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HINA-死神の系譜-  作者: 竜堂さくら


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第39話 本題


 更衣室で着替えを終えた四人は、プールサイドで合流した。


 高山は雛の姿を見るなり、深々と頭を下げる。


「絡んじゃってすみませんでした!」


「気にしてないし、同級生だから敬語じゃなくていい」


 高山は顔を上げた。


「ありがとう!」


 そしてもう一度頭を下げる。


 楸が苦笑した。


「だからお前は謝りすぎなんだよ」



「俺はちょっと哀沢と話があるから、二人で泳いでてくれ」


 楸が言った。


「わかりました」


 高山は頷く。


「雛、あとでね!」


 美玲が手を振った。


「うん」


 雛も小さく手を振り返す。



 楸と雛はプールサイドのベンチへ移動した。


 少し離れた場所では子供達がはしゃいでいる。


 雛は隣に座った。


「話って?」


 楸は少し考える。


「引導流ってなんだ?」


「名誉師範代になった」


「余計わかんねぇよ」


 即答だった。


 雛は少し考える。


「インドが起源の拳法」


「ほう」


「引導流の名前はインドラが由来」


「それを習ったのか?」


「闘ったら覚えた」


 楸の思考が止まった。


「は……?」


「手加減に使えそうだから試してみた」


 楸は額を押さえる。


「やっぱりお前、プロになれよ」


「……やめとく」


「向いてるぞ?」


 雛は少し考える。


「ずっと手加減するのめんどくさい」


 楸は吹き出した。


「女子高生の言うセリフじゃねぇな」



 流れるプール。


 壁際に掴まりながら、美玲と高山が流れに身を任せていた。


「なあ」


 高山が口を開く。


「なに?」


「哀沢さんって、なんであんなに強いんだ?」


 美玲は少し考えた。


「私に分かるわけないでしょ」


「強さの次元が違う気がするんだよ……」


 高山は遠い目になる。


 あの日の連打を思い出した。


「それはそうかも」


 美玲は苦笑する。


「あれでも手加減してるみたいよ?」


 高山が固まった。


「……あれで!?」


「格闘技は趣味みたいだから、もう対戦する事はないと思うわよ?」


「もったいないな」


「雛が燃えるような相手が現れたら変わるかもだけど……」


 美玲は少しだけ空を見る。


「私は今のままの雛でいてほしいかな」


 高山が横を見る。


「心配なんだな」


 美玲は笑った。


「親友だもん!」



 楸と雛が歩いてくる。


「待たせたな!」


「お待たせ」


「ううん!」


 美玲は笑顔で手を振った。


 雛は流れるプールを見る。


 人々がゆっくり流されている。


 しばらく眺める。


「面白い……」


「ああ、流れるプールっていうんだよ!」


 美玲が説明した。


 次の瞬間。


 雛が迷いなく飛び込む。


「雛!?」


 美玲が叫ぶ。


「哀沢!?」


 楸も立ち上がった。


 だが雛は流れに乗らない。


 流れに逆らい、全力で泳ぎ始めた。


 しかも速い。


 とんでもなく速い。


 周囲の利用客が次々と追い抜かれていく。


「雛ー!」


 美玲が叫ぶ。


「逆だってー!!」


 だが聞こえていない。


 楽しそうだった。


「すげースピード……」


 高山が呆然と呟く。


「そんな事じゃねぇだろ!」


 楸が即座にツッコむ。



 少し離れた場所。


 偶然視察に来ていた水泳協会関係者が、その光景を見ていた。


「……欲しい」


 思わず呟く。


「オリンピック強化選手に欲しい……」


 だが、その願いが叶うことはない。


 雛は既に二周目へ突入していた。


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