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HINA-死神の系譜-  作者: 竜堂さくら


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33/102

第33話 名誉師範代


 翌日。


 商店街の外れに不良達が集まっていた。


「寺院の拳法使いが負けたらしいぞ」


「マジか!?」


「あのバケモンに勝てる奴がいたのか!」


「勝ったのはどんな奴だ?」


「知らねぇ。けど、チャンスだ」


「チャンス?」


 一人がニヤリと笑う。


「今ならあいつも弱ってるはずだ」


「道具と人数集めりゃ勝てんべ」


「なるほどな!」


 不良達の目が輝いた。


「じゃあ俺、この辺のやつらに声かけるわ」


「俺も!」


「で、いつやるよ?」


 一人が周囲を見回す。


「昼間は人目につく」


「夜は寺院の門が閉まってる」


 そして言った。


「やるなら門が開く早朝だ」


「門が開いた瞬間になだれ込んで、有無を言わさずボコる!」


「見てろ、あの女」


 下卑た笑みを浮かべる。


「ボコボコにして裸にひん剥いてやんよ!」


 周囲から下品な笑いが漏れた。



 その頃。


 雛と美玲は商店街を歩いていた。


「お、また来たのかい」


 土産物屋の老人が笑う。


「この辺だと買い物できるの、この商店街くらいだし」


 美玲が答えた。


 老人は雛を見る。


「嬢ちゃんはどうだ?」


「楽しい」


 即答だった。


 老人は目を細める。


「そうか」


「ありがとうな」



 さらに歩く。


 観光客達の会話が聞こえてきた。


「なんか、この辺のあちこちで不良達を見るんだけど……」


「私、商店街の外れの方でたむろしてるの見たよ」


 美玲が顔をしかめた。


「なんか不穏な空気ね」


「うん……」


 雛も頷く。


 その時だった。


 視界の端に不良達が映る。


 小声で話している。


 普通なら聞こえない距離。


 だが雛には聞こえた。


「……明日……」


「……早朝……」


「……寺……」


 雛は何も言わなかった。



 深夜。


 別荘。


 美玲は熟睡していた。


 静かな部屋。


 雛はそっと起き上がる。


 物音ひとつ立てずに着替えた。


 そして静かに外へ出る。



 早朝。


 寺院へ続く山道。


 不良達が集まっていた。


「何人集まった?」


「五十人はいるぜ!」


「道具も揃えたしな」


 不良達は様々な武器を手にしていた。


「これなら負けねぇだろ」


「そろそろ山門だな」


 不良達は笑いながら歩く。


 やがて山門が見えてきた。


 だが。


 門の前に誰か立っていた。


 一人の少女。


 黒いジャージ姿。


 黒髪。


 姫カット。


 不良達が足を止める。


「なんだお前?」


 少女は答えた。


「引導流名誉師範代」


「は?」


 意味が分からない。


 雛は不良達の手を見る。


 鉄パイプ。


 木刀。


 スタンガン。


 ナイフ。


「その武器で何するの?」


 不良が笑った。


「決まってんだろ」


「あの拳法女ボコるんだよ!」


 雛の視線がナイフで止まる。


「ナイフまである……」


「おう」


 不良が鉄パイプを肩に担いだ。


「邪魔するんなら、お前から抉ってやるぞ?」


 その瞬間だった。


 雛の目が細くなる。


 不良達の背筋を悪寒が走った。


 本能が警告している。


 だが理由が分からない。


 雛は静かに聞いた。


「馬鹿なの?」


 一歩前へ出る。


「……死ぬの?」



 別荘。


 朝。


 美玲が目を覚ました。


 良い匂いがする。


 リビングへ向かう。


「おはよう雛!」


 キッチンでは雛が朝食を作っていた。


「料理できるんだ?」


「簡単な物なら」


「へー」


 美玲は席に座る。


「じゃあ明日の朝は私が作るよ」


「うん」


 雛は頷いた。


 穏やかな朝だった。



 同じ頃。


 寺院。


 祥子は欠伸をしながら山門へ向かっていた。


「ふぁぁ……」


 門を開く。


 そして固まった。


 山門の外。


 五十人の不良達が倒れている。


 全員半殺し。


 鉄パイプも。


 木刀も。


 スタンガンも。


 ナイフも。


 全部転がっていた。


 祥子は数秒固まる。


 そして叫んだ。


「な、何これーーー!?」


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