第38話 お詫び
夕方。
雛のスマホが鳴った。
画面を見ると、楸からだった。
「もしもし」
『よう』
聞き慣れた声だった。
『こないだは済まなかったな』
「大丈夫」
即答だった。
楸が少し苦笑する。
『詫びと言っちゃ何なんだが、駅前の室内プールの無料券が四枚あるんで、神崎も誘って四人で行かねぇか?』
雛は少し考えた。
「美玲に聞いてからでいい?」
『もちろん』
「わかった」
電話が切れた。
◇
雛はすぐに美玲へ電話をかけた。
『もしもし?』
「もしもし美玲」
『雛。明日の相談?』
「楸先輩がプール行かないか?って」
『急に?』
「なんか、お詫びがしたいから、四人で行こうって」
少し沈黙。
美玲は察した。
『ああ、そういう事ね』
『て言うか、私も?』
「四人でって言われたし、美玲行かないなら私も行かない」
美玲は思わず笑った。
『行くよー!』
「よかった」
『で、いつ?』
「美玲の返事待ちだから、いつでもいいと思う」
『じゃあ、水着も買いたいし明後日にしようか』
『明日、雛も買いに行くでしょ?』
「学校のじゃダメ?」
『ダメだよ!』
即答だった。
『買いに行こ!』
「わかった」
◇
今度は楸へ電話をかける。
「楸先輩」
『おう』
「明後日でもいい?」
『OK』
即答だった。
『じゃあ明後日の十時でいいか?』
「美玲にも言っとく」
『よろしくな』
電話が切れた。
◇
夕食。
「紫亜さん」
「はい」
「明後日、美玲と楸先輩達と四人で駅前の室内プール行く事になった」
紫亜の目が少し輝く。
「夏休み青春イベントですね」
「そうか……」
一瞬。
紫亜が固まる。
「美玲が明日水着買いに行こうって言ってるんだけど」
「それはそうですね」
「学校のじゃダメなの?」
「イベント用装備は大事ですから」
「うるせぇ」
紫亜の動きが再び止まる。
雛はニヤリとした。
「あまり派手でなければよろしいかと」
「派手じゃダメなの?」
「色々な意味で危険です」
「わかんない」
◇
翌日。
駅前のショッピングモール。
雛と美玲は水着売り場へ来ていた。
「いっぱいあるねー」
美玲が並んだ水着を見る。
数分後。
「私はこれかな」
美玲はパレオ付きのビキニを手に取った。
そして雛も選び終わる。
黒地に金のラインが入った、ハイレグ気味のワンピース。
どこか競技用にも見えるデザインだった。
美玲が固まる。
「それでいいの?」
「かっこいい」
即答だった。
美玲は遠い目になる。
「そもそもの基準が違うのね……」
◇
さらに翌日。
駅前。
室内プールの入口前。
「おーい!」
楸が手を振った。
隣には高山もいる。
「先日はすみませんでした!」
高山が勢いよく頭を下げる。
「気にしてない」
雛は即答した。
「だからお前はもう少し気にしろ」
楸が頭を抱える。
美玲が笑った。
「とりあえず入ろうよ」
「そうだな」
四人は入口へ向かう。
自動ドアが開く。
巨大な室内プールが見えた。
雛は少しだけ目を丸くする。
「おお……」
「初めて?」
美玲が聞く。
「うん」
美玲は笑った。
「じゃあ今日は楽しもう!」
四人は更衣室へ向かった。




