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HINA-死神の系譜-  作者: 竜堂さくら


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第28話 期末テスト


 期末テスト当日。


 教室には重苦しい空気が漂っていた。


「あー……終わった」


 美玲が机に突っ伏す。


「まだ始まってないよ?」


 雛が首を傾げた。


「始まる前から終わってるの!」


「前も言ってた」


「今回は本当に終わってるの!」


 美玲は必死だった。


 だが勉強会の成果は確実に出ていた。



 数日後。


 答案返却の日。


 教室は朝から騒がしかった。


「やばい……」


「赤点だけは勘弁……」


「頼むから平均点ください……」


 悲痛な声が飛び交う。


 そんな中、雛は特に緊張した様子もなかった。


 担任教師が教室へ入ってくる。


「返すぞー」


 一枚ずつ答案が返却されていった。


「よし!」


「終わった……」


「見たくねぇ……」


 悲喜こもごもだった。


 美玲も恐る恐る答案を見る。


 そして固まった。


「え?」


 もう一度見る。


「え?」


 さらにもう一度見る。


「えぇ!?」


 教室中が振り返った。


「どうした?」


 雛が聞く。


「上がってる!」


 美玲は立ち上がった。


「全部上がってる!」


 本当に全部だった。


 今まで見たことのない点数が並んでいる。


「やったー!」


 思わず雛へ抱きついた。


「ありがとう!」


「どういたしまして」


 雛は普通に受け止める。


 周囲のクラスメイト達も驚いていた。


 その時。


 教師が咳払いした。


「静かに」


 教室が静まる。


「今回の学年トップだが」


 全員の視線が集まった。


「全科目満点」


 ざわめきが広がる。


「哀沢」


 さらにざわめいた。


「だろうね」


「まあな」


「知ってた」


 誰も驚かなかった。


 雛本人も特に反応しない。


「そうなんだ」


 それだけだった。



 放課後。


 帰り道。


 美玲はずっと機嫌が良かった。


「見て!」


 答案を見せる。


「全部上がってる!」


「よかったね」


「うん!」


 そして少し考える。


「あのさ」


「ん?」


「お母さんが、成績上がったら旅行してもいいって言ってたんだ」


 雛が足を止めた。


「旅行かー」


「ダメ?」


 少し不安そうな顔。


 雛は首を横に振った。


「紫亜さんに相談してみる」


「本当!?」


「うん」


 美玲は笑顔になった。



 帰宅後。


 リビング。


「紫亜さん」


「はい」


 紫亜が振り返る。


「美玲に夏休み、一緒に旅行しようって言われた」


 紫亜は一瞬だけ考えた。


 そして言う。


「夏休みイベントですね」


「うるせぇ」


 紫亜が硬直した。


 本当に一瞬だけ。


 だが確かに硬直した。


 口元を押さえる。


 萌えていた。


 雛は見なかったことにした。


「それなら、別荘がありますよ」


「別荘?」


 雛は固まる。


「いつの間に!?」


「こういう事もあろうかと思いまして」


「意味分かんないんだけど……」


 紫亜は微笑むだけだった。


「明日、美玲に言ってみる」


「はい」


 紫亜は頷く。


「楽しい旅行になるといいですね」



 翌日。


 教室。


「それで?」


 美玲が身を乗り出した。


「紫亜さん何て?」


「別荘あるから、そこに行くといいって」


 美玲が固まる。


「別荘なんか持ってたの!?」


「私も昨日知った」


「紫亜さん何者?」


 雛は即答した。


「お手伝いさん兼、保護者」


「わざと言ってるよね!?」


 美玲が叫ぶ。


 雛は少しだけ笑った。


 最近はこういうやり取りも嫌いじゃない。


「夏休み、楽しみだねー」


 美玲が窓の外を見る。


 青空だった。


 もうすぐ夏が来る。


 雛も空を見上げた。


「うん」


「楽しみ」



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