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HINA-死神の系譜-  作者: 竜堂さくら


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第64話 お手伝いさん≒メイド


 校門まで歩く雛と美玲。


 校門前では、紫亜と美玲の母が楽しそうに談笑していた。


「お母さん!」


「紫亜さん」


 二人に気付いた美玲の母が笑顔を向ける。


「迎えに来てくれたのね」


 紫亜も穏やかに頭を下げた。


「ありがとうございます」


 美玲は不思議そうに二人を見比べる。


「お母さん、紫亜さん初対面よね?」


「うん。でも、あんたから特徴聞いてたから、すぐ分かったわ」


 紫亜を見る。


「言ってた通り綺麗な人ねー!」


 紫亜は微笑む。


「あら、お上手ですね」


 雛が二人を見る。


「教室行こう」


「私達の絵、見てよ!」


 四人は一年A組へ向かった。



 教室では展示された絵を見学する人達で賑わっていた。


 美玲の母は娘の作品を見つける。


「雛ちゃん描いたのね。可愛く描けてるじゃない」


「えへへ」


 少し照れる美玲。


 一方。


 紫亜は雛の作品の前で足を止める。


「雛様」


「ん」


「流石です。少しクオリティ下げてますね」


「その方がいいって言ったから」


 そこへ美玲の母もやって来た。


 雛の作品を見る。


「えっ?」


 思わず立ち止まる。


「すごいでしょ!」


 美玲が嬉しそうに言う。


「写真かと思ったわ」


 雛は少し口を尖らせた。


「全然なのに……」


 紫亜は小さく微笑む。


「最初に描いた物だったら、鑑定騒ぎでしたよ?」


「何か言った?」


 美玲が首を傾げる。


「ううん」


 美玲は笑顔になる。


「何か食べに行く?」


 紫亜が口を開いた。


「四人で食べようと、お弁当を持ってきましたよ」


 雛の表情が少し明るくなる。


「おお」


 美玲の母は恐縮したように言う。


「わざわざすみません」


「じゃあ学食行こう!」


「持ち込みOKだし」


「うん」



 学食。


 昼時ということもあり、多くの生徒や保護者で賑わっていた。


 四人は空いていた席へ腰を下ろす。


 紫亜は風呂敷包みをテーブルへ置いた。


 ゆっくりと包みを開く。


 現れたのは三段重ねの重箱だった。


「ええ?」


 美玲が思わず声を上げる。


 一段目。


 色鮮やかな和食。


 二段目。


 ローストビーフやグラタンなどの洋食。


 三段目。


 海老チリや焼売などの中華。


 蓋を開けた瞬間、食欲を誘う香りが広がる。


「プロの料理みたい……」


 美玲の母が感嘆した。


「ありがとうございます」


 紫亜は穏やかに微笑む。


 周囲の学生や保護者達も思わず視線を向けていた。


「あれ手作り?」


「すごく美味しそう……」


 そんな声まで聞こえてくる。


 雛は重箱を見つめる。


「美味しそう」


「さあ、召し上がってくださいませ」


 雛が手を合わせる。


「いただきます」


 美玲と母も続く。


「いただきます」


 料理を口に運ぶたびに笑顔が増えていく。


 自然と会話も弾み、穏やかな昼食の時間が流れていった。



 昼食を終えた四人は再び文化祭を見て回る。


 メイド喫茶の前で足を止めた。


「おかえりなさいませ、ご主人様ー!」


 元気な声が響く。


 紫亜は看板を見る。


「メイド喫茶ですね」


 雛は少し驚いた。


「知ってるんだ?」


 美玲が笑う。


「ここでお茶してく?」


 美玲の母は照れ笑いした。


「なんだか気恥ずかしいんだけど……」


 紫亜は微笑む。


「何事も経験ですよ」


「じゃあ、入ろう」



 席へ案内される四人。


「ご注文は?」


「紅茶」


「では、私も紅茶を」


「アイスコーヒー」


「私もアイスコーヒーで」


「かしこまりましたー!」


 店員は厨房へ戻っていく。


 四人は文化祭の話をしながら談笑していた。


 しばらくして。


 飲み物が運ばれてくる。


「お待たせしましたー!」


 メイドは雛に気付き、目を丸くした。


「哀沢さんだ!」


「うん」


 そして紫亜を見る。


「てことは、この人が哀沢さんちのメイドさん?」


「ううん」


「お手伝いさん兼、保護者」


「ええー?」


「何が違うの?」


 美玲が眉をひそめる。


「ちょっとあんた……」


 紫亜はそっと手を上げ、美玲を制した。


「紫亜さん」


 雛が見る。


 紫亜は穏やかに微笑んだ。


「メイドとお手伝いさん。たしかに似たようなものかもしれませんが……」


「よろしければ、厳密な違いをお教えいたしましょうか?」


 その笑顔を見た瞬間。


 メイドの背筋を悪寒が走った。


「い、いえ!」


「哀沢さん、ごめんね!」


 慌てて頭を下げ、逃げるように持ち場へ戻っていく。


 美玲の母だけは状況が分からず首を傾げた。


「では、いただきましょうか」


「そうね、いただきましょう」



 その後も四人は文化祭を楽しんだ。


 射的では雛と紫亜が全弾命中し、景品を抱えることになる。


 ボクシング部の前では、『但し、哀沢雛参加不可』の貼り紙を見て、美玲の母は驚き、紫亜は静かに頷いた。


 楽しい時間はあっという間に過ぎていく。


「そろそろ私達、一旦教室に戻らなきゃ」


「終わるまで待ってようか?」


「ううん。片付けもあるし、先に帰ってて」


 紫亜は雛へ微笑んだ。


「では雛様、私も先に帰ってますね」


「うん、来てくれてありがとう」


「当たり前ですよ」


 二人は手を振る。


 紫亜は美玲の母へ向き直る。


「神崎様、お宅までお送りしますよ」


「いいんですか? ありがとうございます」


 車へ向かう二人を見送りながら、雛と美玲は静かに微笑んでいた。


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