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第4話 小テスト


 翌朝。


 雛は教科書を鞄へ入れながら昨夜のことを思い出していた。


『全部知ってる事しか書いてないんだけど……?』


『あー……』


 紫亜は頭を抱えていた。


 理由はよく分からなかった。


 だが、あの様子を見る限り何か問題があるらしい。


 雛には何が問題なのか分からなかったが。



 華薗学園。


 一年A組。


 黒崎恒一は出席簿を片手に教室へ入った。


「おはよう」


「おはようございます」


 生徒達の声が返る。


 雛も周囲に合わせて挨拶をした。


 教壇へ立った黒崎は、教卓の上へ分厚いプリントの束を置く。


「今日から授業だ」


 教室に小さなどよめきが広がった。


「と言っても初日だからな。各教科、小テストをやる」


 途端に教室が静かになる。


「結果は後で担任の私に回ってくる」


「えー」


 あちこちから不満の声が上がった。


 黒崎は苦笑する。


「文句は聞かん」



 一時間目は国語だった。


 配られた問題用紙を受け取り、雛は内容へ目を通す。


 見たことがある問題だった。


 昨夜読んだ教科書にも載っていた気がする。


 解答欄を埋めて提出する。


 二時間目は数学。


 三時間目は英語。


 四時間目は科学。


 五時間目は歴史。


 どの教科も似たような感想だった。


 問題は難しくない。


 教科書に書いてあることばかりだった。


 雛は首を傾げながら答案用紙を提出していった。



 放課後。


 ホームルームの時間。


 教室へ入ってきた黒崎は大量の答案用紙を抱えていた。


「返すぞー」


 その一言で教室がざわつく。


「早くないですか?」


「教師を舐めるな」


 黒崎は答案を机へ置いた。


「採点くらいする」


 生徒達の笑いが起きる。


 そのまま答案が返却されていった。


 教室のあちこちから悲鳴や歓声が聞こえてくる。


「うわっ!」


「赤点じゃねぇか!」


「よし!」


「思ったより取れた!」


 そんな声が飛び交う中、黒崎は最後の一枚を手に取った。


「ちなみに」


 教室が静かになる。


「全科目満点は一人だけだ」


 生徒達が顔を見合わせた。


「誰だよ」


「天才じゃん」


「神崎じゃね?」


 好き勝手な予想が飛び交う。


 黒崎は答案へ目を落とした。


「哀沢」


「はい」


 雛が手を上げる。


「全科目満点」


 教室が揺れた。


「マジかよ!?」


「全部!?」


「すげぇ!」


「天才じゃん!」


 周囲は大騒ぎだった。


 だが雛には理由が分からない。


 昨夜見た教科書に書いてあったことばかりだった。


 むしろ間違える方が難しい気さえする。


 そんな認識だった。



 放課後。


 雛と美玲は並んで帰っていた。


「ねぇ」


 美玲が声を掛ける。


「ん?」


「学校初めてじゃなかったっけ?」


「うん」


 雛はあっさり頷いた。


 美玲は立ち止まる。


「じゃあ何で満点なの?」


「勉強したから」


「どこで?」


「家」


「いつ?」


「ずっと」


 美玲は頭を抱えた。


「意味分かんない」


「そう?」


「そう!」


 即答だった。


 雛にはよく分からない。


 勉強した。


 問題が出た。


 答えた。


 それだけだ。


「おじさん厳しかったし」


「おじさん?」


「勉強教えてくれた人」


 美玲は昨日の会話を思い出した。


 学校へ通ったことがない。


 勉強は家で習った。


 友達は二十代や三十代。


 そして全科目満点。


 情報が増えるほど意味が分からなくなる。


「やっぱり変だよ」


「そう?」


「そう」


 美玲は断言した。


 雛は少し考えたが、やはり何がおかしいのか分からなかった。


 そんな雛を見て、美玲は思わず笑う。


 やっぱり面白い。


 この友達は。

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