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HINA-死神の系譜-  作者: 竜堂さくら


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第48話 対策


 放課後。


 雛と美玲、そして楸はジムへ向かって歩いていた。


「付き合わせて悪ぃな」


 楸が頭を掻く。


「大丈夫」


 雛は短く答えた。


「高山君にも言われてたんで」


 美玲が笑う。


 楸は苦笑した。


「あいつ何か余計なこと言ってなかったか?」


「楸先輩の試合が近いとしか聞いてませんけど?」


「試合するんだ……」


 雛が楸を見る。


「ああ。やっと対戦相手が決まってな」


「どんな相手?」


「フルコン系の空手出身者でな、寝技はそうでもなさそうなんだが、打撃が厄介だ」


 美玲は納得したように頷く。


「あー……だから高山君、雛にジムに来てほしいって言ってたんだ!」


「スパーリング相手?」


「あいつは哀沢の打撃でボコられたから、ちょうどいいと思ったんだろ」


「短絡的だわー……」


 楸は肩を竦める。


「俺もそう思う」



 ジムへ到着する。


 高山はサンドバッグを叩いていた。


 激しい打撃音がジムへ響く。


 楸達に気付くと、すぐ駆け寄ってきた。


「楸先輩、お疲れ様です!」


 雛を見る。


「哀沢さんもよく来てくれた!」


「私もいるんだけどー?」


「わかってるって!」


 高山は慌てて笑った。



 休憩スペース。


 四人は椅子へ腰掛ける。


「楸先輩から話は聞いてるかもだけど」


「次の対戦相手?」


 高山は頷いた。


「そう」


 美玲は腕を組む。


「雛をスパーリング相手にしても参考にならないと思うけど?」


「その通りだ」


 楸も頷く。


「高山、お前が身をもって分かってるんじゃないのか?」


 高山は苦笑した。


「自分は何の抵抗もできませんでしたけど、楸先輩なら何か突破口を見い出せるんじゃないかと」


「引いては次の対戦相手対策に繋がるんじゃないかと思ったんです」


 楸は腕を組んだ。


「ふむ……」


 美玲が雛を見る。


「雛が前と同じだと思っちゃダメよ?」


「それは……?」


「免許皆伝になった」


 楸は驚いた。


「引導流のか?」


「うん」


 美玲は苦笑する。


「夏休みの間に免許皆伝証もらったみたいです」


 楸は笑みを浮かべた。


「受けてみたいな」


 雛を見る。


「立ち合ってもらっていいか?」


「いいよ」



 リング。


 二人は向かい合う。


 雛はオープンフィンガーグローブを着ける。


 楸はヘッドギアに加え、胸や腹部まで覆うフルプロテクターを装着していた。


 その姿を見て高山が苦笑する。


「完全武装ですね……」


 楸も笑う。


「連撃の体系を見るだけで大怪我できねーからな」


 雛は静かに構えた。


「大丈夫」


「3分な」


 リングサイドでは高山と美玲が固唾を呑んで見守る。


 ゴングが鳴った。


 楸はすぐには動かない。


(様子見で打たせてみるか……?)


 次の瞬間。


 雛が音もなく間合いへ入る。


(来る……え!?)


 気付いた時には拳が顔面へ届いていた。


(これがボクシング部で聞いたパンチか……って、不味い!)


 反撃しようと腕を動かす。


 その時にはもう遅かった。


 引導流の連撃が始まる。


 鳩尾へ拳。


 身体が折れようとした瞬間、脇腹へ蹴り。


 崩れた体勢が無理やり起こされる。


 顎へ掌底。


 仰け反った身体へ膝蹴り。


 胸へ拳。


 前へ倒れかけた身体を押し返す。


 肘打ち。


 脇腹への蹴り。


 腹部への突き。


 崩れれば、その崩れた先へ。


 倒れそうになれば、倒れない位置へ。


 次の打撃が寸分の狂いもなく繋がっていく。


 楸は立ったまま攻撃を受け続けていた。


 ヘッドギア越しに頭が揺れる。


 プロテクター越しでも衝撃は重い。


(どうやって反撃する……)


 楸は雛の動きを目で追う。


 拳。


 掌。


 肘。


 膝。


 蹴り。


 あらゆる打撃が一つの流れとなって襲い続ける。


(やはり息継ぎの瞬間に割り込むしかないか?)


 楸は雛の呼吸だけを見続けた。


 だが。


 息継ぎがない。


 一分。


 二分。


 三分。


 終了のゴングが鳴る。


 そこで雛は最後の一撃を寸前で止める。


 静かに拳を下ろした。


 楸は深く息を吐いた。


 終了のゴングが鳴るまでの3分間、雛の連撃が止まることはなかった。


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