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HINA-死神の系譜-  作者: 竜堂さくら


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62/102

第62話 肖像画


 放課後。


 教室には夕日が差し込んでいた。


 文化祭まで、あと一週間。


 教室のあちこちでは、絵の具や色鉛筆の話題で盛り上がっている。


 美玲が雛の机へ近付いた。


「ねえねえ、雛」


「ん?」


「絵の提出まであと一週間だけど、どこまで描けてる?」


 雛はあっさり答えた。


「もう描けてる」


「早っ!」


 美玲は苦笑する。


「私はあと色だけなんだけど、その前に見てもらって、気に入るか確認しようと思って」


 雛は首を横に振った。


「ううん」


「え?」


「美玲の好きなように描いて」


「見るのは当日の楽しみにしとく」


 美玲は一瞬きょとんとしたあと、笑顔になった。


「ああ、そうだよね!」


「うん」


「じゃあ、私も楽しみにしとく!」


 二人は笑い合った。



 帰り道。


 夕暮れの住宅街を並んで歩く。


 美玲が思い出したように尋ねる。


「文化祭、2日目は一般公開だけど、紫亜さん来るの?」


「楽しみって言ってた」


「うちもお母さん来るって」


「そっか」


 二人は他愛のない話をしながら家路についた。



 文化祭当日。


 校内は朝から文化祭一色だった。


 廊下には色鮮やかな飾り付け。


 教室からは笑い声。


 各クラスの出し物も始まり、生徒達が楽しそうに校内を行き交っている。


 雛達のクラスも、多くの生徒で賑わっていた。


 壁一面には、様々な絵が展示されている。


 水彩画。


 鉛筆画。


 風景。


 動物。


 人物。


 それぞれの作品にはタイトルと作者名が添えられていた。


 美玲は教室を見回す。


「みんな上手いね!」


「うん」


 雛も静かに見て回る。


 その時。


 一枚の絵の前で足を止めた。


 可愛いタッチで描かれた少女。


 静かに微笑む雛だった。


 タイトル。


『親友』


「見つかっちゃった!」


 美玲が照れ笑いする。


 少し不安そうに雛を見る。


「どうかな……?」


 雛は絵を見つめる。


「かわいい」


 美玲の表情が一気に明るくなった。


「そう? よかった!」


 今度は美玲が雛の作品を探し始める。


「あ、雛のは――」


 その時。


「何これ!?」


「誰だよ写真提出したの!?」


 教室がざわついた。


 美玲も声の方を見る。


「えー?」


 そこには。


 ひとりの少女。


 いや。


 写真としか思えない鉛筆画が飾られていた。


 近付いて見ても。


 鉛筆の線で描かれていることは分かる。


 だが。


 あまりにも精巧だった。


「雛!?」


 美玲が振り返る。


 雛は静かに頷いた。


「私の絵」


 周囲の生徒達も集まってくる。


「哀沢さん!」


「写真じゃないのこれ!?」


 美玲は絵へ近付いた。


「近くで見たら絵だって分かる」


 雛は小さく尋ねる。


「どう?」


 美玲はタイトルへ目を向けた。


『親友』


 一瞬だけ目を丸くする。


 そして。


 満面の笑みになった。


「ありがとうね、雛!」


 雛も少しだけ嬉しそうだった。


「ううん」



 二人は他のクラスも見て回る。


 演劇。


 写真部。


 科学部。


 どの教室も文化祭らしい賑わいだった。


 その途中。


 ボクシング部の模擬店が目に入る。


『殴られ屋』


 一回100円。


 10秒間で一発でも当てられたら1000円。


 そんな貼り紙の下に、


 もう一枚。


『但し、哀沢雛参加不可』


 美玲は貼り紙を二度見した。


「やる前から出禁食らってる!?」


「えー?」


 雛だけは納得していなかった。


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