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HINA-死神の系譜-  作者: 竜堂さくら


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第25話 お揃い


 放課後。


 雛と美玲はショッピングモールへ来ていた。


「雛、こういう所来たことある?」


「あると思う」


「思う?」


「紫亜さんと買い物に来たことはある」


「ああ、なるほど」


 美玲は少し納得した。


 雛一人で来るより、その方が想像しやすい。


 平日の夕方でもモールの中は賑やかだった。


 服屋。


 雑貨屋。


 飲食店。


 ゲームセンター。


 雛は周囲を見回しながら歩いている。


「今日は普通に遊ぶんだからね」


「うん」


「まずはお揃いの何か買おうよ」


「お揃い?」


「友達っぽいでしょ?」


 雛は少し考える。


 そして頷いた。


「いいかも」


 美玲は笑った。


 雑貨屋に入る。


 最初に美玲が手に取ったのは、ピンクのハート型キーホルダーだった。


「これ可愛くない?」


 雛はじっと見る。


「可愛いとは思う」


「じゃあこれにする?」


「でも、私っぽくない」


「まあ、それは分かる」


 次に雛が手に取ったのは、黒いスーツにサングラス姿の小さなキャラクターだった。


 商品名はマフィアくん。


「これ」


「渋すぎる」


「かっこいい」


「お揃いでマフィアくんは嫌かな」


「そうなんだ」


 そこから難航した。


 美玲は可愛い物がいい。


 雛は渋い物がいい。


 ピンクのハートは雛に合わない。


 マフィアくんは美玲が嫌がる。


 店内を何度も回り、二人はようやく足を止めた。


 そこにあったのは、ハート形のチャームを持ったマフィアくんのキーホルダーだった。


 黒いスーツ。


 サングラス。


 だが手元には小さなピンクのハート。


 美玲は黙った。


 雛も黙った。


「……これなら」


「うん」


 二人の意見が一致した。


 完全に可愛いわけではない。


 完全に渋いわけでもない。


 だからちょうどよかった。


「お揃いだね」


「うん」


 雛は買ったキーホルダーを見つめる。


 少し嬉しそうだった。


 その後、二人はモールの広場へ向かった。


 広場ではティーン向けファッション雑誌の撮影が行われていた。


 モデルらしい女の子達。


 カメラマン。


 スタッフ。


 周囲には見物人もいる。


「撮影してるんだ」


 美玲が興味深そうに見る。


 その時、一人のスタッフが美玲に気付いた。


「君、ちょっといい?」


「え?」


「読者モデルとか興味ない?」


 美玲は目を瞬いた。


「私ですか?」


「うん。雰囲気いいし、写真映えしそうだから」


 美玲は少し照れた。


 満更でもない顔だった。


「えっと……」


 その横で雛は黙って見ていた。


 するとスタッフの視線が雛へ移る。


 次の瞬間、目の色が変わった。


「君!」


「はい?」


「君なら世界的なファッションモデルになれる!」


 勢いが変わった。


 美玲は少し驚く。


 雛は首を傾げた。


「友達をスカウトしてたんじゃないんですか?」


「ああ、でも君は別格だ」


 スタッフは雛を見たまま続ける。


「君に比べたら、あんな子なんて――」


 空気が変わった。


「あんな子……?」


 雛の声が低くなる。


 美玲は即座に察した。


「雛! いいから!」


 次の瞬間、スタッフがその場に崩れ落ちた。


 悲鳴が上がる前に、美玲は雛の腕を掴む。


「行くよ!」


 そのまま全力で走った。


 人目の少ない通路まで来て、ようやく足を止める。


「何してるのよ!?」


「大丈夫。手加減してるから」


「そんな問題じゃなくて!」


 美玲は息を切らしながら叫ぶ。


 雛はまだ不機嫌だった。


「ムカつく……」


「雛……?」


「私の友達に、あんな子って」


 低い声だった。


 美玲は言葉を失う。


 雛は少しだけ振り返ろうとした。


「やっぱり壊しとくか……」


「大丈夫だから!」


 美玲は慌てて止める。


「私は平気だから!」


「美玲……」


 雛はようやく美玲を見る。


 美玲は少し照れたように笑った。


「ありがとね。雛」


 雛は黙る。


 怒りが少しだけ薄れた。


 美玲は雛の手を引く。


「アイス食べて帰ろ!」


「……うん」


 雛は頷いた。


 手には、お揃いのキーホルダーが揺れていた。


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