第40話 花火大会
プールからの帰り。
四人は入口前で立ち話をしていた。
「そういや」
楸が思い出したように口を開く。
「今夜花火大会だけど、お前らも行くのか?」
「花火大会?」
雛が首を傾げる。
美玲が固まった。
「花火見たことない?」
少し考える雛。
「……爆弾?」
「物騒な事言わないでよ!?」
美玲が即座にツッコんだ。
楸が吹き出す。
「やっぱおもしれぇ」
高山も苦笑した。
「なんかすげー」
◇
「行きたいけど」
美玲が少し考える。
「女子二人じゃお母さんが心配するかも」
「俺らと行くか?」
楸が言う。
「それはそれで心配しそう」
「失礼だな!?」
楸が抗議する。
高山が笑った。
「紫亜さんに頼む?」
雛が言う。
「保護者いれば大丈夫かな」
美玲も頷いた。
「あの人か。なら安心かもな」
楸が頷く。
「知ってるんですか?」
高山が聞く。
「前にちょっとな……」
楸が苦笑する。
美玲は以前の面談を思い出した。
「あー……」
「そうなんだ……」
高山は素直に頷いた。
「帰って紫亜さんに相談してから連絡する」
「んじゃ、それで」
一旦解散となった。
◇
自宅。
「紫亜さん」
「はい」
「プール行った四人で花火大会行こうって」
紫亜の目が輝く。
「更なる夏休みイベントですね」
「保護者いないとって」
「無視しないでください」
雛は少し考えた。
「紫亜さん、付き添いで来てくれる?」
「もちろんです」
「ありがとう」
紫亜は微笑む。
「何をおっしゃいます」
「美玲達に連絡する」
「とりあえず駅前に集合してもらってください」
「わかった」
◇
その夜。
駅前。
「駅前集合だったよな?」
楸が腕時計を見る。
「もう来るかと」
美玲も周囲を見回す。
「あっ!」
高山が声を上げた。
「あれですかね?」
一台の高級ミニバンが駅前へ滑り込む。
静かに停車。
スライドドアが開いた。
そして助手席から雛が顔を出す。
「みんな乗って」
三人は車へ乗り込んだ。
「紫亜さん、お久しぶりです」
美玲が頭を下げる。
「お久しぶりです!」
楸も頭を下げる。
「はじめまして!」
高山も続いた。
紫亜は微笑む。
「皆様ごきげんよう」
車が走り出した。
◇
「雛」
美玲が周囲を見回す。
「いつものスポーツカーじゃないのね?」
「私も初めて見た車」
「どういうこと!?」
美玲が思わず叫ぶ。
しばらくして、美玲が窓の外を見る。
「あれ?」
「会場はあっちだけど?」
花火大会会場とは逆方向だった。
「すぐですから」
紫亜はそう答えるだけだった。
◇
到着したのはヘリポートだった。
「え?」
美玲が固まる。
「は?」
楸も固まる。
高山も固まる。
そして。
雛も固まった。
待機していたヘリコプター。
その操縦席に座る人物を見て、美玲が声を上げた。
「ジェームズさん!?」
白髪オールバック。
立派な髭。
別荘の管理人だった。
「お久しぶりです、美玲様」
優雅な笑顔。
「知り合いか?」
高山が聞く。
「別荘の管理人さん」
雛が答える。
楸は少し考えた。
そして諦めた。
「考えるだけ無駄か……」
◇
「出発いたします」
ジェームズが告げる。
ヘリコプターが浮上した。
夜の街が小さくなっていく。
やがて遠くで光が弾けた。
花火大会が始まった。
赤。
青。
金。
夜空を彩る光の花。
次々と打ち上がる。
「綺麗」
雛が呟いた。
窓の外を見つめている。
「綺麗ですね」
紫亜も微笑む。
「花火を上から見たの初めてだわ……」
美玲は感動していた。
高山も。
楸も。
しばらく言葉を失う。
夜空に咲く花。
その光が全員の顔を照らしていた。




