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HINA-死神の系譜-  作者: 竜堂さくら


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81/102

第81話 元旦


 除夜の鐘を撞き終え、初詣も済ませた雛達は深夜に帰宅した。


 翌日。


 目を覚ました頃には、もう昼前になっていた。


 寝癖を少し残したままリビングへやって来る雛。


「おはよう」


 キッチンから振り返った紫亜が微笑む。


「おはようございます」


 雛はテーブルを見て言った。


「お腹空いた」


「おせち料理を用意してますよ」


 重箱に入った色鮮やかなおせち料理が並んでいる。


 雛は目を輝かせた。


「美味しそう」


「たくさん食べてくださいね」


「いただきます」


 箸を持とうとしたその時。


 スマホが鳴った。


 画面を見る。


 祥子からだった。


「祥子ちゃん、どうしたの?」


『どうしたも何も、あんたのとこの紫亜さん、すごすぎない!?』


「うん、紫亜さんはすごい」


『除夜の鐘のあと、うちに連絡が来て、補修業者を派遣しますって言うから』


「うん」


『何の事かと思ったら、鐘の内側にひびが入ってるから、補修するよう言われたって、元旦から業者が来たのよ!』


「そうなんだ」


『そうなんだって、普通、元旦から動く業者なんていないわよ?』


「紫亜さんはすごいから」


 祥子はしばらく黙り込んだ。


 そして、小さくため息を吐く。


『とにかく、紫亜さんに業者来ましたからって伝えといて』


「わかった」


 電話を切る。


 紫亜は雛の方を見た。


「祥子さんですね」


「紫亜さんに、業者来ましたからって伝えといてって」


 紫亜は静かに頷いた。


「よかったです」


 よく分からないが、紫亜がすごいと言われて嬉しい、雛であった。



 楸優作の所属するジム。


 元旦だというのに、楸は一人サンドバッグの前に立っていた。


 ゆっくり掌を当てる。


「ふっ!」


 鈍い音と共にサンドバッグが軽く揺れた。


 それだけだった。


 楸は大きくため息を吐く。


「弾けるわけねぇだろ、こんなもん!」


 腕を組み、サンドバッグを見つめる。


「つるめばつるむほど、底が見えねぇでやんの……」



 高山家。


 ベッドへ寝転びながらスマホを眺める高山。


 画面には、初詣の時に四人で撮った写真が映っていた。


 その中の美玲を見つめ、思わず頬が緩む。


「今年は少しでも進展するといいなー……」


 その瞬間。


 脳裏へ雛の姿が浮かんだ。


 高山は勢いよく頭を振る。


「哀沢さん、怖ぇよー」


 想像しただけで身体が震える高山だった。



 神崎家。


 三人で食卓を囲み、おせち料理を食べていた。


 父が湯飲みを持ち上げる。


「明けましておめでとう」


 母も笑顔で続けた。


「今年もよろしくお願いします」


 美玲も頭を下げる。


「明けましておめでとうございます」


 父は懐からお年玉袋を取り出した。


「はい、美玲」


「お父さんありがとう!」


 母が微笑みながら聞く。


「今日は雛ちゃんと出かけないの?」


「元旦だし、今日くらいはね」


 父が笑う。


「お父さんにも紹介してくれよ?」


「そのうちね!」


 美玲は窓の外へ目を向けた。


 雛の家がある方角を見る。


「雛もお年玉もらったかなー?」



 哀沢家。


 食事を終えた雛の前へ、紫亜がお年玉袋を差し出した。


「雛様どうぞ」


 受け取った雛は首を傾げる。


「これは?」


「お年玉です」


「落とし玉……罰ゲーム?」


 思わず紫亜は笑みを漏らした。


「お正月のお小遣いだと思ってください」


 雛は嬉しそうに袋を見つめる。


「ありがとう」


「明日の美玲さんとのお買い物に使ってください」


 雛は小さく頷いた。


「美玲もお年玉もらったかなー」



 それぞれの元旦は、穏やかに過ぎていったのだった。


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