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HINA-死神の系譜-  作者: 竜堂さくら


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61/102

第61話 文化祭


 トライアスロン大会の翌日から、中間テストは始まった。


 三日間。


 教室にはいつも以上に張り詰めた空気が流れていた。


 教科が終わるたびに、生徒達は机へ突っ伏す。


「終わった……」


「数学難しすぎるだろ……」


「赤点だけは勘弁してくれ……」


 そんな声が教室のあちこちから聞こえていた。


 そして。


 三日間のテスト期間を終え、雛以外の生徒達はぐったりしていた。



 テスト最終日の翌日。


 ホームルーム。


 黒崎が教卓を軽く叩く。


「来月の文化祭だが、うちのクラスは何をやるか決めるぞ」


 その瞬間。


 教室が一気に賑やかになった。


「メイド喫茶!」


「お化け屋敷!」


「脱出ゲーム!」


 黒崎は苦笑する。


「調理が必要な出し物は避けてくれー」


 さらに教室が騒がしくなる。


 美玲が雛を見る。


「雛、何かやりたい事ないの?」


 雛は少し考えた。


「文化祭って初めてだし、わかんない」


「あー、そうだよね」


「何するの?」


 美玲は指を折りながら答える。


「模擬店とか、絵を描いて貼り出したりとか、研究発表したりとかかなー」


「ふーん……」


「あんまり興味ないでしょ?」


 雛は素直に頷いた。


「うん」


 黒崎が教室を見回す。


「他のクラスとか見て回りたいなら、模擬店はやめといた方がいいぞ」


 生徒達は顔を見合わせた。


「どうする?」


「決まらないな……」


 しばらくして。


 黒崎はため息をつく。


「もう、絵の展示でいいだろ」


 美玲が手を挙げる。


「何描くんですか?」


「風景でも人物でも、好きな題材でいいぞ」


 教室中から声が飛んだ。


「投げやりだなー!」


 黒崎は笑う。


「文化祭の三日前には集めるから、ちゃんと描いてこいよー」



 放課後。


 二人は並んで歩いていた。


 夕暮れの街。


 帰宅する生徒達が行き交う。


「絵か……」


 雛が小さく呟く。


「何描くつもり?」


 美玲が尋ねる。


 雛はじっと美玲を見る。


「美玲描きたい」


「私!?」


 美玲は驚いた。


「紫亜さんの方がいいんじゃない?」


 雛は首を横に振る。


「ううん、美玲がいい」


 美玲は照れ笑いした。


「じゃあ、私も雛描く!」


 二人は笑いながらスマートフォンを取り出す。


「はい、こっち向いて!」


 お互いに写真を撮り合う。


 撮れた写真を見て笑う。


「描けたら、提出前に見せ合おうね」


「わかった」



 帰宅した雛。


「ただいま」


「おかえりなさいませ」


 紫亜が迎える。


 雛は自室へ荷物を置き、そのままリビングへ戻ってきた。


 ソファへ腰を下ろす。


「紅茶でよろしいですか?」


「うん」


 しばらくして。


 二人は静かに紅茶を飲む。


 雛が口を開いた。


「紫亜さん」


「はい」


「来月文化祭」


「出し物は何を?」


「絵を描いて貼り出すって」


「題材は決まってるのですか?」


「何でもいいって言われたから、美玲描くことにした。美玲は私を描くって」


 紫亜は穏やかに微笑んだ。


「それはよろしいかと」


 雛はスマートフォンを取り出す。


「これ」


 画面には笑顔の美玲。


 紫亜も画面を覗き込む。


「可愛い笑顔ですね」


 雛は立ち上がった。


「部屋で描いてみる」


「道具は部屋に揃ってますので」


「うん」



 一時間後。


 雛は三枚の絵を抱えてリビングへ戻ってきた。


「紫亜さん」


「はい」


「見て」


 テーブルへ並べられる三枚。


 水彩画。


 油絵。


 鉛筆画。


 どれも同じ笑顔の美玲だった。


 紫亜は静かに見つめる。


「大変お上手ですね」


「そう?」


「ただ……」


 雛は首を傾げる。


「ん?」


「少しクオリティを落とした方が、高校生らしいかと」


「そうなの?」


「美玲さんも雛様を描くのですから、配慮した方がよろしいかと思いますよ」


 雛は三枚を見比べる。


「そっか」


 そこに描かれていたのは。


 プロが描いたとしか思えない水彩画と油絵。


 そして。


 鉛筆画にいたっては、写真と見間違えるほど精巧な、美玲の姿だった。


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