表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
HINA-死神の系譜-  作者: 竜堂さくら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
79/102

第79話 大晦日


 冬休みに入り、今年もあと三日。


 庭では雛が蛇腹剣を楽しそうに振るっていた。


 ベルトから剣へ。


 剣からベルトへ。


 その仕掛けがよほど気に入ったようで、何度も繰り返している。


 そんな時。


 スマホが鳴った。


 画面を見る。


 祥子からだった。


「もしもし」


『雛、大晦日は何か予定ある?』


「特にないかな」


『うちの寺で年越ししない?』


 雛は少し考える。


「年越しって何するの?」


『除夜の鐘打てるわよ!』


「除夜の鐘……?」


『人間の煩悩の数、百八回鐘を打って、浄めるのよ』


 雛は黙り込んだ。


「…………洗脳?」


『ばっ……滅多な事言うもんじゃないわよ!?』


 祥子は思わず周囲を見回す。


 誰にも聞かれていない事を確認し、小さく胸を撫で下ろした。


「美玲も誘っていい?」


『もちろん! チャンピオンも連れてきていいわよ』


「わかった」



 電話を切ると、雛はすぐに美玲へ電話を掛けた。


『雛、どうしたの?』


「祥子ちゃんが一緒に年越ししないかって」


『祥子ちゃんのお寺で?』


「うん。除夜の鐘打てるって」


「楸先輩達も連れてきていいって言ってる」


『紫亜さんの車でなら、お母さんも安心だろうから、行けると思う』


「じゃあ、紫亜さんに話すから、楸先輩に連絡お願い」


『うん! じゃあ、またあとでね!』



 リビング。


「紫亜さん」


 紅茶を淹れていた紫亜が振り返る。


「はい」


「祥子ちゃんが一緒に年越ししようって」


 紫亜は穏やかに微笑んだ。


「今年最後のイベントですね」


「除夜の鐘打てるから、美玲と楸先輩も誘っておいでって」


「では、当日は車を出しますね」


「ありがとう」


 少し考え込む雛。


「除夜の鐘打つのって、何かコツあるのかな」


「コツは分かりませんが、鐘を壊さなければ大丈夫かと」


「そっか」


 雛はスマホを取り出し、除夜の鐘の動画を見始めた。


 しばらく画面を見つめる。


 やがて、何かに気付いたような表情になった。


「何かコツが掴めましたか?」


「面で打てば響きやすい」


 紫亜は納得したように頷く。


「拳法と通じる物がありそうですね」


 雛は立ち上がった。


「サンドバッグあったっけ」


「ございますよ」



 庭に吊るされたサンドバッグ。


 雛はじっと見つめる。


「面で打って響かせる……」


 一歩踏み込む。


 掌を打ち込んだ。


 サンドバッグが一瞬だけ震える。


 次の瞬間。


 皮製のサンドバッグは弾け飛び、粉々になった。


「……うん」


 一部始終を見ていた紫亜が口を開く。


「雛様、お見事ですが」


「うん」


「人はもちろん、除夜の鐘にも使っていい技ではありませんよ?」


「えー……」


 露骨に残念そうな顔をする雛。


 紫亜は苦笑した。


「引導流の大会だけでなく、寺院すら出禁になります。」


 雛はしょんぼりと肩を落とした。


「くれぐれも壊さないようにお願いしますね」


「わかった」



 大晦日の夕方。


 紫亜の運転するミニバンは、祥子の寺院へ向かっていた。


 助手席には雛。


 後部座席には美玲、楸、高山が乗っている。


 楸は窓の外を眺めながら笑う。


「除夜の鐘打てるのは嬉しいよな」


 高山も楽しそうに頷いた。


「自分も楽しみです」


 美玲は前の席の雛を見る。


「うまく打てるかなー……雛も初めてでしょ?」


「うん」


 雛は当然のように答えた。


「壊さなければ大丈夫って」


 美玲は勢いよく運転席を見る。


「紫亜さん、注意点そこでいいんですか!?」


 車内に笑いが広がる。


 賑やかな一行を乗せて、車は寺院へ向かって走っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ