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HINA-死神の系譜-  作者: 竜堂さくら


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63/102

第63話 一般公開日


 翌日。


 文化祭2日目。


 今日は一般公開日だった。


 一般の来場者はチケット制のため、校内には生徒達の家族や知人の姿が多い。


 各クラスの模擬店も昨日以上に賑わっていた。


 一度教室へ集合してから自由行動となるため、雛と美玲も教室でホームルームを受けていた。


 黒崎が教卓に立つ。


「今日は一般の方もいらっしゃるから、失礼のないようにな」


 教室を見回す。


「終わったら、また教室に集合だぞ」


「はーい!」


 元気な返事が返ってくる。


 ホームルームが終わると、生徒達は一斉に教室を飛び出していった。


 美玲も笑顔で立ち上がる。


「今日はどこ見る?」


「模擬店」


「昨日ほとんど食べたよ?」


「じゃあ、食べ物以外の模擬店」


 美玲は笑う。


「雛お断りじゃなきゃいいけどねー」


 雛は首を傾げた。


「紫亜さん、昼前に来るって言ってたから、来たら何か食べる」


「うちのお母さんも、それくらいに来るって言ってたよ」


「そっか」


 二人は教室を出た。



 模擬店を見て回る。


 射的。


 輪投げ。


 占い。


 どの教室からも笑い声が聞こえてくる。


 その途中。


 ボクシング部の前を通りかかった。


「哀沢さん!」


 慌てた様子で部長が駆け寄ってくる。


「はい」


「どうしたんですか?」


 美玲が尋ねる。


 部長は困ったように頭を掻いた。


「殴られ屋なんだけど、タチの悪い客が来てて……」


「え?」


「1回成功した後も続けて挑戦してて、今5回目なんだ」


 リングの方を見る。


 男が賞金を受け取りながら笑っていた。


「じゃあ、もう1回な!」


 部員達は困り果てている。


「そんなー……!」


 雛は男を見る。


「そうなんだ」


 部長は両手を合わせた。


「哀沢さん、助けてくれないか!?」


 美玲が雛を見る。


「どうする?」


「いいですよ」


 部長は顔を輝かせた。


「本当に? 助かる!」



 リング。


 男が雛を見る。


「ん?」


「交代」


 部員達がざわついた。


「哀沢さん!?」


 男は鼻で笑う。


「お姉ちゃんか。俺は女でも手加減しねぇぞ?」


「どうぞ」


 部員がゴングを鳴らす。


 男は軽くジャブを放つ。


 雛は半歩だけ動いた。


 拳は空を切る。


「このっ!」


 今度は連打。


 左右のフック。


 ストレート。


 アッパー。


 全て避けられる。


 10秒。


 ゴング。


「時間です!」


 部員が声を上げる。


「もう1回だ!」


 男は100円を受付へ置く。



 2回目。


 3回目。


 5回目。


 10回目。


 挑戦を重ねるたびに、観客は増えていく。


「また避けた!」


「すげぇ!」


「一発も当たらねぇ!」


 男の息は徐々に荒くなる。


 額から汗が流れ落ちた。


 それでも意地になって挑み続ける。


「まだだ!」


 20回。


 30回。


 40回。


 誰一人として、その結果を疑わなくなっていた。


 そして。


 50回目。


 ゴング。


 男は渾身の連打を放つ。


 雛は最小限の動きだけで避け続ける。


 10秒。


 終了。


「時間です!」


 部員の声が響いた。


 男は肩で息をしていた。


「はぁ……はぁ……」


 雛は変わらず立っている。


 男は歯を食いしばった。


「俺は元プロだぞ」


「だから?」


 男は悔しそうに笑う。


「今度は逆だ!」


「俺に当てられなかったら、売り上げ全部よこせ!」


「当てたら?」


「1発につき1万やるぜ!」


 雛は首を傾げた。


「何発まで当てていいの?」


 財布の中身を思い出した男は苦笑する。


「4発だ! だが、1発も当たらねぇよ!」


 部長が一枚の紙を差し出した。


「一応、誓約書にサインしてください」


「しゃあねぇな」


 男は乱暴に名前を書く。


 雛は部員を見る。


「ゴング鳴らして」


 カーン。


 男は構えた。


「来いよ! 当てられると思っ──」


 次の瞬間。


 パパパパンッ!


 4発。


 一瞬だった。


 男は言葉を失う。


「あ……あ……っ」


 そのまま膝から崩れ落ちた。


 周囲は静まり返る。


 やがて。


 大歓声が上がった。


 男は震える手で財布から4万円を取り出す。


 雛へ渡すと、何も言わず逃げるように立ち去った。


 部員達が歓声を上げる。


「哀沢さんすごい!」


「助かりました!」


 部長も深々と頭を下げた。


「本当にありがとう!」


 雛は4万円を差し出す。


「はいこれ」


「哀沢さんがもらっていいよ?」


「模擬店の利益にしてください」


 部長は苦笑した。


「ははっ……じゃあ、ありがたく!」


 美玲が尋ねる。


「いいの?」


 雛は小さく笑った。


「楽しかったから」



 二人は再び文化祭を見て回る。


 メイド喫茶の前を通りかかる。


「おかえりなさいませ、ご主人様ー!」


 元気な声が響く。


 雛は首を傾げた。


「お手伝いさん?」


 美玲は笑う。


「そういうコンセプトの喫茶店なのよ」


「へー」


「入ってみる?」


 雛は時計を見る。


「そろそろ紫亜さん来るかも」


「もうそんな時間かー」


 美玲は笑顔になる。


「校門まで迎えに行こうか」


「うん」


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