐらりと揺れ、そのまま前のめりに倒れた。
一撃だった。
静まり返るボクシングジム。
部員達は誰も声を出せなかった。
◇
「ありがとうございました」
雛は礼をしてリングを降りた。
◇
最後は柔道部だった。
柔道場へ入ると、部長が少し困った顔をする。
「女子だと重量級の部員しかいないんだけど」
「大丈夫です」
雛は即答した。
◇
試合開始。
相手は雛より一回り大きい女子部員だった。
体格差はかなりある。
だが雛は迷わない。
相手が前へ出た瞬間だった。
足が動く。
払う。
それだけ。
女子部員の身体が綺麗に浮いた。
一回転。
そして背中から畳へ落ちる。
周囲が息を呑んだ。
だが雛は構えを解かない。
「まだ一本じゃないですよね?」
女子部員は即座に右手を上げた。
「まいった!」
その声に雛は首を傾げる。
柔道は難しい。
そう思った。
◇
帰り道。
雛は少し悩んでいた。
どの部活も面白かった。
だが決めきれない。
「どうしよう」
小さく呟く。
隣を歩く美玲は空を見上げ、大きくため息を吐いた。
「入れる部活ないじゃん……」
雛は首を傾げた。
意味が分からなかった。




