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HINA-死神の系譜-  作者: 竜堂さくら


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第42話 皆伝


 紫亜の運転するスポーツカーで別荘へ向かう。


 別荘の前ではジェームズが待っていた。


「お待ちしておりました」


「出迎えご苦労様」


 紫亜が微笑む。


「花火大会ぶり」


 雛が言う。


「そうですね」


 ジェームズも頷いた。


「あの時は驚いた」


「ほっほっ。喜んで頂けたなら幸いです」


 上品に笑うジェームズ。


「昼食はすぐにご用意できますが、いかがいたしましょう?」


「雛様、どうしますか?」


 紫亜が聞く。


「うん、食べる」


 少し考える。


「ジェームズさんも一緒に食べよう」


「いえいえ私は……」


「雛様が仰っているのですから、ご一緒しなさいな」


 紫亜が言う。


 ジェームズは苦笑した。


「では、お言葉に甘えさせていただきます」



 別荘のリビング。


 三人で昼食を囲んでいた。


「今回はどういった御用向きで?」


 ジェームズが聞く。


「皆伝もらいに来た」


 当然のように雛が答えた。


「寺院の道場よ」


 紫亜が補足する。


 ジェームズは目を細めた。


「名誉師範代はもらったから、次は皆伝もらう」


「それは楽しみですな」



 昼食後。


 雛は玄関へ向かった。


「行ってきます」


「お送りしますよ」


 紫亜が言う。


「準備運動に走ってく」


「お気をつけて。帰りはお迎えに行きますね」


「ありがとう」


 雛は軽く手を振った。



 坂道を駆け上がっていく雛。


 その背中を見送る。


「大丈夫なのですか?」


 ジェームズが呟く。


「相手の事?」


 紫亜が聞き返した。


「一度別荘に来られましたが、只者ではありませんでしたよ」


「まだまだ人を見る目を養わないと駄目ね」


「と、言いますと?」


 紫亜は少し笑った。


「雛様を何度も見てるのに、そういう心配をしてるからよ」


 ジェームズは沈黙した。


「……精進いたします」


 深々と頭を下げる。



 山門までの坂道を駆け上がる。


 やがて寺院へ到着した。


 そのまま道場へ向かう。


 扉を開いた。


「たのもー」


 道場内の視線が一斉に集まる。


 振り向いた祥子が固まった。


「へ?」


 数秒停止。


「雛!?」


「皆伝もらいに来た」


 胸を張る雛。


 祥子は叫んだ。


「皆伝ー!?」



「名誉師範代もらったから、次は皆伝」


 当然のように言う雛。


 祥子は頭を抱えた。


「あのねー……」


「師範代って言っても『名誉』よ!」


「それだけでも師範代より下なのに、皆伝なんてまだまだ先よ!」


 雛は首を傾げた。


「師範倒してるけど?」


「ちょっと待ったー!」


 門弟達が一斉に立ち上がる。


「何?」


 雛は不思議そうだった。


 師範代の一人が前へ出る。


「名誉師範代の賞状は、師範に触れることができた者に出しているのであって、倒した証ではない!」


「じゃあ、師範代倒せばいい?」


 道場内が静まり返った。



「ちょ、ちょっと二人共落ち着いてよ!」


 祥子が慌てる。


「師範、止めないでください!」


 師範代が前へ出た。


「身の程知らずに教えてやるだけです!」


 祥子は額を押さえた。


「一応、止めたからね!」


「うん、やる」


 雛は頷く。



 お互いに構えた。


 引導流の構え。


 道場中の視線が集まる。


「もー……」


 祥子は深いため息を吐いた。


「始め!」


 師範代が踏み込む。


 鋭い突き。


 だが雛は半歩だけ身体をずらした。


 紙一重で回避。


 次の瞬間。


 鳩尾へ突きが入る。


「がっ――!?」


 師範代の身体がくの字に曲がった。


 そこから引導流の連撃が始まる。


 崩れそうになる身体を制御しながら、次々と打撃が叩き込まれる。


 倒れない。


 倒れさせてもらえない。


 完全な一方的展開だった。



 門弟達が言葉を失う。


 師範代達も固まっていた。


 祥子だけが頭を抱えている。


「うそ……」


 目の前で繰り広げられる技。


 見覚えがあった。


 いや。


 見覚えしかない。


「見ただけのはずなのに……」


 祥子は震える声で呟く。


「なんで完璧にマスターしてるのよ!?」


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