第45話 新学期
夏休みが終わった。
久しぶりの教室。
クラスの雰囲気は少し変わっていた。
派手なメイクをした女子。
茶髪になった男子。
あちこちで夏休みの思い出話に花が咲いている。
◇
雛と美玲も話していた。
「なんとか宿題終わったよー!」
美玲が大きく伸びをする。
「よかった」
「雛のおかげだけどね!」
「ううん、美玲頑張った」
美玲は照れ笑いを浮かべた。
「雛は何してたの?」
「皆伝もらいに行ってきた」
「マジ?」
雛は持ってきた筒を見せる。
「免許皆伝証」
「ほんとにもらえたんだ!?」
「夏休みの目標達成」
「祥子ちゃん、よくくれたねー」
「道場主の、祥子ちゃんのお父さんからもらった」
美玲は嫌な予感がした。
「もしかして……」
「うん、お父さんと闘ったらもらえた」
道場の光景を想像する。
思わず額を押さえた。
「これからは、流派を聞かれたら引導流って言える」
「それだけのために!?」
「お父さんとおじさん流って言ったら、みんな不思議そうにするし」
「祥子ちゃんに同情するわ……」
◇
教室の扉が開く。
担任の黒崎が入ってきた。
「ホームルームやるぞー」
教室を見渡す。
「夏休み明けで浮かれてるお前らの、目が覚めることを言ってやる」
「明後日、実力テストだ!」
「えーーー!?」
教室中から悲鳴が上がる。
黒崎は笑った。
「今回の実力テストは全国順位も出るから、しっかり勉強しとくようにな!」
「科目は国数英だぞ」
雛が呟く。
「勉強で戦うのか」
美玲は苦笑した。
「なんかズレてる気もするけど、認識は間違ってないわね」
◇
少し離れた席。
女子数人のグループが雛と美玲を見つめていた。
◇
放課後。
帰る準備をする雛と美玲の前へ、そのグループがやって来た。
先頭の女子が声を掛ける。
「哀沢さん」
雛は首を傾げた。
「……誰?」
美玲が小声で教える。
「同じクラスの島原さんよ」
「そっか」
島原は少しだけ眉をひそめた。
「哀沢さん、お願いがあるんだけど」
「何?」
「私達にも勉強教えてくれない?」
美玲が笑う。
「雛、頭良いしね!」
島原も頷いた。
「そう。神崎さんみたいな子でも学力上がったんだから、私達ならもっと上がると思ってね」
美玲は乾いた笑いを浮かべた。
「あはは……」
雛は島原を見た。
「やだ」
島原達が固まる。
「え?」
「自分で頑張れば?」
雛は席を立つ。
「美玲、帰ろ」
「あ、待ってー!」
二人は教室を出ていった。
◇
教室に残る島原達。
「何あれ?」
「島原さんにあの態度って!」
取巻き達が口々に言う。
島原は悔しそうに二人の背中を見つめた。
「いいわ」
「そのうち思い知らせてやるわよ」
◇
廊下。
美玲が雛を追いかける。
「待ってよー!」
雛が立ち止まる。
「どうしたの雛?」
雛は前を向いたまま答えた。
「許せない」
「え?」
「私の友達を馬鹿にした」
美玲は目を丸くした。
そして嬉しそうに笑う。
「雛……」
「アイス食べて帰ろっか!」
「うん」
二人は並んで歩き出した。
◇
その日の夜。
豪華な邸宅。
広いリビングで島原は父親と話していた。
「でね、腹立つと思わない?」
父親は静かに頷く。
「頭が良いだけで、お前を馬鹿にしたのか」
「そうなのよ!」
「お父さんの力で目に物見せてやってよ!」
父親はソファにもたれた。
「お父さんに任せなさい」
「……まずは家庭環境からだな」
近くに控えていた秘書へ目を向ける。
「おい」
「かしこまりました」
秘書は一礼した。
「調べさせます」
島原は笑みを浮かべる。
「見てなさいよ、哀沢雛……」




