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HINA-死神の系譜-  作者: 竜堂さくら


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第29話 別荘


 夏休み初日。


 雛と美玲は電車に乗っていた。


 窓の外の景色が流れていく。


 雛は少しだけ落ち着かない様子だった。


「なんかドキドキする」


 美玲が首を傾げる。


「なんで?」


「電車乗るの初めて」


「え?」


 美玲は固まった。


「初めて?」


「うん」


「車かバイクにしか乗ったことないから」


「どんな人生送ってきたのよ!?」


 思わずツッコむ。


 雛は首を傾げるだけだった。



 電車を乗り継ぎ、二人は目的の駅へ到着した。


 ホームへ降りた美玲が周囲を見回す。


「ここから別荘まで遠いの?」


「管理人さんが迎えに来るって言ってた」


 雛が答えた。


 その時。


 一台のジープが駅前へ入ってくる。


 運転席から降りてきたのは、白髪をオールバックにした髭の老人だった。


 背筋は真っ直ぐ。


 スーツ姿。


 妙に存在感がある。


「お待たせいたしました」


 老人は丁寧に一礼した。


「別荘管理人のジェームズです」


 美玲は思わず言った。


「キャラ濃いっ!」


 だが。


「はじめまして」


 雛は普通に頭を下げていた。


「違和感ないの!?」


 美玲はさらにツッコむ。


 ジェームズは気にした様子もなく微笑んだ。


「では、参りましょう」



 二人はジープへ乗り込む。


 山道を走り始めた。


 窓の外には豊かな自然が広がっている。


 その景色を眺めながら、雛が呟いた。


「なんか、懐かしい気がする」


「景色が?」


 美玲が聞く。


 雛は首を横に振った。


「ジープ」


「ジープ?」


「昔、乗ってた気がする」


 ジェームズがミラー越しに微笑む。


「同好の士は嬉しいですな」


「深くは聞かないわ……」


 美玲は遠い目をした。



 三十分ほど走る。


 やがてジープが大きな門の前で止まった。


 門の向こうには広い敷地。


 立派な別荘が建っている。


「おおー……」


 美玲が感嘆の声を漏らした。


 雛も建物を見上げる。


「大きい」



 荷物を運び込みながら、ジェームズが尋ねた。


「お食事は私が用意することも、お嬢様方で自炊していただくこともできますが?」


 雛は美玲を見る。


「どうする?」


「せっかくだから、二人でやってみようか」


 美玲は楽しそうだった。


 雛も頷く。


「私たちでやってみます」


「そうですか」


 ジェームズは一礼した。


「入口のドアの横に私の電話番号が貼ってありますので、何かあればご連絡ください」


「ありがとうございます」


 美玲が頭を下げる。



 その時。


 雛が尋ねた。


「観光スポットあります?」


 ジェームズは少し考える。


「ここから徒歩ですと三十分ほどかかりますが、有名な寺院と商店街がありますよ」


「あとで行ってみよ!」


 美玲が目を輝かせた。


「うん」


 雛も頷く。


「ジープでお送りしますので、いつでもお声かけください」


 そう言い残し、ジェームズは去っていった。



 別荘には二人だけが残る。


 美玲は大きく伸びをした。


「とりあえず荷物整理しよっか」


 雛は首を傾げる。


「そんなに色々持ってきたの?」


「雛、荷物少なくない?」


「着替えだけかな」


「旅行なのに?」


「旅行だから」


 美玲は頭を抱えた。


 そして改めて室内を見回す。


「それにしても、別荘広いねー!」


 雛も周囲を見渡した。


「少々暴れても平気そう」


「暴れないからね!?」


 美玲のツッコミが別荘へ響いた。


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