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HINA-死神の系譜-  作者: 竜堂さくら


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第67話 分派


 一回戦は、その後も順調に進んでいった。


 引導流の正派同士。


 正派と分派。


 様々な組み合わせで試合が続く。


 だが。


 結果は変わらない。


 勝ち上がるのは、全て正派だった。


 分派で一回戦を突破した者は、まだ一人もいない。


 そして。


 一回戦最終試合。


 引導流正派と分派の一戦。


 会場には、自然と「今回も正派が勝つ」という空気が流れていた。


 二人の代表が試合場へ歩み出る。


 審判が中央へ立つ。


「引導流米原家対引導波涛流才谷家。禁じ手はありません。よろしいですね?」


 二人は静かに頷く。


「始め!」


 睨み合う両者。


 互いに一歩も動かない。


 静かな緊張が流れる。


 楸が試合を見つめる。


「今回も正派の勝利かな?」


 高山も頷く。


「今のところ全部正派の勝ちですもんね」


 祥子が腕を組む。


「分派で有名な流派、聞かないしねー」


 美玲は雛を見る。


「雛はどう見る?」


 雛は才谷だけを見ていた。


「あの人だけ、引導流らしくない体格」


 一同の視線が才谷へ向く。


 肩幅は広く。


 腕も太い。


 速さを重視する引導流では珍しいほど、鍛え上げられた肉体だった。


 祥子が頷く。


「引導流は速さを重視するから、あまりマッチョはいないのよね」


 その時。


 米原が一気に踏み込んだ。


 連撃。


 拳。


 掌。


 肘。


 休むことなく畳み掛ける。


 才谷は防戦一方だった。


 受ける。


 逸らす。


 受ける。


 それでも連撃は止まらない。


 30秒。


 打たれ続ける才谷。


 高山が思わず呟いた。


「決まりですかね?」


 楸は小さく首を振る。


「いや……」


 その時だった。


 連撃を受けながら、才谷の身体がゆっくりと捻られていく。


 まるで何かを溜め込むように。


 美玲が息を呑んだ。


「嘘? 何あの人」


 次の瞬間。


 才谷が踏み込む。


「覇っっ!!」


 連撃を真正面から突き破る。


 重い一撃。


 米原の身体が大きく浮いた。


 そのまま試合場の外まで吹き飛ばされる。


 場内が静まり返った。


 審判が右手を上げる。


「勝者、引導波涛流才谷家!」


 どよめきが広がる。


 勝ち名乗りを受けながら、才谷は静かに雛を見つめていた。


 祥子が小さく呟く。


「雛を意識してるわ」


 楸は苦笑する。


「連撃は意味ねぇぞってか」


 雛は才谷から目を逸らさない。


「楽しみ」



 二回戦第一試合。


 神代家。


 伊集院家。


 二人が試合場へ進み出る。


「引導流神代家対引導流伊集院家。禁じ手はありません。よろしいですね?」


 二人は頷く。


「始め!」


 開始と同時。


 神代は一回戦と同じように先手を取った。


 連撃。


 だが。


 雛は迎え撃たない。


 一歩。


 半歩。


 紙一重で避け続ける。


 神代は連撃の速度を上げる。


 それでも当たらない。


 1分近く続く連撃。


 会場の空気が変わっていく。


 祥子が思わず声を上げた。


「なんで連撃で割り込まないの!?」


 楸は笑う。


「哀沢なりに燃えてるんだな」


 美玲が楸を見る。


「どういうこと?」


「まあ、見てな」


 神代の息が乱れる。


 肩で息をしながら雛を見る。


 雛は動かない。


 手も出さない。


 神代は覚悟を決めた。


 腰を深く落とす。


 渾身の一撃を放つ構え。


 雛は静かに両手を広げた。


 大きく空いた胴。


 神代は迷わず突きを放つ。


 誰もが当たると思った。


 しかし。


 一瞬だった。


 雛の身体が滑る。


 神代の腕を流し。


 体勢を崩し。


 その勢いのまま投げ飛ばした。


 神代は頭から試合場へ叩きつけられる。


 祥子が目を見開く。


「投げたの!?」


 楸は頷く。


「やっぱりな」


 高山が楸を見る。


「どういうことです?」


「さっきの分派の奴へのアピールだよ」


 美玲が首を傾げる。


「え?」


 楸は試合場を見つめたまま答えた。


「力だけで来るなら、こうなるぞってな!」


 審判が右手を上げる。


「勝者、引導流伊集院家!」


 勝ち名乗りを受けながら。


 雛は才谷を見た。


 その目は。


 珍しく相手を煽るような視線だった。


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