第35話 リターンマッチ
「なんでトランプ!?」
祥子の叫びが別荘に響いた。
三人は不思議そうな顔をしている。
「やる?」
雛がもう一度聞いた。
「やらないわよ!」
即答だった。
「というか、何でそんな普通なのよ!」
「普通?」
雛は首を傾げる。
祥子は頭を抱えた。
ダメだ。
話が通じる気がしない。
「まあまあ」
美玲が笑う。
「せっかくだし遊ぼうよ」
そう言って鞄を持ち上げた。
「実は色々持ってきてるんだよねー」
中から次々とゲームが出てくる。
トランプ。
オセロ。
将棋。
神経衰弱用カード。
人生ゲーム。
祥子が目を丸くした。
「旅行に何持ってきてんのよ……」
「備えあれば憂いなし!」
美玲は胸を張った。
◇
最初は神経衰弱だった。
「よし!」
美玲がカードをめくる。
「外れ!」
「また外れ!」
次々と外していく。
祥子も同じだった。
だが。
雛だけ違った。
「これ」
取る。
「これ」
また取る。
「これ」
さらに取る。
祥子が固まった。
「ちょっと待って」
「何でそんな当たるの?」
「覚えてるから」
雛は当然のように答えた。
「全部?」
「うん」
祥子は天井を見上げた。
◇
次はオセロ。
祥子は自信があった。
引導流道場の子供達相手なら負けたことがない。
「これは勝つわよ」
十分後。
盤面は真っ黒だった。
祥子は固まっている。
「え?」
雛が首を傾げた。
「終わり?」
「終わりじゃないわよ!」
祥子が叫ぶ。
「何でこうなるのよ!?」
「勝てそうだったから」
意味が分からない。
◇
次は将棋。
祥子は開始十分で投了した。
「詰み」
雛が言う。
祥子は盤面を見る。
「いつから?」
「だいぶ前」
祥子は静かに駒を倒した。
◇
そして人生ゲーム。
「これなら運だから!」
美玲が言う。
「流石に勝てるでしょ!」
結果。
一位、雛。
二位、ジェームズ。
三位、祥子。
最下位、美玲。
「何でぇぇぇ!?」
美玲が机に突っ伏した。
雛は首を傾げる。
「運じゃないの?」
「運よ!」
「じゃあ仕方ない」
「納得いかなーい!」
◇
夕方。
ゲーム大会は続いていた。
祥子は疲れ切っていた。
「おかしい……」
「何がおかしいの?」
雛が聞く。
「全部よ!」
祥子は叫んだ。
「拳法より強い!」
「ゲームも強い!」
「何なのよあんた!」
美玲が苦笑する。
「雛は頭も良いのよ」
祥子が止まった。
「マジで?」
「期末テスト全科目満点」
「マジで!?」
祥子が立ち上がる。
「何それ!」
「反則じゃない!?」
雛は少し考えた。
そして答える。
「高校生」
「そういう意味じゃないのよ!」
祥子が机を叩く。
美玲が笑った。
ジェームズも小さく笑う。
雛だけが本気で分かっていなかった。
その時。
美玲が首を傾げた。
「ところで、何か用があったんじゃないの?」
祥子は固まった。
「あ……」
本来の目的を思い出す。
不良五十人壊滅。
その件を確かめるために来たのだった。
だが。
雛を見る。
雛は平然としている。
ジェームズは優雅に紅茶を飲んでいる。
美玲はゲームを片付けている。
祥子は少し考えた。
「……いや、もういいわ」
「そう?」
「そう」
聞いたところで何も解決しない気がした。
◇
帰り際。
祥子は玄関で振り返った。
「雛」
「ん?」
「今度は絶対勝つから」
雛は少し考える。
「リターンマッチ?」
「そう!」
祥子は力強く頷いた。
雛も頷く。
「いいよ」
「賞状増える?」
「増えないわよ!」
祥子の叫び声が別荘に響いた。




