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HINA-死神の系譜-  作者: 竜堂さくら


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第57話 祝勝会


 楸のタイトルマッチから三日後。


 雛と美玲は楸の祝勝会へ招かれていた。


 会場は街中にある広めのバー。


 今日は貸切となっており、ジム関係者や後援会を含めて三十人ほどが集まっている。


 店内には笑い声が響き、楸は行く先々で祝福の言葉を掛けられていた。


「チャンピオン!」


「よくやった!」


「次も期待してるぞ!」


 祝福に頭を下げながら、楸は照れ臭そうに笑う。


 やがて。


 スキンヘッドに髭面の男が前へ歩み出た。


 ジムの会長だった。


 手にしたグラスを高く掲げる。


「では、楸優作君のタイトル獲得を祝しまして!」


 一拍置き。


「乾杯!!」


「乾杯!!」


 店内に乾杯の声が響く。


 グラスが次々と重なり合う。


 楸、高山、雛、美玲は未成年のため、ソフトドリンクで乾杯した。


「改めて楸先輩、おめでとうございます!」


 高山が笑顔でグラスを合わせる。


「おめでとうございます!」


 美玲も嬉しそうに続いた。


 雛はジュースを一口飲み。


「……焼肉は?」


 楸は苦笑する。


「それは今度、俺の奢りでな」


「そっか」


 満足そうに頷く雛。


 美玲が呆れたように笑う。


「おめでとうくらい言いなさいよ!」


 雛は楸を見る。


「おめでとう」


 楸は少し照れ臭そうに笑った。


「師匠のおかげだ」


「うん、よく出来ました」


「満点か?」


「合格点なだけ」


 美玲が目を丸くする。


「厳しくない!?」


 高山も思わず口を挟む。


「めっちゃすごかったじゃん!」


 楸は苦笑した。


「ははは……」


 雛は静かに続ける。


「1R目は、もっと攻められたはず」


 楸の表情が少し引き締まる。


「2R目も、焦って決めようとして何度もカウンター食らってた」


「見逃さねぇか」


「だから合格点」


 楸は笑いながら頭を掻いた。


「精進します」


 その時だった。


「楸ー! 飲んでるかー?」


 会長が豪快に笑いながら近づいてくる。


「俺、未成年ですよ」


「おお、そうだったな!」


 店内に笑いが起こる。


 会長は雛を見る。


「あんたが哀沢さんだったな」


「今回は本当にありがとう!」


 深々と頭を下げる会長。


「いえ」


「おかげで楸は一皮むけたよ!」


 美玲が首を傾げる。


「そうなんですか?」


 会長は豪快に笑う。


「デビューから全勝で調子に乗ってたところを、鼻っ柱を折られたから、慢心せずに済んだ」


「私は別に」


「謙遜すんなって!」


 美玲が苦笑する。


「会長さん、雛はいつもこんな感じです」


 高山も頷いた。


「哀沢さん、会長相手でも通常運転だ……」


 楸が苦笑する。


「会長、本人居る前で話す事でもないでしょ」


「わはは!」


 会長は豪快に笑った。


「俺は後援会の皆さんに挨拶してくるから、これでな!」


 そう言って後援会の席へ向かっていった。


 その背中を見送りながら、楸が苦笑する。


「会長、珍しく真面目に話してたな」


 美玲が首を傾げた。


「いつもは違うんですか?」


 高山が苦笑する。


「二言目には根性!の人ですからね」


 雛がぽつりと呟く。


「おもしろい」


 美玲が笑う。


「技術論とかは?」


 楸は首を振った。


「聞いた事ねぇな!」


「よくジムの経営やれてますね……」


 四人は思わず笑い合った。


 少しして。


 楸が真面目な表情になる。


「なあ、哀沢」


「ん」


「正直な話、俺はちょっとはお前に近づけたと思うか?」


 雛は少しだけ考えた。


「……総合ルールなら」


「ノールールでやる気はねぇよ!」


 楸が即座に返す。


 美玲が慌てた。


「楸先輩を殺す気!?」


「めんどくさい……」


 雛は小さくため息を吐いた。



 祝勝会はお開きとなり。


 夜風が心地よく街を吹き抜けていた。


 美玲と雛は並んで帰り道を歩く。


「じゃあ、また明日ね!」


「うん」


 駅前で別れ、美玲は手を振りながら帰っていく。


 雛は一人、家への道を歩き始めた。


 静かな夜道。


 不意に立ち止まる。


 次の瞬間。


 神速のシャドーが数発放たれた。


 空気を裂く鋭い音だけが夜へ消えていく。


 雛は静かに息を吐いた。


「やっぱりめんどくさい」


 そう呟き、何事もなかったように歩き出した。


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