表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/37

第5話 部活動説明会


 翌日。


 昼食を終えた一年A組の生徒達は体育館へ集められていた。


 午後の授業は無い。


 代わりに行われるのは部活動説明会だった。


「部活かぁ」


 隣で神崎美玲が呟く。


「何か入るの?」


「まだ決めてない」


 そう答えた美玲は、今度は雛へ視線を向けた。


「雛は?」


「分からない」


 雛は短く答えた。


 もっとも、本当に分からないのだ。


 部活については紫亜から説明を受けている。


 同じ趣味や目標を持った生徒達が集まる活動。


 その程度の認識しかない。


 興味はある。


 だが実際に見てみないと判断できなかった。



 説明会が始まる。


 最初は文化部だった。


 吹奏楽部、美術部、写真部、演劇部。


 各部の代表者が順番に活動内容を紹介していく。


 どの部活も熱意は伝わってきた。


 だが雛には今ひとつ実感が湧かない。


「写真部ちょっと面白そうかも」


 美玲が小声で言う。


「そうなんだ」


「雛は興味ない?」


「別に」


 正直な感想だった。


 美玲は苦笑する。


 だと思った。



 文化部の説明が終わると、今度は運動部の紹介が始まった。


 こちらは実際の活動場所へ移動して見学する形式らしい。


 新入生達は各施設へ向かう。


 野球部はグラウンド。


 サッカー部もグラウンド。


 陸上部はトラック。


 バスケットボール部は体育館。


 どこも活気に満ちていた。


 だが、格闘技系の施設へ近付いた辺りで雛の足が自然と遅くなる。


 空手部。


 柔道部。


 ボクシング部。


 そして総合格闘技部。


 格闘技経験の無い生徒なら違いもよく分からないかもしれない。


 しかし雛は違った。


 各部が行っている練習を一目見るだけで、それぞれの特色が何となく理解できる。


 その時だった。


「もちろん女子も歓迎です!」


 総合格闘技部の部長が大きな声で言った。


 雛の目が少しだけ見開かれる。


 それは本当に一瞬だった。



 神崎美玲はその横顔を見ていた。


 昨日までの付き合いは短い。


 それでも分かる。


 今の反応は興味がある時の顔だ。


 たぶん本人は気付いていない。


 だが確実に食いついている。



 空手部では型と組手が披露された。


 柔道部では豪快な投げ技が飛び交う。


 ボクシング部では軽快なフットワークと鋭いミット打ちが響いていた。


 総合格闘技部では打撃だけではなく、投げや関節技、絞め技まで実演される。


 雛は終始無言だった。


 だが視線だけは一度も外れなかった。


 どの部活も面白い。


 本気でそう思った。



「どうだった?」


 見学が終わった後、美玲が尋ねる。


「面白そう」


 即答だった。


 美玲は思わず吹き出しそうになる。


 昨日までの雛なら、もう少し考えてから答えたはずだ。


「どこが?」


「全部」


 真顔だった。


 だから余計に面白い。



 説明会が終わる頃には、各部活が体験入部の案内を配っていた。


 空手部。


 柔道部。


 ボクシング部。


 総合格闘技部。


 雛は迷うことなく四枚とも受け取る。


 そして帰り道でも、ずっとそれを見比べていた。


「どこ入るの?」


 美玲が尋ねる。


「分からない」


 雛は答えた。


 だがその手にあるのは格闘技系部活の案内だけだ。


「本当に?」


「本当」


 本人は真面目だった。


 だからこそ信用できない。


 美玲は笑いを堪えながら空を見上げる。


 この数日で何となく分かってきた。


 雛は変わっている。


 そして格闘技が絡むと少しだけ分かりやすくなる。


 たぶん近いうちに何か起きる。


 根拠は無い。


 だが確信はあった。


 隣では雛が四枚の案内を真剣な顔で見つめている。


 その表情は、ほんの少しだけ楽しそうだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ