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HINA-死神の系譜-  作者: 竜堂さくら


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第36話 帰宅


 旅行最終日。


 別荘の前に一台のスポーツカーが停まった。


 運転席から降りてきたのは紫亜だった。


「お迎えに参りました」


 雛は頷く。


「おはよう」


「おはようございます」


 その様子を見ていた美玲が感心した。


「本当に迎えに来た」


「言ってあったから」


 雛は当然のように答えた。



 荷物を積み込んでいると、ジェームズがスポーツカーへ近付いた。


「相変わらず見事な車ですな」


 紫亜が微笑む。


「ありがとう」


 ジェームズは車体を眺めた。


「スポーツカーも良いとは思いますが、ジープも楽しいですよ?」


 紫亜は小さく頷く。


「ジープの良さは理解してるわ」


「でも、市販のでは物足りないのよ……」


 どこか遠くを見るような目だった。


 ジェームズは苦笑する。


「カスタムされてもよろしいかと」


「カスタムしてもね……」


 さらに遠い目になる。


 その隣で。


 雛も同じような目をしていた。


 美玲が首を傾げる。


「分からない世界ね」


 車好き同士にしか通じない話だった。



 準備が終わる。


 紫亜がドアを開いた。


「では、参りましょうか」


 そしてジェームズを見る。


「ジェームズ、あとはお願いね」


「かしこまりました」


 ジェームズは優雅に一礼した。


 美玲も慌てて頭を下げる。


「お世話になりました!」


「またお越しください」


 穏やかな笑顔だった。



 スポーツカーが走り出す。


 速い。


 とにかく速い。


 景色が次々と後ろへ流れていく。


 美玲は窓の外を見ながら顔を引き攣らせた。


「速すぎない?」


「いつもこんな感じ」


 雛は平然としている。


「慣れてるの!?」


「うん」


 美玲はそれ以上考えるのをやめた。



 あっという間に美玲の家へ到着した。


「ありがとうございました!」


 美玲が頭を下げる。


「また明日ね」


 雛が言う。


 美玲は笑顔で手を振った。


「連絡するね!」


「うん」


 スポーツカーは再び走り出した。



 夕方。


 自宅。


 荷物を置いた雛へ、紫亜が声をかける。


「旅行はいかがでしたか?」


「楽しかった」


 即答だった。


 紫亜も少し嬉しそうに微笑む。


「それは何よりです」


 そして続ける。


「何か変わった事は?」


 雛は少し考えた。


「名誉師範代になった」


「はい?」


 雛は鞄から賞状を取り出した。


 紫亜が受け取る。


 静かに眺める。


「引導流名誉師範代」


「珍しい拳法ですね」


 賞状を返しながら言った。


 雛は頷く。


「覚えたからもう使える」


「普通の試合などに使うとよろしいかと」


「そうする」


 雛は頷いた。


 こうして少し長い夏の旅行は終わりを迎えた。


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