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HINA-死神の系譜-  作者: 竜堂さくら


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第78話 興奮


 クリスマスの翌朝。


 教室では、生徒達がクリスマスプレゼントの話で盛り上がっていた。


 そんな中、雛は教室へ入るなり美玲の元へ向かう。


「美玲!」


 珍しく興奮気味の雛。


 美玲は笑顔で振り返った。


「おはよう、雛! プレゼントもらった?」


 雛は大きく頷く。


「サンタさん来た!」


 美玲は目を丸くした。


「え? 会えたの!?」


 雛は少しだけ残念そうな顔になる。


「会えなかった……」


(紫亜さん、すごいです!)


 心の中で感嘆する美玲。


「でも、起きたらプレゼント置いてあった」


「よかったね!」


 雛は真剣な表情で続けた。


「全く気配がわからなかった……サンタさんすごい!」


「そ、そうなんだ……」


 苦笑しながら尋ねる。


「ね、ねえ、プレゼントは何だったの?」


 雛は制服の裾を少し捲った。


「これ」


 スカートのウエストには一本のベルトが巻かれている。


「ベルトなんだー」


 雛は首を振る。


「普通のベルトじゃない」


 美玲は嫌な予感がした。


「昼休みに屋上で見せて!」


「うん」



 昼休み。


 屋上には雛、美玲、楸の三人がいた。


 美玲は楸を見る。


「楸先輩も来たの?」


「哀沢がクリスマスプレゼント見せてくれるって言うから」


 雛は嬉しそうに頷いた。


「すごいから!」


 スカートのウエストへ巻かれたベルトを見せる。


 楸は腕を組んだ。


「ベルトか。渋いデザインだな」


 雛はバックルになっているグリップを握り、操作する。


 次の瞬間。


 ベルトが展開し、一振りの蛇腹剣へと姿を変えた。


「ええ!?」


 美玲が目を丸くする。


「剣かよ!」


 楸も思わず声を上げた。


 雛は蛇腹剣を振るう。


 まるで中国拳法の演武のような、美しく流れる舞。


 剣は時折解放され、鞭のようにしなる。


 ひとしきり舞が終わると、雛はグリップをウエストへ当てた。


 刃は身体に沿って滑るように収納され、再び一本のベルトへ戻る。


「ふー……っ」


 満足そうに息を吐く雛。


「すごいね!」


 美玲は目を輝かせた。


 楸も感心したように頷く。


「哀沢もすげぇが、クリスマスプレゼントにそれを贈る紫亜さんもすげぇな」


 美玲は慌てて楸を見る。


「楸先輩!」


 雛は静かに首を振った。


「違う」


「え?」


「紫亜さんじゃない」


「違うの!?」


 雛は当然のように答える。


「紫亜さんなら、寝てても気づける」


 楸は首を傾げた。


「じゃあ、誰だ?」


 雛は迷いなく答える。


「サンタさん」


 美玲は思わず聞き返した。


「ほんとにサンタさんなの?」


「紫亜さんにも私にも気づかれずにプレゼント置いていけるなんて、サンタさんしかいない!」


 美玲は思わず呟く。


「雛が興奮してる……」


 楸も苦笑した。


「初めて見たな」


 美玲は改めてベルトを見る。


「でも、雛。そのベルト、人目のある場所では使わないようにね!」


 楸も頷く。


「俺もその方がいいと思うぞ」


 雛は少し考えてから頷いた。


「……わかった」


 ほっと胸を撫で下ろす二人。


(紫亜さんじゃない……?)


 美玲は心の中で首を傾げる。


 雛は二人を見た。


「美玲と楸先輩は、サンタさんに何もらったの?」


 美玲は笑顔で答える。


「うちはお父さんからイヤフォンもらったよ!」


 楸は肩をすくめた。


「俺のとこにはサンタ来なかったわ」


 雛は少しだけ不思議そうな顔をした。


「そうなんだ……?」


 その日は放課後まで、テンション高めの雛だった。



 哀沢家。


 玄関の扉が開く。


「ただいま」


「おかえりなさいませ」


 紫亜が笑顔で迎えた。


 リビングで向かい合い、紅茶を飲む二人。


 雛はカップを置く。


「美玲と楸先輩にベルト見せた」


「驚いてましたか?」


「二人ともすごいって言ってた」


 紫亜は嬉しそうに微笑んだ。


「よかったですね」


 雛は頷き、紅茶を一口飲む。


 そして小さく息を吐いた。


「来年も楽しみ」


 紫亜は一瞬だけ固まる。


「……え?」


 雛は真っ直ぐ答えた。


「来年こそはサンタさんに会うから」


 少し考えた紫亜は、何気ない調子で尋ねる。


「美玲さんと楸さんには、サンタさんは来てましたか?」


「そういえば、二人とも来てなかったみたい」


 その言葉を聞き、紫亜は胸を撫で下ろした。


「サンタさんは、人生で一度だけしか来てくれないみたいですよ?」


 雛は目を丸くする。


「え? そうなの?」


「だから、初めての雛様のところには来てくれたのですね」


 雛は少しだけ寂しそうに笑った。


「会いたかったな……」


 美玲の家の方角に向いて目を瞑る紫亜。


(美玲さん、本当にありがとうございます……)


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