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HINA-死神の系譜-  作者: 竜堂さくら


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44/102

第44話 喜色


 道場主の部屋。


 雛、祥子、道場主の3人でお茶を飲んでいた。


「それにしても、あんたの無呼吸連打すごいわね!」


 祥子が感心したように言う。


「ありがとう」


 雛は素直に礼を言った。


「いや、息継ぎ無しで何分動けるのよ?」


「3分は計った事ある」


 道場主が目を丸くする。


「ほう、ボクシングの1R分動けるのか……」


「無茶苦茶ね!」


 祥子は呆れた。


 だが。


 ふと思い付いたようにスマートフォンを取り出す。


「もしかしてこんなの出来るんじゃないの?」


 動画を再生する。


 そこには格闘ゲームのキャラクターが映っていた。


 目にも止まらぬ連撃。


 さらに連撃。


 そして最後。


 目からビームを放って相手を吹き飛ばした。


 雛はじっと見ている。


 真剣だった。


「途中までならできるかな」


「途中まで?」


「最後の目からビームは無理」


「それ以外はできるって事!?」


 道場主は必死に笑いを堪えていた。



 不意に道場の入口から声が響く。


「ごめんください」


 雛が反応した。


「紫亜さんだ」


「お母さん?」


 祥子が聞く。


「お手伝いさん兼、保護者」


「謎が増えたわ……」


 祥子は額を押さえた。



 雛は立ち上がる。


「じゃあ、帰る」


 そして道場主へ向き直った。


「ありがとうございました」


 小さく頭を下げる。


 道場主は満足そうに頷いた。


「また来なさい」


「はい」


「おっと、これを忘れていた」


 道場主は一本の筒を差し出した。


 雛が受け取る。


「免許皆伝証だ」


 一瞬。


 雛の表情が明るくなった。


「ありがとう」


 口元が緩む。


 祥子は思わず笑った。


 本当に嬉しいらしい。



 道場の入口。


「雛様」


「紫亜さん」


 紫亜が微笑む。


「早かったですかね?」


「ううん、ちょうど」


「それは良かったです。帰りましょうか」


 雛は振り返った。


「祥子ちゃん、またね」


「今度は普通に遊びに来なさいよ!」


「ん?」


 雛は首を傾げる。


 今回も普通に来たつもりだった。


 祥子は深いため息を吐く。


 紫亜は小さく笑った。


「では、皆様ごきげんよう」


 礼儀正しく頭を下げる。


 門弟達も慌てて頭を下げた。



 山道を下る。


 スポーツカーへ乗り込む。


 走り出した車内。


「どうでしたか?」


 紫亜が聞く。


 雛は嬉しそうに筒を見せた。


「免許皆伝証もらった」


「とても嬉しそうですね」


「うん、嬉しい」


 紫亜も微笑む。


「夏休みの目標、達成できた」


「それは何よりです」



 別荘へ到着する。


 玄関ではジェームズが待っていた。


「お疲れ様でございました」


 雛はすぐに筒を見せる。


「それは?」


「免許皆伝証」


 ジェームズは目を丸くした。


 思わず紫亜を見る。


 紫亜は当然とばかりに頷いた。


 ジェームズも納得したように頷く。


「それは大変喜ばしいですね」


「うん」


 雛は滅多に見せない笑顔を浮かべた。


 ジェームズも穏やかに笑う。



「では雛様、そろそろ帰りましょうか」


 紫亜が言う。


「ジェームズさん、またね」


「いつでもお待ちしております」


 ジェームズは深々と頭を下げた。



 自宅へ向かうスポーツカー。


 雛は窓の外を眺めていた。


「部屋に飾らないと」


「額縁は用意してありますよ」


「ありがとう」


 少しだけ沈黙。


 流れる景色を見ながら雛が呟く。


「美玲にも見せたいな……」


 その声はどこか弾んでいた。


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