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HINA-死神の系譜-  作者: 竜堂さくら


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第46話 実力


 翌日の夜。


 夕食を囲む雛と紫亜。


「紫亜さん」


「はい」


「明日、実力テストがある」


「そうなのですね」


「全国順位も出るって」


 紫亜は優しく微笑んだ。


「雛様の実力を全国に知らしめるのですね」


「めんどくせぇ」


 父親そっくりの口調。


 紫亜は思わず口元を押さえた。


「ああ……久々……」


 雛はニヤリと笑う。


「雛様なら何も問題ないでしょうね」


「昨日、クラスの子達に勉強教えてって言われた」


「教えて差し上げるのですか」


「ううん、美玲馬鹿にしたから」


 紫亜は静かに頷く。


「そうですか……」



 島原家。


「調査はどこまで済んだ?」


 島原父が秘書へ尋ねる。


「ある程度は」


「報告しろ」


 秘書は資料を開いた。


「哀沢雛。保護者とふたり暮らし。学力は学年1位、身体能力もオリンピック級」


「高校入学を期にこの街へ引っ越してきましたが、それ以前の経歴は判明しません」


「判明しない?」


「はい。様々な調査機関を使いましたが、判明しませんでした」


 島原父は眉をひそめる。


「保護者とやらは?」


「紫亜・ウエストガーデン、35歳。資産家のようですが、その資産、背後関係共に謎に包まれています」


「それを解明するのが調査だろうが」


「申し訳ありません」


 島原父は舌打ちした。


「会社でも持っていれば乗っ取ってやるんだが……」


 携帯電話を取り出す。


「もしもし、副署長ですか? お久しぶりです」


「おお、島原さん」


「またゴルフでもいかがですかな?」


「いいですな。楽しみにしてますよ。ところで、何か御用が?」


「大した用ではないのですが、紫亜・ウエストガーデンという資産家はご存知ですかな?」


「その人物が何か?」


「いや、私の所に入ってきた情報によると、脱税や賄賂の噂がありましてな」


「ほほう……10年てところですかな」


「十分でしょう」


「では……」


「朗報をお待ちしてますよ」



 翌朝。


 実力テスト当日。


 雛は仏壇へ手を合わせる。


「いってきます」


「お気をつけて」


「うん」


 玄関を出る雛。


 紫亜はその背中を見送る。


 一台のパトカーが家の前へ近づいてきた。


「あら……」



 華薗学園。


 実力テスト終了のチャイムが鳴る。


「終わったー!」


 美玲が机へ突っ伏した。


「どうだった?」


「思ってたよりできたよ!」


「よかった」


 そこへ島原達が歩いてくる。


「哀沢さん」


「何?」


「えらく余裕ぶった顔してるけど、大丈夫なの?」


「雛がテストくらいで苦労しないわよ」


 美玲が言い返す。


 島原は口元を歪めた。


「なんか、御自宅にパトカーが来たらしいわよ?」


「ん?」


「私も人から聞いた話なので、よくは知らないけど……」


「あなたの保護者、何かしたんじゃないの?」


 嘲るように笑う。


「うるさい……」


 雛が島原達を睨む。


 島原達の身体が震えた。


「そ、そんなに気になるなら、家に帰って確かめてみればいいでしょ」


「美玲、先帰るね」


「気をつけてね!」


 雛は走り出す。


 島原は美玲へ向き直る。


「神崎さんも、付き合う相手は考えた方がいいかもね?」


 美玲は静かに笑った。


「たぶん、思ってるような結果にはならないと思うよ」


「そうかしら」


 島原はニヤリと笑った。



 自宅前。


 雛は息を切らしながら帰ってきた。


 玄関を開ける。


 リビングから紫亜が顔を出した。


「雛様」


「紫亜さん!」


「はい」


「大丈夫なの?」


「何がでしょう?」


「うちにパトカーが来たって」


 紫亜は穏やかに微笑む。


「ああ、この辺りで最近空き巣が多いとの事で、注意喚起にいらっしゃっただけですよ」


「……そっか」


「何も心配いりません」


「何も……」



 島原父の携帯電話が鳴る。


「副署長、どうなりましたか?」


 受話器の向こうから震えた声が聞こえる。


「島原さん、あなたとの縁もこれまでのようだ」


「え?」


「私は北の過疎地へ転勤になった」


「どういう事でしょう?」


「もうこれ以上話すことはない。さようなら」


 通話が切れる。


「何だ……何が起きた?」


 その時。


 今度は秘書の携帯電話が鳴った。


「私だ。何!? 間違いないのか?」


「どうした?」


 秘書は青ざめていた。


「島原グループの株の60%が買い取られました」


「なんだと!?」


「どこの企業だ?」


「様々な企業が関わっているようですが、糸を引いている者は分からないと……」


「馬鹿な……!」


「次の株主総会で社長の退任を要求するそうです」


「く、くっそーー!!」



 哀沢家。


 紫亜は夕食の支度を始めていた。


「雛様、夕飯は何がよろしいですか?」


 雛は少し考える。


「んー……肉」


「かしこまりました」


 紫亜は静かに家を出る。


 歩きながら徐ろにスマートフォンを取り出した。


「ええ、わかったわ」


 穏やかな声。


「ええ。その方が雛様の平穏な学園生活のためにも良いでしょう」


 電話を切る。


 紫亜は小さく微笑み、そのまま歩き出した。


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