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HINA-死神の系譜-  作者: 竜堂さくら


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第83話 新一年生


 華薗学園入学式。


 壇上では、新入生代表が堂々と挨拶をしていた。


「以上。新入生代表、城ヶ崎姫奈」


 体育館に大きな拍手が響く。


 新入生達も、保護者達も、立派な代表挨拶に満足そうな表情を浮かべていた。


 その様子を見届けた校長は、ようやく肩の力を抜く。


「今年は無事に、新入生代表の挨拶が済ませられましたね」


 隣に立つ黒崎が苦笑した。


「去年の代表の哀沢は、遅刻でしたからね……」


 校長も思わず笑う。


「哀沢君も二年生になって、少しは落ち着きますかね?」


「誰かが絡んでこなければ、哀沢はおとなしいですよ?」


「はは……そうでしたね」


 入学式は厳かに終了し、新入生達は、それぞれの教室へ移動していく。


 華薗学園では、概ね入試成績順にクラス分けが行われる。


 一位から五位がA組からE組。


 六位から十位も再びA組からE組へ。


 そのため、入試成績一位の新入生代表、城ヶ崎姫奈は当然A組だった。


 教室へ入った姫奈は、大きく胸を張る。


「さあ、今日から私の伝説が始まりますのよ!」


 教室中の視線が一斉に集まった。


 その真後ろの席では、一人の男子生徒が頭を掻いていた。


「姫奈、ほどほどにしとくんだぞ……」


 姫奈が勢いよく振り返る。


「何よ仁! あなたも同じクラスですの?」


 影山仁。


 姫奈の幼なじみである。


「高校生になったら、少しは自重してくれよ?」


「進学校でありながら、総合格闘技世界チャンピオン楸優作が通う華薗学園」


 姫奈は拳を握り締める。


「私の実力を知らしめて、憧れの楸先輩とお近づきになるチャンスですのよ!」


「それは分かってるが……」


「一年の時から目立たなくてはいけませんわ!」


 自信満々に胸を張る姫奈。


 仁は小さくため息を吐いた。


「後始末する身にもなってくれ」


「何か言いましたの?」


「いいや、何も」


 姫奈は満足そうに頷く。


「明日は部活紹介のあとに総合格闘技部へ行きますわよ!」


 その姿を教室後方から眺めていた数人の生徒が、小声で話し始める。


「張り切ってるなー」


「トラブルの元にならなきゃいいけど」


「今のうちに釘刺しとくか?」


「あの調子で一年間仕切られても困るしな」


 その時だった。


 ゆっくりと影山仁が振り返る。


 何も言わない。


 ただ静かに視線を向けただけだった。


 それだけで、生徒達の背筋に寒気が走る。


「い、いや、元気があるのはいいことだよな!」


「そうそう! 入試成績もトップだし、俺達を引っ張ってってもらわないと!」


「は、はは……そうだよな!」


 仁は何も言わず、再び前を向く。


 姫奈はそんなやり取りなど気付くこともなく、明日から始まる高校生活へ胸を躍らせていた。



 新学期最初のホームルーム。


 二年A組には昨年と変わらない顔ぶれが並んでいた。


 もちろん、雛と美玲も同じクラスである。


 教壇へ立った黒崎が教室を見回した。


「今年もお前達の担任は俺だ。何か文句ある奴いるかー?」


「ありませーん!」


 教室が笑いに包まれる。


 黒崎も笑いながら続けた。


「今年の入学式は無事に終わってくれてよかった。去年は新入生代表が遅刻してたからな!」


 雛が小さく頷く。


「そうなんだ」


 美玲が慌てて雛を見る。


「ちょっと雛!?」


 黒崎が指を差した。


「お前だよ、哀沢雛!」


 教室中が笑いに包まれる。


 雛は少し申し訳なさそうに頭を下げた。


「それは……ごめんなさい」


「まあ、過ぎた話だ」


 黒崎は咳払いを一つした。


「それより哀沢」


「はい」


「今年の新入生代表は、総合格闘技の中学女子チャンピオンだそうだ」


「へえ」


「大丈夫だとは思うが、揉めるなよ?」


 すかさず美玲が手を挙げる。


「先生、それは相手の子に言うべきだと思います!」


「そうなんだよなぁ……」


 額を押さえる黒崎。


「まあ、三年には楸もいるから、楸にも言っとくか」


 黒崎の話が終わると、美玲は小声で雛へ話しかけた。


「雛、下級生には優しくだよ?」


 雛は自信満々に胸を張る。


「もちろん」


 その返事を聞いた美玲は、不安そうに苦笑した。


 明日から始まる嵐のような日々を、誰も予感することはなかった。


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